カレントアウェアネス
No.123 1989.11.20
CA634
新しい時代の図書館協力
全国公共図書館奉仕部門研究集会
去る9月12,13日の2日間にわたり,群馬県民会館において,320名を越える参加者が一同に会して,全国公共図書館奉仕部門研究集会が開催された。
研究主題「新しい時代の図書館相互協力を考える」に添って下記の通り事例発表があった。
1.北見地域の広域図書館ネットワークシステム(市立北見図書館 伊藤悟氏) 2.県立4館合同蔵書目録のもたらしたもの(埼玉県立浦和図書館 石塚市子氏) 3.大学図書館と公共図書館の相互協力(文教大学越谷図書館 松田上雄氏)4.市町村立図書館から県立図書館に望むもの(八日市市立図書館 西田博志氏)
各事例発表から感じられた事は,各館とも地域社会に密着し住民の要求を把握している点である。自館のなすべき役割を心得,それを実行に移している。その事は事例3の文教大学越谷図書館でも同様である。同大学では“大学は一つの地域社会に奉仕するものではないが,地域社会とは無縁ではない”との立場で大学図書館を市民に公開し,公共図書館との相互協力を進めている。各事例とも,図書館相互協力の実行計画は日常業務から遊離せず着実なものとなっている。事例1で言われた栗原氏の言葉“自分達の力の限界を知ることが,相互協力の原動力となる”は図書館活動のすべてに通じるものであろう。
各事例発表に続いて,助言者の栗原均氏(日本図書館協会),天野哲雄氏(神奈川県立図書館)から,他地域の状況や日本図書館協会の対応等が紹介され,発表の内容は一層充実したものとなった。さらに時間の都合で必ずしも十分とは言えなかったが,参加者との質疑応答も行われた。
集会の最後に,研究主題と同じテーマで滋賀県立図書館長の前川恒雄氏の記念講演があった。既に実行に移している滋賀県の例を挙げながら,県立図書館の側からの相互協力の在り方が語られた。まとめとして,中小図書館の自主性の大切さや図書館員どうしの交流,物流(資料の流れ)の重要性が強調され,加えて職員の採用や研修,資料保存の問題も提起された。これからの図書館相互協力を実践していく中で,自館の在り方を模索する図書館員の意気込みが感じられる集会であった。
尾崎か代