CA627 – 国会図書館で中文紙を閲覧して / 富窪高志

カレントアウェアネス
No.122 1989.10.20


CA627

国会図書館で中文紙を閲覧して

中国の知識人の間に広い読者を持つ『光明日報』に,国立国会図書館を利用した高名な新聞研究家方漢奇氏の体験記が掲載された。以下その概略を紹介したい。

*   *   *

東京滞在中,NDLでかなりの中文紙を所蔵していることを知り,何日かかけて閲覧しようと思いたった。

入館手続は意外に簡単で,まず入口で入館票を受け取り,氏名,年齢,職業等を記入し,カードを受け取って終了である。入館手続から判断すれば,NDLは利用者の地位,身分,職業,そして国籍について全く差別的対応がないということがわかる。

それは,入館後も同様である。職員はカードのみに注目し,利用者に気を向けることはない。カードさえ所持していれば誰でも同様のサービスが受けられるし,各専門室への出入も自由である。

中文紙はアジア資料課で所管されているものが殆んどで,まず同室で目録を検索し,『循環日報』を閲覧した。次に『六合叢談』『中西聞見録』を申し込んだが請求票が返却されてきた。カウンターの職員が丁寧に調査してくれ,二紙とも古書として古典籍課で閲覧できることがわかった。この二紙とも勿論中国で所蔵している所もあるが,普通に閲覧することはできない。中国では特殊なコネがあって漸く閲覧ができるという状態である。NDLではこれら古い新聞については,きちんと再製本ししっかりと保存しており,職員が資料自体の価値を理解していることがわかる。更に大事なのはその利用されることの大切さをも知っていることであり,これはとても重要なことである。

数日間通うと館内にもくわしくなり,新聞閲覧室にも行ってみた。国内,国外の新聞が開架で閲覧できるようになっている。『朝日』『毎日』『読売』等の日本で大きな影響力のある新聞は,創刊号から最近に至るまで書架に並んで自由に利用できるようになっている。館内のその他のサービス,例えば喫茶等の利用も,退館する必要はないし,価格も安く非常に便利である。複写サービスの料金も,中国と大した差はない。

東京滞在中,7回ほど利用したが,紹介状を見せることもなかったし,証明書の提出を求められたり,所属先,地位,職種等について聞かれることもなかった。そして,閲覧しようと考えていたものは全て閲覧することができた。

訳:富窪高志

Ref. 光明日報 1989.2.19