CA1884 – 公共図書館における「夜の図書館」イベント / 松本和代

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カレントアウェアネス
No.330 2016年12月20日

 

CA1884

 

 

公共図書館における「夜の図書館」イベント

菊陽町図書館(熊本県):松本和代(まつもと かずよ)

 

 近年、主に夜の時間帯での開催となるが、通常の開館時間外の時間帯にイベント等を実施する公共図書館が増えている。本稿では、文献やウェブサイトで確認できたそのようなイベントから、地域との連携を図っているものや、こんなイベントを図書館でするのかという、公共図書館としての可能性を広げているものを取り上げ、その内容に基づいて整理し紹介していく(1)

 

1. 朗読会、おはなし会

 朗読会、おはなし会は、多くの公共図書館で開館時間中に実施されているが、それを開館時間外に行なうところがある。「夜のおはなし会」として実施している公共図書館は多いが、単独の催しではなく、イベントの一環として行なわれることが多いようである。そのようななか、普段図書館を利用しない住民に図書館に興味を持ってもらうことを目的に、大人を対象にした単独のイベントとして朗読会を開催した公共図書館がある。

 飛騨市図書館(岐阜県)では、毎月第4土曜の夜に行なっている「おとなの時間」企画の一環として、2016年8月に朗読会「官能小説朗読ライブ」が行なわれた(2)。「おとなの時間」企画では、同館の利用が少ない20代から40代を対象に、大人向け絵本の読み聞かせ、図書館ジャズライブなどの魅力的なイベントを、彼/彼女らが利用しやすい夜の時間帯に実施している。

 「官能小説朗読ライブ」は、同館の司書3人が同館所蔵の官能的な表現がある小説を朗読するもので、閉館後に開催された。普段図書館に関心がない人にも幅広く興味を持ってもらうため、インパクトのある名称にしたとのことである。通常の朗読会では、どうしても参加者が一部の本好きな方に限定されるが、約70名の参加があったという。

 

 

2. 自然科学系イベント

 科学実験や、科学あそびといった子ども向けの自然科学系イベントも多くの公共図書館で行なわれているが、夜に行なっている公共図書館もある。

 指宿市立図書館(鹿児島県)では、毎年7月の第4金曜日の夜、セミの羽化観察会を実施している(3)。19時30分からセミの抜殻の説明、セミの鳴き声のクイズ、セミや自然科学に関するおはなし会を行なっている。毎年参加する子どものために内容は変えているとのことである。その後、図書館に隣接する公園に行き、実際にセミの羽化を観察する。自然科学系の催しをすることで、普段図書館に来館しない人や、父親の来館が増えるという。

 この他にも、松江市立中央図書館(島根県)の「よるの図書館お月見会」(4)や坂出市大橋記念図書館(香川県)の「天体観察会」(5)など、天体を観測するイベントを行なっている図書館もある。

 ともに、夜に実施しないと体験できない内容のイベントであるといえよう。

 

3. ミステリーツアー

 夜の雰囲気を利用して、妖怪、怪談など恐怖体験を味わうイベントを実施する図書館もある。

 田原市図書館(愛知県)では、「ふしぎ文学半島プロジェクト」として、地元に縁のある泉鏡花、柳田國男等の幻想文学のコーナーを設置しており、毎年秋に妖怪や怪談などをテーマとしたイベントを開催している。昨年度と今年度は図書館閉館後に、妖怪めぐり演劇ナイトツアー(2015年)(6)、「耳なし芳一」の芝居(2016年)(7)といった隣接する市の高校の演劇部による公演の他、怪談を活用した街づくりをテーマとした「怪談とまちづくりのトークライブ」が行なわれた。このイベントを通して、幻想文学のコーナーの存在と地域の魅力が改めて認識されているという。

 前述の指宿市立図書館では、毎年9月に「こわい夜のおはなし会」とミステリーツアーを実施し(8)、地域住民も妖怪ボランティアとして参加している。

 

4. 夜も開いている図書館

 真夜中まで開いている図書館、というだけでも珍しい上に、気持ちが何となくわくわくしてこないだろうか。

 恵庭市立図書館(北海道)では毎年夏の一日に「図書館開館24時」(9)として、閉館後の18時から24時までの間に「ナゾトキ図書館」、「大人が楽しむ絵本講座」など様々なイベントが催される。読書をゆっくり楽しめるよう夜に図書館を開放し、イベントも繰り広げる人気の取組である。

 千葉市中央図書館(千葉県)の「ナイトライブラリー&トークセッション」では、本に没頭できる時間を学生時代に過ごしてほしいと、大学生・専門学校生を対象に閉館後にトークセッションの他、謎解きゲームなどが行なわれた(10)

 イベントではないが、年に数日だけの夜間開館にとどまらず、24時間開館している公共図書館があることも紹介しておきたい。川上村図書館(長野県)(11)、萩市立須佐図書館(山口県)(12)ではスペースは限られているが24時間開館し、貸出も行なっている。

 

5. 図書館にぬいぐるみが泊まる

 図書館に泊まるイベントもある。

 近年定着しているのは、ぬいぐるみが図書館にお泊まりする「ぬいぐるみのお泊まり会」である。子どもと本を結びつけること、図書館への親しみをもってもらうことを目的としている(13)。子ども達がぬいぐるみと一緒におはなし会を聞いた後、ぬいぐるみは図書館に預けられ、翌日にお迎えに行くものである。夜の図書館でぬいぐるみ達が本を読んだり楽しんだりしている様子を写真に撮ってアルバムを作成したり、ぬいぐるみからおすすめの本を紹介してもらうこともある。宝塚市立西図書館(兵庫県)(E1127参照)(14)や葛飾区立図書館(東京都)(15)等、多くの図書館で実施されている(16)

 

6. 図書館に人が泊まる

 人間が図書館に泊まるイベントもある。

 筆者が勤務する菊陽町図書館(熊本県)での「図書館お泊まり探検隊」(17)は、町内の小学5年生から中学3年生を対象に行なっている。隣接する合志市西合志図書館(熊本県)で、2003年から実施されている「春の夜の図書館読書探検隊」(18)(19)を参考にして、2011年度から始まった。図書館で、時間を気にすることなく本に囲まれて好きなだけ本を読むことができる数少ないチャンスとあって、毎年定員の二倍以上の申込がある人気企画である。図書館で宿泊する経験を通して、子ども達の感性を伸ばし、自主性や協調性を育むことを目的としているこの企画は、図書館と生涯学習課が連携して取り組んだものである。参加した子ども達からのおすすめの本を図書館で紹介している。このイベントに参加したことで図書館に親しみを持ち、一晩で多くの本を読んだことが子ども達の自信につながっているようである。

 この他にも、大人も対象としたものでは、川西町立図書館(山形県)で「図書館に泊まろう!」が実施されている(E1823参照)。

 

7. 地域を知る

 普段図書館を利用できない大人が、地元に関するテーマで交流できる場としてのイベントを行なう図書館もある。

 紫波町図書館(岩手県)では、閉館後に “わくわく”をシェアするイベント「夜のとしょかん」を定期的に行なっている(20)。知的好奇心を満たし、文化的、娯楽的活動による新しい交流が生まれるための情報を提供するための取組として考え出された。飲み物持込、おしゃべり自由で、日中に図書館に来館できない働き盛りの住民を対象に、職場でも家庭でもない第三の場所となる場を提供している。その内容は実に多様で、醸造(21)、伝統工芸(22)、石川啄木(23)や宮澤賢治(24)等、地元岩手に関わる人々やモノを取り上げつつ、映画やコンサートも絡めて、幅広く来館してもらうことを意図している。戦争を取り上げた回では、あわせて同町と戦争に関する資料の企画展示も行なっている(25)。このイベントは、普段なかなか話を聞くことのできない住民が講師となる貴重な機会にもなっている。

 この他にも、鹿角市立花輪図書館(秋田県)では「夜のとしょかん よるとしょ」で「鹿角を愛してやまない方々による、自己PR・プレゼンテーション」や鹿角検定を行なっている(26)

 

 これまで紹介した以外にも、閉館後に館内に仕掛けられた謎を解きながら、図書館のサービスや機能を知る「脱出ゲーム」(練馬区立光が丘図書館(東京都)(27)(28)などのゲーム系イベント、本を通じた新たな出会いをサポートしている「としょこん!~草食系のためのナイトライブラリー~※肉食も可」(岐阜市立中央図書館(岐阜県))(29)、「本de友活」(恵庭市立図書館(北海道))(30)等、婚活・恋活・友活系イベントも行なわれている。

 

まとめ

 夜の図書館でのイベントは、図書館に来館してもらうきっかけのひとつに過ぎない。図書館に来たくても開館時間内になかなか来られない、図書館は本を読むところだというイメージが強い等、普段図書館に来ない住民が幅広く図書館に来館し、その存在を認識し、継続的に活用してもらうことを願ってのものである。

 夜のイベントに限ったことではないが、これらのイベントは、人を呼ぶものとして安易に企画されてしまいがちである。しかし、資料の整備やレファレンスサービスなど、基本的な図書館業務が充実してこそ、その本領が発揮されるのではないか。なぜそのイベントを行なうのか、図書館の方針がしっかりしていることももちろん重要である。また、これらの取組は、地域の産業や自然環境等、自治体及び地域の特性について知らなければ実現できないものもある。住民が参加するだけでなく、イベントの運営ボランティアや講師を担うなど、地域とともに歩む図書館活動が期待される。

 

(1)岩手県立図書館が同館の館報において「特集 ナイトライブラリー」として岩手県内の公共図書館で閉館後や夕刻に行なわれたイベントを特集した。
岩手県立図書館. としょかんいわて: 岩手県立図書館報. 2016, (179), p. 1-17.
https://www.library.pref.iwate.jp/aboutus/kanpo/index.html, (参照2016-11-03).

(2)“飛騨市図書館で官能小説朗読ライブ 市内外から70人、市長も駆け付け”. 飛騨経済新聞. 2016-08-27.
http://hida.keizai.biz/headline/802/, (参照2016-10-12).

(3)“3.自然科学を子どもたちへ”. 私たち図書館やってます!. NPO法人本と人とをつなぐ「そらまめの会」編著. 種村エイ子監修. 南方新社, 2011, p. 23-29.

(4)“よるの図書館お月見会”. 松江市立図書館.
https://www.lib-citymatsue.jp/files/tempfiles/20160824112422nightlibrary.pdf, (参照 2016-10-11).

(5)“天体観察会”. 坂出市大橋記念図書館.
http://www.city.sakaide.lg.jp/site/toshokan-top/lib-gyoji-star.html, (参照 2016-10-11).

(6)“ふしぎ文学半島プロジェクト2015”. 田原市図書館.
http://www2.city.tahara.aichi.jp/section/library/info/fushigi2015.html, (参照2016-11-03).

(7)“ふしぎ文学半島プロジェクト2016”. 田原市図書館.
http://www2.city.tahara.aichi.jp/section/library/info/fushigi2016.html, (参照 2016-10-23).

(8)“こわい夜のおはなし会がありました”. 指宿市立図書館職員ブログ. 2016-09-24.
http://blog.goo.ne.jp/soramame_ibusuki/e/338d60614a9432375de17c56d4967129,(参照 2016-10-23).

(9)“図書館開館24時‐夜のミステリーナイト-”. 図書館ニュース. 2016年7月号.
http://www.city.eniwa.hokkaido.jp/www/contents/1370314325595/files/news201607.pdf, (参照 2016-10-23).

(10)“ナイトライブラリー&トークセッション2015”. 千葉市中央図書館.
https://www.city.chiba.jp/kyoiku/shogaigakushu/chuotoshokan/kanri/nightlibrary2015.html, (参照2016-11-06).

(11)“川上村図書館”. 川上村.
http://www.vill.kawakami.nagano.jp/shisetu/04_library.html, (参照 2016-10-23).

(12)“利用案内”. 萩市立須佐図書館.
https://hagilib.city.hagi.lg.jp/susa/annaisusa.html, (参照 2016-10-23).

(13)須賀千絵,汐崎順子. 公共図書館におけるぬいぐるみおとまり会の取り組みとその意義. 日本図書館情報学会研究大会発表論文集. 2015, (63), p. 5-8.

(14)“西図書館行事案内”. 宝塚市立図書館.
https://www.library.takarazuka.hyogo.jp/event/nishi.html, (参照 2016-10-23).

(15)“平成28年度子ども読書の日記念行事・展示・イベント報告”. 葛飾区立図書館.
http://www.lib.city.katsushika.lg.jp/kids/dokusyo2016.html, (参照 2016-10-27).

(16)“ぬいぐるみの図書館おとまりを実施している・したことがある図書館”. Nuiguru-me.
http://www.nuiguru-me.com/stuff-animals-sleep-over/, (参照 2016-10-28).

(17)“夜の図書館でわくわく読書 図書館お泊り探検隊”. 広報きくよう. 平成28年9月号, p. 16.
http://www.town.kikuyo.lg.jp/uploaded/life/8582_26653_misc.pdf, (参照 2016-10-14).

(18)“本とおやすみ 心置きなく読んで”. 熊本日日新聞. (22025). 2003-05-26.

(19)菅真一郎. こんなイベントやりました 春の夜の図書館読書探検隊. みんなの図書館. 2006,(73),p. 17-19.

(20)紫波町図書館. 特集,ナイトライブラリー: 夜のとしょかん. としょかんいわて: 岩手県立図書館報. 2016, (179), p. 14-15.
https://www.library.pref.iwate.jp/aboutus/kanpo/kanpo179/179_01-17.pdf, (参照 2016-11-03).

(21)“夜のとしょかん第8夜「『つなぐビール』サイドストーリー」”. 紫波町図書館.
http://lib.town.shiwa.iwate.jp/event/20160824_01.html, (参照2016-11-06).

(22)“夜のとしょかん第7夜「紫波にいた!船箪笥職人」”. 紫波町図書館.
http://lib.town.shiwa.iwate.jp/event/20160524_01.html, (参照2016-11-06).

(23)“夜のとしょかん第6夜「生誕130年 啄木と紫波の人々」”. 紫波町図書館.
http://lib.town.shiwa.iwate.jp/event/20160308_01.html, (参照2016-11-06).

(24)“夜のとしょかんオガール祭り編。「映画館の楽士が奏でるゴーシュの世界 賢治と嘉藤治生誕120年」”. 紫波町図書館.
http://lib.town.shiwa.iwate.jp/event/20160716_01.html, (参照2016-11-06).

(25)“夜のとしょかん特別編。町内の戦争体験者が語る「わたしたちのまちにもあったこと。」”. 紫波町図書館.
http://lib.town.shiwa.iwate.jp/event/20150718_01.html, (参照2016-11-06).

(26)“夜の図書館よるとしょZEN-善ぜん-結び”. 鹿角市立図書館.
http://www.kazuno-library.jp/wp-content/uploads/2015/11/20151121yorutosyo.pdf, (参照2016-11-06).

(27)“光が丘図書館で脱出ゲーム 閉館後に謎解き”. 練馬経済新聞. 2016-08-31.
http://nerima.keizai.biz/headline/914/, (参照2016-10-27).

(28)“『封鎖されたミステリー図書館~夜の図書館からの脱出』を開催”. 練馬区.
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/koho/hodo/h27/2708/270831.files/270831.pdf, (参照 2016-11-06).

(29)“「としょこん!~草食系のためのナイトライブラリー~※肉食も可」を開催します”. 岐阜市立図書館.
http://g-mediacosmos.jp/lib/information/2016/01/post-122.html, (参照 2016-10-28).

(30)“「図書館開館24時」に549人来館 親子でゆっくり本に触れる-恵庭”. Webみんぽう. 2015-06-24.
http://www.tomamin.co.jp/20160740866, (参照2016-11-06).

 

[受理:2016-11-15]

 


松本和代. 公共図書館における「夜の図書館」イベント. カレントアウェアネス. 2016, (330), CA1884, p. 2-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1884
DOI:
http://doi.org/10.11501/10228070

Matsumoto Kazuyo.
Night Events in Public Libraries.