CA1719 – 動向レビュー:デジタルゲームのアーカイブについて―国際的な動向とその本質的な課題― / 細井浩一

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カレントアウェアネス
No.304 2010年6月20日

 

CA1719

動向レビュー

 

デジタルゲームのアーカイブについて―国際的な動向とその本質的な課題―

 

1. はじめに

 世界的に活動しているゲーム開発者、研究者のNPO組織「国際ゲーム開発者協会」(International Game Developers Association:IGDA)の専門部会である「ゲーム保存研究会」(Game Preservation SIG)は、2009年3月、最近のデジタルゲーム保存の現状と課題についての白書(以下、「ゲーム保存白書」と称する)を取りまとめた。それは、次のような書き出しで始まっている。

 

「デジタルゲームの保存は急を要している。毎年、何千ものゲームが、他のすべてのデジタルメディアを脅かしている寿命の問題、すなわち情報の欠落と旧式化によって失われつつある。デジタルメディアは、原材料の経年劣化によって驚くほど寿命が短く、メディアフォーマットが絶えず変化するために急速に陳腐化する。そして、それらを動かすためのハードウェアも同様である。」(1)

 

 デジタルゲームは、マンガやアニメーションとならんで現代のポップカルチャーを代表する表現文化であり、コンテンツであるが、その収集、保存、伝承が極めて危機的な状況にあることは間違いない。その危機は、他の分野が主な保存形式としている紙媒体、画像、映像、文字記録などより、おそらくはるかに深刻な状況である。同白書にも整理されているように、それはデジタルゲームの多くがメディア(ROMカートリッジ、磁気ディスク、光学ディスク等)とその再生装置(ゲームプラットフォーム)の組み合わせによって成立しており、そのそれぞれが物理的、技術的、法的な意味において、現実性のある長期保存のプロセスを確定することを困難にしていることに起因する(2)

 また、同白書は保存する対象を「デジタルゲーム」と表記しているが、情報通信技術の劇的な変革に伴い、デジタル技術を基盤とするゲームとして認識される対象は、いわゆるビデオゲーム(日本ではテレビゲーム)やアーケードゲームだけでなく、オンラインゲームや携帯電話等によるモバイルゲームなどを含む多メディアに展開し、またその内容についても、ごくシンプルなライトゲームから重厚なストーリーと世界観を備えた複雑なインタラクティブ・エンタテインメントまで、非常に大きな振幅を持つようになっている。そのため、ゲームの収集や保存、アーカイブと一口に言っても、具体的で統一的な手法やプロセスをイメージしにくい状況になっている現実がある。

 旧来のパッケージ型のゲームであれば、ゲームソフト本体とゲームハードウェア、およびソフトのパッケージや取扱説明書などがさしあたりの保存対象となり、劣化や陳腐化の問題は免れないとしても、ゲーム保存のプロセスに一定の具体性を見いだすことは困難ではない。しかし、パソコンとネットワークを使うオンラインゲームや携帯電話でのモバイルゲームの場合は、特にゲームのプログラムが依存するプラットフォームの多様性と変化のスピードがネックとなって、パッケージ型のゲームよりはるかにその保存の方法やプロセスが見通しにくい。

 このような状況を総合的に踏まえて、IGDAのゲーム保存白書のタイトルは“Before It’s Too Late”となっている。まさに「手遅れになる前に」であるが、本稿では、ゲームをめぐる状況と変化を踏まえながら、ゲームの保存あるいはアーカイブという取り組みの現状がどうなっているのか、またそれをさらに進めて行くために必要な条件や課題がどこにあるかについて簡単な整理を試みたい。

 

2. ゲームアーカイブのコンセプトとアーキテクチャ

 筆者は、1998年に京都府と立命館大学および任天堂株式会社、株式会社セガ等による産学公連携でゲームを保存、利活用するプロジェクト「ゲームアーカイブ・プロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトでは、多種多様な展開を見せるデジタルゲームであっても、その原点はビデオゲームであり、そのアーカイブの構築は他のすべてのデジタルゲームのアーカイブに対するフィージビリティスタディ(実現可能性調査)となりうるという仮説的前提を置きつつ、実験的なゲームアーカイブを構築してきた(3)。その活動と経験の中で、ビデオゲームのアーカイブについて以下のような基本要件を確定してきた。

 

2.1. ゲームアーカイブの対象

 ビデオゲームは、その多くが文化的側面をもつ商業的な科学技術知財であり、通常のリニア的動画類と比較すると、プレイヤーとしてのユーザによる相互操作性を内包する特異なコンテンツであることから、保存しなければならない基本的な対象は次のような内容を持つ(4)

  • ①動画キャラクタと背景画
  • ②効果音と背景音楽
  • ③ゲームの展開順序
  • ④コントローラのボタン操作とゲーム画面の関係
  • ⑤ゲーム全般の操作感覚(ゲームプレイ感覚)

 

2.2. ゲームアーカイブの方法と目的

 次にゲーム保存の方法について、一般的なビデオゲームを想定する場合、現状では下記の3種類の方法が考えられる。

  • a)「現物保存」:ゲームのハードウェア本体とソフト及び取扱説明書類等の付属資料を現物保存する。
  • b)「エミュレータ」:ゲームのハードウェアと同じ機能を有するエミュレータをパソコン等の汎用コンピュータ上で作動させ、エミュレータソフト及びゲームソフトをデータとして保存する。
  • c)「ビデオ映像」:ゲームを実際に利用している映像(プレイ映像)をVTRやパソコンを使用してビデオ映像データとして保存する。

 もちろん、それぞれの方法には、物理的、技術的、法的な課題(5)があるが、加えて、保存すべき対象との相関において下記のような特徴および限界がある点に留意が必要である。

 「現物保存」は、保存対象①~⑤の全てをアーカイブすることが可能である。しかし、現物保存であるために多くの利用者が同時に活用出来る研究素材としては適さない。「エミュレータ」も、保存対象①~⑤の全てをアーカイブすることが可能である。しかもデータ状態での保存のため、多くの利用者が同時に活用することができる。「ビデオ映像」は、保存対象①~③はアーカイブ可能であるが、コントローラ操作に関する保存対象④と⑤の情報を記録することはできない(6)。しかし多くの利用者が同時に活用する事ができる上、利用者が自らゲームプレイをする必要がないため、利用者が直接プレイできない操作の複雑なゲームに関しても参照、研究する事が可能である。また映画や放送等の映像資料を保存するために開発された仕組みを活用して保存することも可能となる。

 したがって、これらの方法は相互補完的であり、どれか一つを採用するのではなく、保存すべきゲームの種別や量に応じて組み合わせた形でアーカイブのための方法論とすべきものである。

 そして、ゲームアーカイブの目的については、さしあたり他の標準的な文化的アーカイブにならって「保存・所蔵」、「展示・展覧」、「利用・活用」という大まかなカテゴリーを想定するならば、ゲームアーカイブのための手段と目的のコンビネーションは図1のように示される。

図1 ゲームアーカイブのパースペクティブ

図1 ゲームアーカイブのパースペクティブ

 また、具体的なゲームアーカイブには、このコンビネーションに加えて、収集対象とするゲームの属性(種別、プラットフォーム、発売地域や時期など)によるその包括性(特定のゲームだけをアーカイブするか、全般的なゲームアーカイブを目標とするか)という第三の軸が存在するが、現状のゲームアーカイブの試みは、どのような機関や組織が主体であるかによって、このようなパースペクティブを明示化しているケースとそうでないケースがある。

 

3. 国内外におけるゲームアーカイブの現状

3.1. 海外における状況

 IGDAゲーム保存白書における、具体的なアーカイブ機関や組織、プロジェクトの活動内容の記載は限定的で、北米5、欧州7の機関・団体と、オンラインアーカイブ2組織が記載されているだけであるが、ゲーム保存研究会による情報提供の呼びかけと調査によって、継続的に情報がアップデートされている(7)

 同白書の筆頭著者であるデヴィン・モネン(Devin Monnens)が2010年2月の学会発表で公表した最新リストでは、以下のように大幅に情報が拡充され、種別ごとに整理、紹介されている(8)

  • ①ゲームライブラリとゲームアーカイブズ:The American Classic Arcade Museum at Funspot(米国・ニューハンプシャー州ラコニア)、 Association MO5.com(フランス・パリ)など41機関、組織、グループ。内訳は、米国22、英国4、フランス4、日本2、カナダ、ドイツ、ニュージーランド、オランダ、ロシア、イタリアが各1、国を特定しないあるいはネット上のみの活動3となっている(9)
  • ②ゲーム企業によるコレクション:Nintendo of America Museum(米国・ワシントン州レドモンド)、The SEGA Game Archive(米国・カリフォルニア州サンフランシスコ)の2企業。
  • ③ゲーム保存を提唱するプロジェクト:Internet ArchiveのClassic Software Preservation Society(CLASP;米国)、Historia Komputera(ポーランド)、NDIIPPのPreservation Virtual Worlds Project(米国)など14機関、組織、グループ。内訳は、米国5、英国、ポーランド、オランダ、オーストリアが各1、国を特定しないあるいはネット上のみの活動5となっている。
  • ④コンピュータの歴史博物館:American Computer Museum(米国・モンタナ州ロゼモン)、Computer Museum(イタリア・ノヴァラ)、ENTER-Museum(スイス・ソロトゥルン)、Kiev Computermuseum(ロシア)、Museo do Computador(ブラジル・サンパウロ)など17機関。内訳は、米国7、ロシア2、英国2、ドイツ、イタリア、スイス、ブラジル、カナダ、オランダが各1となっている。
  • ⑤オンラインのアーカイブ:The Arcade Flyer Archive、AtariArchive.org、Virtual Worlds Timelineなど10団体。

 これらの情報から見えてくることは、一つには、図1に示したゲームアーカイブのパースペクティブで言えば「現物保存」+「保存・所蔵」(あるいは「展示・展覧」)を主とするタイプの試みが着実に増加し、グローバルに展開していることである。とりわけ注目したいのは、The Early New Zealand Software Database(ビクトリア大学;ニュージーランド・ウェリントン)のような、特定のゲームプラットフォーム、特定の地域に限定したゲームアーカイブの動向である(10)

 このプロジェクトは、ニュージーランドのビクトリア大学のメラニー・スワルウェル(Melanie Swalwell)博士が主催し、1970年代後半から1980年代にかけての同国の初期的なゲーム状況(セガ社のゲーム機SC3000が市場を牽引して、オリジナルのソフトウェアハウスが多数誕生した)を記録するためのゲームアーカイブを構築しているもので、日本や米国などとは異なった発展を見せた地域に固有のゲーム文化を保存、伝承しようとするものである。このようなアーカイブは、全般的なゲームアーカイブを構築しようとする試みとはやや異なる動機とインセンティブによって運営されており、国や地域の歴史研究、社会文化研究などの重要な資料を提供することによって、独自の存在意義を獲得していく可能性が考えられる。

 また、もう一つは、全米デジタル情報基盤整備・保存プログラム(NDIIPP)が推進する“Preserving Virtual Worlds”のようなデジタル情報の包括的保存プロジェクトである(11)。同プロジェクトの基幹組織の一つであるメリーランド大学のMaryland Institute for Technology in the Humanities(MITH)の所長であるネイル・フライスタット(Neil Fraistat)教授によれば、このプロジェクトは、MMORPG(多人数同時参加型オンラインゲーム)のようなネットワークゲームから、リンデンラボ社が運営するセカンドライフのようなメタバース(仮想空間)まで、デジタルなデータとしてネットワーク上に存在するものを、プラットフォームやコンピュータプログラムの種別を超えて一次的にそのまま保存する技術とその再現技術の総合的な研究スキームである。現状では、データの保存に際して現行のソフトウェアを提供している企業等の協力がないと不可能であることから、リンデンラボ社などが研究体制に加わっていることで一定の目処が立っているようであるが、それらを保存した後にどのように再現する環境を構築、維持していくかについては、まだ研究課題として検討段階ということであった(12)

 とはいえ、このような有力な総合大学を横断するメガプロジェクトは、現状では、図1における「エミュレータ」や「ビデオ映像」を組み合わせる形でしか実現を試みることが出来ない、ゲーム自体とそのインタラクティブな特性のデジタル情報化による保存に対して、革新的なアプローチを生み出す可能性を十分に秘めており、引き続き注目していく必要がある。

 

3.2. 日本の状況

 日本におけるゲームアーカイブは、納本制度に基づく国立国会図書館による継続的な収集を除くと、立命館大学の「ゲームアーカイブ・プロジェクト」以外には組織的な取り組みは見られない(13)

 ゲームアーカイブ・プロジェクトは、図1でいえば目的と手段のコンビネーション全体を横断的に指向するプロジェクトであるが、収集、保存する対象についてはデジタルゲーム全般ではなく、日本で制作されたビデオゲーム(海外販売されているものも含む)に限定している。また、方法としては図1の3つのアプローチを複合してゲームアーカイブを構築しており、そこから現段階で以下のような経験と知見が得られている。

 「現物保存」は、ハードウェアの物理的限界が明白であったとしても、散逸の恐れのあるソフトウェアが多数存在する現状では最も必要性の高いアプローチであるといえる。プロジェクトでは、まず日本および世界における初期的なゲーム状況の中で最も重要な位置づけを持つ任天堂ファミリーコンピュータ(ファミコン)の全ソフト(1,769タイトル)に加えて、セガ系、マイクロソフト系の各種ソフトウェアをおよそ500タイトル収集し、シュリンク(透明フィルム)によるパッケージ保護を含む現物保存環境の構築とともに、著作権表記を含む制作者情報、パッケージ画像、取扱説明書の一部などをデータベース化している(14)

 また、2009年度より、これまでアーカイブしたソフトウェア情報について、フルテキストサーチに加えて、ジャンル、プラットフォーム、発売日、レーティング、売上規模などを検索キーとして検索することが可能な新しいデータベースモジュールに移行する準備を進めている。昨今のUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)の潮流にも対応し、利用者が必要に応じて、ゲーム概要やタグ、外部リンクなどのアップデート情報をデータベースに追記できる機能や、動画共有サイトのEmbedコード挿入機能、動画アップロード機能についても、許諾関係の課題が整理されれば実装を検討する予定である。

図2 ゲームデータベース「Ludoly」(開発中の画面)

図2 ゲームデータベース「Ludoly」(開発中の画面)

 「エミュレータ」によるゲーム保存は、ゲーム内容の保存についてはバランスのとれた方法である。プロジェクトでは、このようなエミュレータによるゲーム保存のフィージビリティスタディとして、任天堂株式会社の許諾を得てファミコンのハードウェア・エミュレータ「FDL」を開発し、ゲーム保存の観点から運用実験を行っている。

図3 ファミコンエミュレータ「FDL」

図3 ファミコンエミュレータ「FDL」

 しかし、「ゲーム全般の操作感覚(ゲームプレイ感覚)」については、ゲームハード、特にコントローラの特性に依存する性格が強いため、ソフトウェア・エミュレータによる保存では限界がある。エミュレータによるゲーム保存の可能性としては、開発コスト、ランニングコスト、技術リスク、インタフェース、総合的な操作感等のトータルバランスをどう実現するかという課題を踏まえて、エミュレーションのハードウェアとソフトウェアをデリケートにデザインしていく必要がある。

 「ビデオ映像」によるゲーム保存は、全く新しいゲームアーカイブのアプローチであるが、プレイヤーの操作情報を内包した保存になるため、「コントローラのボタン操作とゲーム画面の関係」および「ゲーム全般の操作感覚(ゲームプレイ感覚)」が欠落する構造になる(15)。しかし、デジタルゲームは、同じ映像創作物である映画等とは違い、その映像を操作したユーザの感性も同時に付加される所に今までになかった新しい創作物の特性があると考えられる。このような観点からすれば、ゲームの映像保存アーカイブは、「創作者と遊び手の感性の記録・保存」として、ゲーム開発者の感性だけでなく、遊び手の感性も同時に記録・保存することが可能となり、後々に参照、研究素材として価値あるものとなることが十分に予想される(16)

 収集しているソフトウェアのビデオ映像を順次撮影してアーカイブするという段階にはまだ至っていないが、このような観点から、ゲームアーカイブ・プロジェクトでは、立命館大学内のゲームアーカイブ利用者の研究テーマ(ゲーム中のユーザ心理とコントローラの操作の相関研究など)に即して、研究資料としてのビデオ映像を撮影して蓄積している(17)

図4 記録されたビデオ映像の例(右下がボタン映像)

図4 記録されたビデオ映像の例(右下がボタン映像)

 

4. After It’s Too Late

 以上、ゲームアーカイブをめぐる国内外の最新動向を簡単に紹介してきたが、IGDAのゲーム保存白書が警告するように、デジタルゲームの素材的属性から考えて、すでに多くの資産が失われているかその間際である可能性がある。もちろん、「手遅れになる前に」できることはまだ多くあると信じたいが、すでにそうなりつつあるという現実を率直に認めた上で、いくつかの新しい展望について指摘して本稿を締めくくりたい。

 一つは、3.1.に見たように、世界のそれぞれの国や地域で、固有の若者文化として定着したゲーム文化をアーカイブしておこうという動きが活発になっていることである。どこか一つの機関や組織が全体としてのゲームアーカイブを達成することは困難であるとしても、それらの試みをネットワーク化したバーチャルなゲームアーカイブは現実的な実現可能性がある。

 もう一つは、いままでゲームアーカイブの主体としては想定されてこなかった個人、グループによる活動である。筆者は、あるフランス人ゲームコレクターのアーカイブ(18)を紹介されて感嘆したことがあるが、公開性と長期保存という観点からは限界があるこのような個人的な試み(コレクション)についても、なんらかの組織化を通じてバーチャルで継続性を持つゲームアーカイブに転換していく方法を検討してもよいであろう。

 ただし、いずれの場合にも、デジタルゲームという特異な属性を持つ素材をどのように扱い、保存し、利活用する道筋をつけていくかについて、ゲームの開発販売者、ユーザ、研究教育者とゲームアーカイブに関わる機関や組織、グループ、個人が共通して理解、納得しうる考え方とルールづくりが前提である。IGDAなどのゲーム開発者団体、デジタルゲーム研究協会(Digtal Games Research Association)、日本デジタルゲーム学会、ゲーム学会などの学術団体においても、このテーマの議論を広く公開しつつより一層活発に取り組んでいく必要がある。

立命館大学:細井浩一(ほそい こういち)

 

(1) Monnens, Devin et al. Before It’s Too Late: A Digital Game Preservation White Paper. International Game Developers Association, 2009, p. 3.
http://www.igda.org/wiki/images/8/83/IGDA_Game_Preservation_SIG_-_Before_It’s_Too_Late_-_A_Digital_Game_Preservation_White_Paper.pdf, (accessed 2010-04-05).

(2) Monnens, Devin et al. Before It’s Too Late: A Digital Game Preservation White Paper. International Game Developers Association, 2009, p. 3-8.
http://www.igda.org/wiki/images/8/83/IGDA_Game_Preservation_SIG_-_Before_It’s_Too_Late_-_A_Digital_Game_Preservation_White_Paper.pdf, (accessed 2010-04-05).

(3) デジタルゲームは、必然的にコンピュータゲームという側面を持つが、それを「コンピュータによって処理されるゲーム」(後藤敏行. コンピュータゲームアーカイブの現状と課題. 情報の科学と技術. 2010, 60(2), p. 72.)と広く捉えた場合、アーケードゲームのUFOキャッチャーのような、映像を活用しないタイプの筐体型アミューズメントもすべて対象とすることになる。しかし、デジタルゲームの核心は、テレビ画面に映し出された映像をテレビゲーム機に備え付けられた専用のコントローラで操作することから始まったところにあると考えると、そのような広義のとらえ方は、デジタルゲームという新しい表現メディアの展開とは異なる文脈において発生してきたものまでを対象とすることになり、映像コンテンツ領域から拡散することになる。この意味で、筆者が代表を務める「ゲームアーカイブ・プロジェクト」は、あくまでも映像メディアの一種としてのデジタルゲームに限定し、特にビデオゲームを中心とするパッケージ型ゲームのソフトウェアならびにハードウェアを対象として活動してきた。プロジェクトの詳細については下記の公式ウェブサイトを参照。
GAPweb:GameArchiveProject.
http://www.gamearchive.jp/, (accessed 2010-04-05).

(4) 以下により詳しく展開されている。
細井浩一ほか. ゲームアーカイブの構築と活用に向けて. 京都アート・エンタテインメント創成研究News Letter. 2005, (4), p. 10-14.
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/art_coe/nl/nl_4_03.html, (accessed 2010-04-05).

(5) 後藤敏行. コンピュータゲームアーカイブの現状と課題. 情報の科学と技術. 2010, 60(2), p. 69-70.

(6) ビデオ映像によるゲームアーカイブは、一定のゲーム操作スキルを有したプレイヤーによるゲームプレイをビデオ撮影することによって制作されるが、そのままではビデオゲームの特徴であるコントローラ操作に関連する情報を記録・保存できない欠点を持っている。そこで、立命館大学では、上村雅之教授の研究室においてゲーム機のコントローラボタンの操作状況を可視化する装置をテレビゲーム機に新たに付け加え、その装置をビデオカメラで撮影記録する事で、テレビゲームのコントローラのボタン操作状況をビデオ映像(ボタン映像)として保存する事を可能にした。さらに、ボタン映像とビデオ映像の時間関係を調整した上で画面合成したビデオ映像を作成することで、ゲームの保存対象の「コントローラのボタン操作とゲーム画面の関係」を直接観測可能なビデオ映像とすることができる展望を得ている。

(7) IGDAゲーム保存白書は、対象とするデジタルゲームを広く定義しているため、コンピュータハードおよびソフト、アーケードゲームおよびオンラインゲームについてのアーカイブの試みも含めてリストアップしている。

(8) Monnens, Devin. “State of game preservation in 2010: A survey of game preservation programs in the United States and abroad”. Southwest/Texas Popular Culture and American Culture Association 31st Annual Meeting Albuquerque, New Mexico, 2010-02-10/13.
公開されたリストには若干ではあるが休館、休止中の機関、組織、活動が含まれている。

(9) 日本の2機関は、立命館大学のゲームアーカイブ・プロジェクトと東京大学である。

(10) The Early New Zealand Software Database.
http://nztronix.org.nz/main.php, (accessed 2010-04-05).

(11) Preserving Virtual Worlds.
http://pvw.illinois.edu/pvw/, (accessed 2010-04-05).

(12) 立命館大学において開催されたデジタルヒューマニティーズのシンポジウム(2009年2月27日)に参加した同氏へのインタビューより。

(13) 長期保存という観点から見れば本質的に困難性があることから、本稿でもゲームアーカイブの主体としては取り上げないが、個人およびグループによるゲーム保存の実践や試みはPCゲームのようなコンピュータベースのものも含めて多数存在している。また、ゲームアーカイブ・プロジェクトより先行していた筐体型ゲーム機の収集と研究を中心とする「テレビゲーム・ミュージアム・プロジェクト」は、ゲームミュージシャンのすぎやまこういち、ゲームデザイナーの桝山寛らを中心として結成され、主にビデオゲーム期以前のアーケイドゲームマシンを収集し研究対象として整理・保存・展示してきたが、2007年度に正式に活動を停止した。同プロジェクトがアーカイブしてきた筐体型ゲームマシンの主要部分は、ゲームアーカイブ・プロジェクトが受託して引き継いでいる。

(14) ゲームデータベースの詳細については、以下を参照。
砂智久ほか. デジタルアーカイブの社会的利活用とその政策的課題について:GAP(ゲームアーカイブプロジェクト)の活動から. 政策科学. 1999, 6(2), p. 79-110.
また、特に取扱説明書のデータベース化については、以下を参照。
尾鼻崇. ゲームマニュアルを対象としたビデオゲーム研究の可能性:デジタル保存とデータベース構築の意義と課題. アートリサーチ. 2010, (10), p. 101-110.
ゲームデータベースの基礎情報の一部は下記URLで一般公開している。
“ゲームアーカイブ タイトルリスト”. GAPweb:GameArchiveProject.
http://www.gamearchive.jp/gatl/fctitle.html, (accessed 2010-04-05).

(15) 注(6)に示したように、ボタン記録装置を映像に付加することで「コントローラのボタン操作とゲーム画面の関係」についてはアーカイブ対象とすることができる。図4のビデオ映像には、右下にゲーム映像と同期しているボタン装置の点灯画面が組み込まれている。

(16) ゲームデータベースの項でも述べたように、動画投稿サイト等のウェブ上には、UGCとしての膨大なゲームプレイ画面の動画が存在する。これらの情報とゲームアーカイブをどのように関連させるかについては、特に法的な問題を含む議論になると考えられるが、本プロジェクトで取り組んでいるゲームプレイのビデオ映像は、撮影するゲームシナリオの部分(プロット)、撮影環境、撮影方法を一定にした人工的なものであり、ネット上の動画とは多くの点で異なっている。

(17) ゲームビデオ映像の撮影装置の詳細、およびそれを利用した実験についての詳細は、以下を参照。
上村雅之ほか. “ゲームアーカイブのための映像記録システム”. 中山隼雄科学技術文化財団研究助成(H17_A-12)最終報告書. 2008.
http://www.ritsumei.ac.jp/~hosoik/works/dp2006a.pdf, (参照 2010-04-05).

(18) Gorges, Florent. L’Histoire de Nintendo Volume 1. Paris, Pix’n Love, 2008, 226p.
Gorges, Florent. L’Histoire de Nintendo Volume 2. Paris, Pix’n Love, 2009, 195p.

 


細井浩一. デジタルゲームのアーカイブについて―国際的な動向とその本質的な課題―. カレントアウェアネス. 2010, (304), CA1719, p. 11-16.
http://current.ndl.go.jp/ca1719