CA1612 – ニュージーランドにおける法定納本制度改正の動き / 熊倉優子

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カレントアウェアネス
No.290 2006年12月20日

 

CA1612

 

ニュージーランドにおける法定納本制度改正の動き

 

 ニュージーランドでは2006年8月12日,電子的ドキュメント(electronic documents)も納本の対象に含めた新納本制度がスタートした。

 

経緯

 ニュージーランド国立図書館(National Libraryof New Zealand:NLNZ)は,2001年に電子情報資源の収集・管理等に関する中期計画を策定し,2003年に国立図書館法を改正した(CA1537参照)。そして,翌2004年に,改正法の第31条を踏まえ,図書および定期刊行物の納入に関する規程“NationalLibrary Requirement (Books and Periodicals) Notice2004”を定め7月1日に施行した。そして2006年5月11日,2年越しの審議を経て,電子的ドキュメントの納入に関する規程“The National Library Requirement(Electronic Documents)Notice2006”を告示した(以下Notice 2006)。5月の告示から8月の発効までの期間に,NLNZは出版者への文書の送付,説明会の開催およびホームページでのアナウンス等で,新納本制度の周知に努めた。

 

The National Library Requirement Notice 2006

 Notice 2006は,電子的ドキュメントをオフライン・ドキュメント(off-line documents)とインターネット・ドキュメント(Internet documents)に分けて規定している。

 オフライン・ドキュメントとは,(1)磁気的メディア(magnetic media;フロッピーディスク,ハードドライブ,オーディオテープ,ビデオテープなど),(2)光学的メディア(optical media;CD,DVDなど),(3)電子的電子情報貯蓄装置(electronic electronics storage device;USB,メモリーカードなど),である(3条)。出版者はオフライン・ドキュメントを発行した20営業日以内に2部(当該出版物が1,000ニュージーランドドル(逐次刊行物は年間の購読料が3,000ニュージーランドドル)以上の場合は1部)納本しなければならない(第5条)。複数の言語で出版された場合はそれぞれの言語につき納本する(第6条)。

 インターネット・ドキュメントに関しては出版者に納本の義務を課さず,NLNZが複製を通じて収集することを定めている(第8条)。ただし,複製が困難な場合,NLNZが出版者に対して複製の補助を求めることができる。

 また,Notice 2006は電子的ドキュメントの納本の例外規定を設けている。それは当該電子的ドキュメントが,(1)官公庁が業務の処理に必要な情報源として作成した資料もしくは,(2)公文書と同程度の公開,保存が保障されている資料である場合には,大臣の許可を得た上で納本が免除されるというものである(第9条の2)。

 

新納本制度の運用

 NLNZは2004年に電子情報資源の収集,保存,提供を一元的に管理するソフトウェア NDHA(NationalDigital Heritage Archive)プログラムの開発を発表した。このプログラムの開発のため,NLNZは2006年5月13日にSun Microsystems,2006年8月11日にEndeavor Information Systems と協力関係を結んでいる。

 インターネット・ドキュメントの収集はウェブ・ハーベスタによる機械的収集が中心となる。しかし,年報および調査ドキュメント(consultation documents)等の情報価値の高い資料については自発的納本を呼びかけている。

 またNLNZは,Webブラウザーを利用して,オンラインでインターネット・ドキュメントを納本できるようにしている。出版者はユーザー登録を行い,インターネット・ドキュメントのアップロードを行う。続いてアップロードしたインターネット・ドキュメントに対して,著者名,タイトル,ISBN,ISSN等のメタデータを,出版者が付与して登録が完了する。このインターネット・ドキュメントのオンライン納本システムは2005年9月より試験的に稼働している。

 このほかメールで納本することも可能である。また,情報収集のために自動的に配信されるメールマガジンやメーリングリストにNLNZのメールアドレスを追加するよう呼びかけている。

 収集されたインターネット・ドキュメントは,基本的にインターネットを通じて利用に供される。ただし,利用者は所定の画面にユーザー名とパスワードを入力する必要がある。有料サイトや会員向けサイトといったアクセスに制限のあるインターネット・ドキュメントの場合は,同時に3人までしか閲覧できない。

 NLNZの新たな納本制度はまだ始まったばかりである。今後の展開に注目したい。

収集部国内資料課:熊倉優子(くまくら ゆうこ)

 

Ref:
National Library of New Zealand. “National Library of New Zealand (Te Pura Matauranga o Aotearoa) Act2003”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/files/Act03-19.pdf >, (accessed 2006-10-19).

“National Library Requirement (Books and Periodicals) Notice 2004”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/files/RequirementNotice2004.pdf >, (accessed 2006-10-19).

“National Library Requirement (Electronic Documents) Notice 2006”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/files/2006118.pdf >, (accessed 2006-10-19).

“Legal Deposit for New Zealand publishers”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/en/services/5legaldeposit.html >, (accessed 2006-10-19).

“National Library Takes Next Step in Preserving Digital Heritage”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/bin/media/pr?item=1147320272 >, (accessed 2006-10-19).

“Extended Legal Deposit Regulations Come Into Force 12 August 2006”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/bin/media/pr?item=1155100358 >, (accessed 2006-10-19).

“Endeavor Information Systems Announces First Partnership for Long-Term Access and Preservation of Digital Content with the National Library of New Zealand”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/bin/media/pr?item=1154899822 >, (accessed 2006-10-19).

“Harvesting Digital Heritage”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/bin/media/pr?item=1159154472 >, (accessed 2006-10-19).

“Legal Deposit Code of practice”. (online), available from < http://www.natlib.govt.nz/files/legaldeposit/Code%20of%20Practice.pdf >, (accessed 2006-10-19).

“Frequently asked questions about Legal Deposit”. (online),available from < http://www.natlib.govt.nz/files/legaldeposit/Frequently_asked_questions_about_Legal_Deposit_(August_2006).pdf >, (accessed 2006-10-19).

Sun Microsystems. “New Zealand to Digitize and Preserve National Heritage”. (online), available from < http://www.sun.com/smi/Press/sunflash/2006-03/sunflash.20060313.2.xml?cid=155 >, (accessed 2006-10-19).

 


熊倉優子. ニュージーランドにおける法定納本制度改正の動き. カレントアウェアネス. (290), 2006, 6-7
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/module/ca/item.php?itemid=1048