CA1397 – 米国の公共図書館員に「ガラスの天井」!? / 平田紀子

カレントアウェアネス
No.262 2001.06.20


CA1397

米国の公共図書館員に「ガラスの天井」!?

1991年の米国図書館協会(ALA)の調査によると,公共図書館と専門図書館で働く図書館員の88%は白人である。これは最近の調査でも変化はなく,1998年の調査では89%,1999年の調査では91%の図書館員が白人であった。

今回紹介する,ロードアイランド大学のギルトン(D. L. Gilton)氏が行った調査もまた,米国の司書職とは圧倒的に白人の職業である,ということを示すものである。調査は公共図書館員の昇進についてのもので,調査対象となったのは,ALA会員,および「アメリカンインディアン図書館協会(American Indian Library Association)」など各種有色人種の図書館協会会員計250人である。今回の調査では,これまでほとんど扱われてこなかった公共図書館員の学歴,人種,性差による地位占有率や昇進率を比較している。

調査では,250人中90人から回答を得ている。60人が白人,8人がアジア人もしくはアジア系,2人がネイティブアメリカン,4人がラテン系,13人がアフリカ系であった(3人は人種に関する回答を拒否した)。有色人種の回答者数は,各々の人種についての一般的な結論を出せるほど多くはないが,現在の図書館界における一定の傾向を反映しているといえる。

さて,回答者のうち,7割が管理職の地位にあり,半数強が現在勤める図書館で昇進したことがある。昇進の際に有効な要素は「適切な経験」「経験の長さ」であるという。また,学歴については,回答者全体の4分の3が図書館学の修士号を取得しているが,学歴のみを見た場合には,昇進について統計上有意な差は出ていない。人種については,回答者全体の3分の2が白人であり,3分の1が有色人種であるが,有色人種の図書館員は中間管理職になりやすいが,より上位の管理職になりにくい,という結果が出ている。性別については,回答者全体の8割弱が女性であり,全般的に男性のほうがやや有利,という結果が出ているが,これは統計上有意な差ではない。

今回の調査対象の母集団の性格から考えるに,約半数強が昇進の経験がある,という調査結果は,図書館員一般より高い割合を示しているとみられる。しかし,この調査はまた,多くの公共図書館員にとって,昇進のチャンスが以前より改善されていることを示している。

地位・職務と学歴,経験年,性差の間には,統計上有意な差は認められなかったが,白人の地位・職務と有色人種の地位・職務には,明らかな違いが見られた。白人の図書館員の4割が図書館長である一方,有色人種の図書館長は2割に満たない。一方,有色人種の6割が中間管理職であるが,白人の中間管理職は3分の1である。このように,有色人種の図書館員には「ガラスの天井」が存在するが,それを確認するにはさらなる調査が必要であり,また,なぜそうなるのかを検討しなくてはならない。

平田 紀子(ひらたのりこ)

Ref: Gilton, D. L. Onward and upward. Pub Libr 39 (4)214-219, 2000