CA1345 – BLの新収オーラルヒストリーコレクション / 齋藤健太郎

最近数十年の間に,現代史の研究で,オーラルヒストリーと呼ばれる史料が用いられるようになった。現代史では,紙に記された文書史料に加えて,「歴史の生き証人」に対する面接調査もまた,情報源となりうる。そのため,研究対象を文書史料に限るべきでない,と主張する現代史家が現れ…

カレントアウェアネス
No.254 2000.10.20

 

CA1345

BLの新収オーラルヒストリーコレクション

最近数十年の間に,現代史の研究で,オーラルヒストリーと呼ばれる史料が用いられるようになった。現代史では,紙に記された文書史料に加えて,「歴史の生き証人」に対する面接調査もまた,情報源となりうる。そのため,研究対象を文書史料に限るべきでない,と主張する現代史家が現れた。そして,面接調査の記録や,記録を用いた研究を指してオーラルヒストリーと呼び,文書史料に対置したのである。

このようなオーラルヒストリーの大規模なコレクションが,英国図書館(BL)のNational Sound Archive(NSA)に寄贈された。イギリス放送協会(BBC)が,膨大な面接調査の録音資料と,その録音に基づいて作成したラジオ番組を贈ったのである。面接では,衣食住など生活に関わる身近な話題から法律や技術,未来の展望に及ぶ16の項目について,聞き取り調査をしている。調査の対象者は,6,000人にのぼるイギリス人で,地域・生活形態・年齢の多様性が保たれるよう考慮して選ばれている。調査は1998年9月以降,NSAとBBC地域局等のラジオ局とが共同して進めた。この調査に基づいて作られたのが,「世紀は語る(The Century Speaks)」という一連のラジオ番組である。これは1999年9月から12月まで放送され,今年後半にも再放送が予定されている。

寄贈されたコレクションは「ミレニアムの記憶庫(Millennium Memory Bank)」と名づけられ,一部はBLセント・パンクラス館の入口ホールで聴けるようになる。また,国外の研究者にも利用できるよう,2000年秋にはNSAのオンライン目録”CADENSA”を通じて提供することが計画されている。

齋藤 健太郎(さいとうけんたろう)

Ref: BBC gives the British Library largest oral history archive [http://www.bl.uk/information/pr2000/23.html] (last access 2000. 8. 30)
BBC Online-History [http://www.bbc.co.uk/history/oral.shtml] (last access 2000. 8. 30)
British Library: National Sound Archive Oral History [http://www.bl.uk/collections/sound-archive/history.html] (last access 2000.8.30)