CA1283 – オンライン電子ジャーナル・サービスの比較評価 / 福島寿男

カレントアウェアネス
No.242 1999.10.20


CA1283

オンライン電子ジャーナル・サービスの比較評価

多数の雑誌をパッケージした図書館向けオンライン電子ジャーナル・サービスが増加している。そのなかからどのような基準でサービスを選択するか,また電子化フルテキストはプリント版と同じ(欠落がない)か,という観点からロード・アイランド州大学図書館コンソーシアム(HELIN)のブレナン(Patricia B.M. Brennan)等がアメリカにおけるサービスを比較評価している。HELINにおけるIAC社の利用経験をふまえて調査課題を整理し,調査対象として表の4社を選択した。図書館へのオンライン・レファレンス情報サービスにフルテキストを加えた参考図書出版社系(IAC, UMI, H.W. Wilson)と,プリント版に加えて電子ジャーナルの取次もするようになった雑誌取次業系(EBSCO)がある。多数の電子ジャーナルへのアクセスには二次情報と検索システムが不可欠なので,従来何らかの形で雑誌の二次情報に縁のあった業者が参入しているようだ。

業者名
二次情報採録誌数
内フルテキスト化誌数
IAC
1,580
750
EBSCO
3,215
1,041
UMI
1,977
1,105
H.W.Wilson
(2,500以上)
(1,100以上)

(Wilson社の数値はブレナン等に記載がないため,同社ホームページによる。複数あるパッケージのうち最多のもの)

調査は,チェックリストを作成し,業者にアンケートした結果を,さらに実際に利用して検証する,という方法で行われた。チェックリストの調査項目は,収録資料の種類(一般誌,学術誌,モノグラフ等),採録誌のリストの有無とそのアクセス法,収録年代,索引(インデクサー,主題索引語,記事採録基準,どのようなフィールドがあるか,タイムラグ等),検索仕様(論理検索,検索できるフィールド,結果の表示等),ヘルプ仕様,スクリーン・デザイン,テキストと画像,文献入手法(プリントアウト,電子メール,ダウンロード),信頼性,アクセス法(Telnet,Web),価格設定であった。

4社ともキーワード論理検索機能,米国議会図書館件名標目表ベースの主題検索機能がある。二次情報への採録基準は,IACが半頁以上の論文,EBSCOは長さにかかわらずすべての論文を採録するが,編集者へのレターは採録せず,UMIは論文,論説,解説を採録,Wilsonはコラム大以上の論文,論説,書評を採録するというものであった。二次情報へのアクセス段階でかなり差があった。7誌を選んで,フルテキストにアクセスし,プリント版との比較も行った(98年1月実施)。例えばMechanical Engineering誌の場合,IACでは最新号が97年12月号で多くのコラムが欠落,EBSCOは同98年2月号,97年12月号が欠号で編集者へのレターが欠落,UMIは同98年2月号で編集者へのレターとNew Productsという常設欄が欠落。Wilsonは調査時点で画像を提供していなかった。結局,電子版「フルテキスト」でプリント版の内容を完全無欠(cover to cover)に提供しているものはなかった。著者はプリント版に最も近いことを評価して,HELINに対してUMIの採用を勧告している。

個別のアクセス仕様,採録誌リスト,収録年代等はWeb上で公開(期間限定試用サービスもあり)されている。上記のサービスは,エルゼビア(Elsevier)社等出版社系のサービスと異なり,出版社の異なる多数の雑誌にアクセスできるのが魅力だが,反面タイムラグや欠号すらあるようだ。プリント版に代替するには,論文以外のコラム,論説,編集者へのレター(ISI社の引用ランキングでは論文以上に大ブレイクすることもある),書評等が欠落していないか注意する必要がある。

電子ジャーナル・サービスでは,情報が発生してから利用者の手に渡るまで図書館員が介在することがない。どのサービスをいかにして選択するかが最も重要な仕事になる。この分野は変化が激しく,調査時点と本稿執筆時点でサービスの名称や内容も異なっているし(UMIはBell & Howell Information and Learningに社名変更),上記以外にも様々の機関が多様なサービスを展開している。従って,本調査の価値はその結果よりも評価基準や方法にあるといえよう。

福島 寿男(ふくしまひさお)