カレントアウェアネス
No.232 1998.12.20
CA1229
台湾のマンガ図書館
マンガを図書館の蔵書にすべきか否かは従来からさまざまに論議されてきた。「悪書」といわれ,攻撃された時代もあったが,最近では世界に誇れる日本文化の一つとして評価され,図書館の場においても広島市文化財団による「広島市まんが図書館」が開館する(1997)など,着実に市民権を得つつある。
さて,その日本のマンガも大人気を博している台湾の首都・台北で,はじめてのマンガ専門図書館である中崙図書館が開館したのは今年の7月24日のこと。午前9時に開館するとすぐに数百人の利用者が押し寄せたという。蔵書は約20,000冊のマンガのほか,マンガの研究書など。作成した台湾のマンガ家のデータベースや新聞の記事索引は,ネット上で公開されている(http://192.83.187.6/~a14/home.htm)。
台北市長は開館の祝辞で「かつてはマンガは文化として認められず,マンガを好む子どもは読書ができないと思われていたが,いまの子どもたちは絵を見て考えることに慣れており,多くのマンガは小さな子どもの学習の第一歩になる」との見解を述べているが,こうした考え方は日本でも普及しつつあるだろう。
この中崙図書館で目を引くのは,マンガ家のサイン会を催したり,さらには図書館員がマンガのキャラクターの扮装をして応対するなど,日本の図書館ではちょっと考えられないようなサービスぶりである。利用者もまた2,3千元(日本円で1万円ほど)はたいて扮装してくるというから,日本のマンガ専門書店のような状況と思えばいいだろうか。
台湾はかつては海賊版天国で,日本のマンガもほぼすべて海賊版で普及していたが,近年は正規翻訳版が出版されるようになった。また,オリジナルなマンガが描ける台湾の作家も成長し,これから発展していくメディアとして期待を集めている。
マンガ文化が台湾でどのような形で発展していくか,そして図書館がそれにどう関わっていくか,今後の動きに注目したい。
村上 かおり(むらかみかおり)
Ref:中国時報 1998.7. 25
New library for comics. Nat Cent Libr Newsl 30(2) 5, 1998
久留井洋士 「広島市まんが図書館」の誕生 図書館雑誌 92(9) 784-785,1998
みなみりょうこ 「漫画」(特集:台湾文化読本) しにか9(8) 76-77,1998