カレントアウェアネス
No.232 1998.12.20
CA1230
Allegro:オクスフォード大学ボドリアン図書館における和書目録
−日本関係情報の現状 (9)−
当大学中央図書館であるボドリアン図書館の和書コレクションはヨーロッパでも有数の長い歴史をもつが,大学の日本研究講座を担う日本研究書コレクションとして組織的収集が始まったのは1957年以降であり,更に1979年より従来の人文・古典研究中心の講座に社会科学分野が加わったのに伴い,コレクションの収集範囲も拡大された。1993年4月にボドリアン図書館の分館としてボドリアン図書館付属日本研究図書館(Bodleian Japanese Library: BJL)がオープンし,現在和書70,200冊,欧文書15,300冊を蔵する規模となっている。
当館の和書蔵書目録の機械化は1993年7月に開始された。学術情報センターのNACSIS-CATのレコードを利用してOxford Allegro Catalogue of Japanese Booksが作られ,1998年11月現在41,370レコードを収録するに至っている。
海外の大学・研究図書館等の環境で和書目録機械化プロジェクトを実施し,さらにOPAC上での漢字表示を必須条件とする場合,最大の問題点は,親機関のシステムとは別個に漢字表示可能なシステムを開発しなければならない点にあるかと思われる。すなわち,システム開発・管理・維持・サポートのための人的資源の確保,限られた選択肢内での機器・ソフト・書誌データベース等の選択・入手・管理・維持,カタロガーのトレーニングなど−更に実行資金・予算の確保を含めて−これら全てを独自に行うということは,日本語資料担当部門という,高度に専門的かつ小規模な部門にとって並々ならぬ負担となる場合が多い。
当ボドリアンでは人的資源・館内外両方からの資金・援助に関して些かながら恵まれたことが幸いして,和書目録の機械化はCJK目録(中国語・日本語・韓国語書籍目録)開発プロジェクトの一部として実現された。図書システムとして採用されたAllegro-Cは,ドイツのブラウンシュヴァイク工科大学(Technische Universitat Braunschweig)のエヴェルスベルク(Bernhard Eversberg)氏の開発したもので,現在ヨーロッパの学術図書館で広く採用されている。このシステムを当館のCJK目録用として開発し管理・維持するにあたってはヘリウェル(David Helliwell)氏(東洋書籍部中国部門)個人の功に負うところが大きい。
CJK目録の機械化を始める際に,基本設計方針として考慮した点は以下のとおりである。(1)当地での標準的な機器,及び比較的廉価なソフトウェアの利用。(2)当館での利用及び管理・維持に最も適切な機能を備えたシステムの設計・開発。これに加えて和書目録としては(3)パイロットプロジェクトとして1991年から始まっていた英国日本語出版物総合目録作成プロジェクト(CA1138,CA1143参照)のもとにアクセス・利用可能となったNACSIS-CATのレコードを使用することを基本方針とした。漢字表示の為に必要とするソフト(fep)は,残念ながら既成のソフトで利用可能なものが皆無であったため,当館の外注によって開発された(JitsuYou JKDOS)。
アレグロ目録の特徴の一つとしてブラウズ索引が挙げられよう。すなわち書名・キーワード・著者名・出版者・ISBN/ISSN・件名・請求記号それぞれのブラウズ索引により検索が可能となっている。NACSIS-CATのデータ自体にはローマ字表示が含まれていないが,書名・著者名フィールドのカタカナ表示はアレグロ上でローマ字に変換されており,書名・(書名内)キーワード・著者名のブラウズ索引はローマ字と漢字の両方からの検索が可能となっている。
アレグロ目録は学内ではethernetによってリンクされているが,外部からのアクセス方法として(1)Allegro-X版のtelnetによるアクセス(erl.ox.ac.uk又は163.1.62.50)と(2)Allegro Avanti server版のWWWアクセス(http://www.bodley.ox.ac.uk/dept/oriental/allegro.htm)がある。両者ともUnionWay,Japanese Twinbridgeなど一般に利用されているソフト(fep)を使って漢字表示(EUCコード)が可能である。又このアレグロ目録ではボドリアンのCJK目録のみならず英国日本語書籍総合目録(http://erl.ox.ac.uk/cgi-bin/acwww25/maske.pl?db=gbjpn)も同様に提供することに成功している。この総合目録は学術情報センターからの更新ファイルを転送(ftp)することにより週毎に更新されている。
当ボドリアンのアレグロ和書目録開発に倣って英国Japan Library Groupの他のメンバー館で同システムを採用するところも増え,現在6館を数えるに至っており(注),Allegro Users Groupも作られ情報交換・問題解決のために頻繁に会合が開かれ相互協力が行われている。
オクスフォード大学ボドリアン図書館附属日本研究図書館:Izumi K. Tytler
(注) 英国図書館東洋書籍部日本語書籍部門,英国暁星国際大学図書館,大和日英基金図書館,シェフィールド大学東アジア研究図書館,大英博物館日本部門図書室,国際交流基金日本語センター図書館。