カレントアウェアネス
No.215 1997.07.20
CA1138
英国日本語出版物総合目録(1)
−日本関係情報の現状 (2)−
1.歴史
英国内の図書館にある日本語の図書および逐次刊行物の総合目録を作成するプロジェクトは,もともと次に述べる二つの過去のプロジェクトを引き継いでいる。ここで一応二つのプロジェクトと規定したが,それらの構成メンバーや目的などはほとんど同一であり,二つのプロジェクトとは単に形式上の規定に過ぎず,実体は一つのプロジェクトのように機能してきた。この二つのプロジェクト以外にも,さらに歴史的に遡れば,日本図書館グループ(Japan Library Group)が1970年代に作成した,冊子体の日本語雑誌のチェック・リストもこの英国日本語出版物総合目録の前走者と見なすことができるであろう。
A.ケンブリッジにおける,日本図書館グループの総合目録プロジェクト
このプロジェクトを説明するために,まず最初に日本図書館グループが何であるかを述べる必要がある。英国には国立図書館と大学図書館を総合する組織として,SCONUL(Standing Conference on National and University Libraries)があり,その中にACOOM(Advisory Committee on Oriental Materials)という東洋関係の資料を扱う下部組織があり,そのACOOMの中に東洋の各地域の図書館資料を取り扱うグループがあった。たとえば,南アジア図書館グループ,東南アジア図書館グループ,中国図書館グループ,コリア(韓国,北朝鮮)図書館グループ,中近東図書館委員会,ヘブライカ図書館グループなどがそれらに当たる。そして,その一つが日本図書館グループである。現在は旧ACOOM所属の各地域図書館グループはSCONULから離れ,NCOLR(National Council on Orientalist Library Resources)を形成している。その日本図書館グループによる,ケンブリッジ大学図書館を中心とした日本語書籍総合目録作成のプロジェクトがこのプロジェクトである。このプロジェクトの開始時期は早く,1986年まで遡る。このプロジェクトでは,総合目録の書誌レコードとしてJ-BISCを使用し,ローマ字および漢字が出る二つのオンライン目録の作成を目的としたが,実際には次に述べる学術情報センターのNACSIS-CATをもとにしたプロジェクトとの関係でローマ字による目録のみが実現し,現在ケンブリッジ大学図書館から提供されている。実際にJ-BISCから書誌データをダウンロードした英国の図書館は,ケンブリッジ大学図書館(約23,000件),ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)図書館(約25,000件)および英国図書館東洋インド省部(約20,000件)である。それらのダウンロードされた書誌データは,UK MARCフォーマットに変換され,ケンブリッジ大学図書館のOPACの一部として提供されている。
B.NACSIS-CATプロジェクト
このプロジェクトは,学術情報センターのNACSIS-CATを英国で使用することを中心にしている。このプロジェクトは,パイロット・プロジェクトの段階(1991年−1992年)を経て1995年3月に終了したが,プロジェクトの組織そのものはプロジェクト終了後もそのまま継続されている。しかし,プロジェクトの名称は以後英国日本語出版物総合目録プロジェクトと呼ばれるようになった。プロジェクトの調整・運営は英国図書館研究イノベーションセンターが行い,パイロット・プロジェクトおよび本プロジェクトの両方の報告書が出され,学術情報センターの出版物にも掲載されている。プロジェクトの総合目録作成部分は日本図書館グループのプロジェクトの場合と同じようにケンブリッジ大学図書館が担当してきた。また,前述のJ-BISCを使用したプロジェクトとの関係では, J-BISCからダウンロードした三つの図書館の書誌データのうち,ケンブリッジ大学図書館分の大部分およびSOAS図書館そして英国図書館東洋インド省部のおよそ半分ほどがNACSIS-CATに入力されている。
ケンブリッジ大学図書館:小山 騰(こやまのぼる)
追記:この原稿を提出後,英国日本語出版物総合目録の中のローマ字のみの目録がケンブリッジ大学図書館からWWWで提供されるようになった。URLは下記の通りである。