カレントアウェアネス
No.228 1998.08.20
CA1205
カナダ国立図書館保存用コレクション−10年を迎えて−
カナダ国立図書館(NLC)では2部納本制を採用しているが,その内の1部を別置して,保存用のカナダ資料コレクション(Canadiana)を形成することを決めたのは,1988年である。National Library News誌は,この10年を振り返り,今後の展望を報じている。
NLCは,1988年に保存用コレクションの構築のため,以下のような三段階の計画をたてた。
- 1988年以降納本された資料を別置する。
- 1988年以前に収集した資料から1部を抜き取り,保存用資料に加える。
- 非図書資料(学習教材,マイクロ資料,レコード,CD)へと対象を拡大する。
第一段階はすでに実施され,納本された2部の資料のうち1部は,脱酸処理等の適切な処置を施した後,保存用書庫に別置される。これらの資料の利用は館内での閲覧に限られ,展示,複写,館外貸出は制限されている。蔵書総数1,500万冊のうち,この保存用資料は約116万冊。またCanadianaの収集の完全を期するために,納本とは別に,主に外国で出版されたカナダ関係資料の購入をしているほか,寄贈・交換の手段も用いている。
NLCは第二段階にも着手しはじめ,1988年以前に納本された資料の抜き取りが順次行われている。
1か月に約200冊がコレクションに加えられており,保管スペース不足や,漏水,洪水等,蔵書の維持に係わる問題も発生し,現在スペースの確保を各方面に働きかけている。
大量脱酸装置をはやくから取り入れる等,以前から資料の保存に力を入れていたNLCではあるが,この計画がスタートしてから,職員の間で,資料をより大切に扱う姿勢が芽生えたこともメリットにあげている。
これからの道のりは遠いが,一歩一歩確実に進んでいる印象をうけた。
阿蘓品 真澄(あそしなますみ)
Ref. Evans, Gwynneth. Celebrating 10 years: the preservation collection of Canadiana at the National Library of Canada. Nat Libr News 30 (1) 1-4, 1998
各国の納本規定 図書館研究シリーズ(5)159-161,1961
高橋和雄 米国議会図書館およびカナダ国立図書館における大量脱酸設備について 国立国会図書館月報(293)2-10,1985