CA1164 - インターネットによるカナダ政府情報の提供−カナダ国立図書館から見た課題− / 山岡公一

カレントアウェアネス
No.220 1997.12.20


CA1164

インターネットによるカナダ政府情報の提供
−カナダ国立図書館から見た課題−

国立図書館などの政府機関が,インターネットを通じて人々に政府情報へのアクセスを保障しようとするとき,どんな課題に直面するのだろうか。カナダ国立図書館のナンシー・ブローディ(Nancy Brodie)は,National Library News誌において,インターネットによりカナダ政府情報を提供する際の課題として,以下の5項目をあげている。

入手可能な情報を知るためのツールの整備

まず,現在公開され,入手可能な情報源を教えてくれるツールを整備しなければならない。現在カナダには,次のようなツールがある。

(1)伝統的な書誌ツール。例えば,Weekly Checklist of Canadian Government Publicationshttp://dsp-psd.pwgsc.gc.ca/dsp-psd/Checklist/lists-e.html),Canadiana,AMICUSデータベース。これらは,政府電子出版物までもカバーしている。

(2)InfoSource(http://www.info.tbs-sct.gc.ca:80/infosource)。あらゆる形態の未出版連邦政府情報を広く収録する。

(3)Prime Government of Canada(http://canada.gc.ca/)に収録されている連邦機関のサイト・リスト,「Federal Organizations」(http://canada.gc.ca/depts/major/depind_e.html)。インターネット上の連邦政府情報の総合的なアクセス・ポイント。

将来的には,スタート場所を知らないユーザーのために,利用者の探索を支援してくれるソフトの導入が望まれる。米国政府が採用しているZ39.50準拠の政府情報検索ソフトであるGovernment Information Locator Service (GILS)(http://www.usgs.gov/gils/)などはその良い例である。

(4)カレントアウェアネスのためのツール。各省及びPrime Government of Canadaのサイトの最新リスト,(“What's New”listings),最新e-mail配布リスト,各省のニュースリリース,Weekly Checklistが,その例である。

検索

(1)検索のためにはキーワード・アクセス以上のものが必要である。標準化された人名や,明確で正確なタイトル・場所・日付,さらに,統制語など,図書館員にとってなじみの事項は,インターネットの世界では,“メタデータ”(metadata)として知られる。基本的メタデータは著者が作成し,図書館は統制語のような情報を補う。

(2)国立図書館と各政府機関は,政府情報のメタデータの規格として,上述のGILSの採用を検討している。Government Information Finder Technology (GIFT)(http://www.gc.ca/ 注: '97年12月現在の名称は,Canada siteである。)は,検索の正確性を期すためにGILSレコードを利用するようになっている。さらに,カナダ国立図書館はWebサービスの一つとして,カナダ国内のサイトの件名リストである“Canadian Information by Subject”(http://www.nlc-bnc.ca/caninfo/ecaninfo.htm)の作成に着手している。

情報の正真性

連邦政府が作成・発行したドキュメントであることを保証する方法はいくつかある。

1)URL中にドメイン名“gc.ca”を含むことにより,連邦政府が作成・発行したものであることが示される。2)インターネット・サイトでは,カナダ国旗やCanadaという文字,各省庁のシンボルを表示すべきである。3)ドキュメント・プロファイルは,最小限,タイトル,年月日,作成省庁名を含むべきである。GILSレコードは,この要件を満たしている。

最終的には国立図書館及び保存図書館のコレクションが,正真性を保証する情報源になることが期待される。

カレントなアクセスの保障

Prime Government of Canadaのインターネット・サイト,各省サイト,保存図書館のコレクション,Canadian Information by Subject等の主題ガイド等が,現在利用可能なアクセスポイントである。カナダ産業省は,Community Access Programにより,カナダ全土でインターネットへのアクセスを可能にするために技術的インフラ整備を図っている。

長期間に渡るアクセスの保障

標準的なフォーマットで情報を蓄積,保存することによって,長期に渡って利用できるようにする必要がある。著作者は,しばしば,電子情報を簡単に処分できる著作物とみなし,それを保存する努力をしない。ニュースリリースは6カ月後消滅することがある。政策表明のための説明文書は,ほんの短時間のみ利用可能である。製品やサービスに関する情報は,サービスが変化した時に上書きされてしまう。図書館は,他のサイトのドキュメントを指示する方式をとり,それらを収集して自らのコレクションを構築する努力をしていない。作成機関以外に収集,保存する機関が存在しないため,ドキュメントは作成機関が消去したときに,永久に消滅してしまう。国立図書館と保存図書館は,短期的なものばかりでなく長期間のアクセスを保障するために,政府電子出版物を収集,保存することが不可欠である。カナダ国立図書館は,「電子出版パイロットプロジェクト」(http://www.nlc-bnc.ca/e-coll-e/index-e.htm)を通してその実現を目指している。

以上がブローディが提示したインターネットによるカナダ政府情報提供の課題であるが,これは,我が国の将来を考える上でも参考になる。なお,上記の「電子出版プロジェクト」であるが,我が国立国会図書館も参加し,1996年半ば以降のカナダ統計局刊行の23タイトルを,実験的に当館の官庁・国際機関資料室で,本年1月13日から利用者に提供している。

山岡 公一(やまおかこういち)

Ref: Brodie, Nancy. Canadian Government information on the Internet: a perspective from the National Library of Canada. Nat Libr News 28(5)15-16,1996.
Canadian Governments On-Line: intergovernmental study of on-line access to government information and services in Canada: recommendations for Government joint action: : executive summary. CGOL Intergovernmental Steering Committee, 1996