CA1122 – 電子メールによるレファレンス(2)−レファレンスインタビュー− / 伊藤りさ

カレントアウェアネス
No.212 1997.04.20


CA1122

電子メールによるレファレンス(2)−レファレンスインタビュー−

電子メディアを利用したレファレンスサービスがその範囲を広げ,複雑なレファレンスが電子メールによってやりとりされるようになるにつれ,電子メールで質問してきた利用者に対して,同じように電子メールを用いてインタビューすることが一般的になっていくだろう。これに関し,エイベルズは,1993年から1994年にかけて,メリーランド大学図書館情報学部の学生に利用者を割り当て,主に電子メールを用いて質問の受付から回答までを行わせるという実験を実施した。その結果および電子メールとその他のメディアを用いたインタビューとの比較検討から,学生が行っていた電子メールによるインタビュー方法を分類し,各々の長所短所の比較をした上で,望ましいインタビューの方法を提案している。

電子メールは非同時性のコミュニケーション形態である。そのため,質問や説明はすべて遅れをともない,インタビューの完成までに,何日か,もしくは何週間かすらかかることがしばしばである。したがって,電子メールでのインタビューにおいては,対人や電話とは異なるコミュニケーション技術が要求される。例えば,非言語的な手がかりとなる身振り,表情や声の調子などを確認できないため,電子メールでのやりとりでは注意深い解釈と行間を読むことが必要とされる。また,誤解が生じないように注意してメッセージを書くべきである。

この実験で学生達が行ったインタビュー方法は,次の5つに分類された。

  1. こまぎれ(piecemeal):特定の目標や明白な方向づけがないまま,長期にわたって多数のメッセージが送られるが,質問はレファレンス・ライブラリアンの思いつくままにばらばらとなされるため,必要事項がすべて尋ねられるとは限らない。この実験では,回答の形式や期限といった基本的な質問が忘れられることが多々あった。
  2. フィードバック(feedback):インタビューによって利用者の要求事項を確認する以前に探索を行い,その結果に対する利用者のフィードバックを得ようとする。この方法は,インタビューとして送った質問に対する利用者からの返答が遅れた場合にとられる傾向があるが,インタビューと回答の提示とが平行して行われるため,質問の趣旨が最後まで明確にならないままにレファレンスが終わってしまう恐れがある。
  3. 質問ぜめ(bombardment):一回のメールで複数の質問をするが,その際,1件1件独立した形(箇条書きなど)ではなく,一つの長いパラグラフの中に詰め込んでしまう。そのため,利用者はそこに含まれる質問のいくつかに返答し忘れる傾向がある。この方法は,相手の反応にはお構いなしで,一方がひっきりなしに質問を浴びせかける,電話や対人でのやりとりになぞらえることができる。
  4. 推定(assumption):電子メールによるインタビューでは,メッセージのやりとりの間にインターバルが生じやすいので,時間を節約するため,利用者に尋ねる代わりに推定に基づいて調査を進めてしまうことがある。当然のことながら,回答までの所要時間は短くなる。初めの段階でよく説明されていて,あまり複雑でない質問は比較的この方法に向いているようだが,その場合でも推定の要約を利用者に送って確認してもらうことが望ましいだろう。
  5. 組織的(systematic):事前に作成された標準的な質問事項のリストにそって利用者にインタビューを行うか,通常のレファレンス申込用紙に相当する一定の書式を利用者に送り,それに則ってレファレンス質問を記入した上で返送してもらう。このやり方だと,一回のメールで必要な質問がカバーされるため,メール数も少なくてすみ,返答もれも少ないと考えられる。これは明らかにもっとも有効な方法で,利用者とレファレンス・ライブラリアンによる評価でも,レファレンス・ライブラリアンが情報要求を適切に理解したという点で評価が一致した。

実験結果をもとにエイベルズが提案する電子メールでのインタビューのモデルは,3つのメールで構成される。すなわち,申込用の書式を用いた利用者からの質問,レファレンス・ライブラリアンによる情報要求の要約,利用者による確認である。主題の明確化のために追加のメッセージが必要になるかもしれないが,それが2つ以上続くのであれば,電子メール以外のコミュニケーション手段をとることも考えるべきである。全ての質問が電子メールでのインタビューに適しているわけではないと考えられるので,電子メールでのインタビューにもっとも適したリクエストのタイプに関しても,調査が必要であろう。

コンピュータネットワークはあらゆる種類の機関でますます普及しつつある。電子メールはほとんどのネットワークユーザーに利用されるネットワークサービスであり,新しいコミュニケーションの形態と見なされる。かつては対人でのやりとりに限定されていたサービスと機能は,いまや遠隔地にも提供できるようになった。そうした中で,図書館情報サービスはリモートレファレンスサービスを提案し始めるようになっている。現在のところ,電子メールによるレファレンスサービスは,レディ・レファレンスが主流だが,複雑なレファレンスリクエストも,電子的情報サービスの拡大につれもっと一般的になっていくだろう。情報を扱う専門家は電子メールで効果的なレファレンスインタビューを行う準備をしなくてはならない。この研究でなされた,電子メールでのインタビュー方法の分類は,今後電子メールでやりとりをする上で参考になるであろう。

伊藤 りさ(いとうりさ)

Ref: Abels, Eileen G. The e-mail reference interview. RQ 35(3)345-358,1996