CA1041 – 手を貸してください:返却処理に活躍するロボット / 紫藤美子

CA1041

手を貸してください−返却処理に活躍するロボット−

スウェーデン北部の地方都市,エーンシェルツビークの図書館が,疲れ知らずで愚痴をこぼさない新しいスタッフを獲得した。彼の名前はハリー(Harry)。一時間当たり400冊の本の返却処理をし,主題別に仕分けるロボットである。スウェーデンのABB Robotic Products社が工業用ロボットを改造して開発した。

というのも,図書館員は本を扱うことにより,一日平均32,000回も腕や手首の動作を繰り返すため,親指,手首,肘等に重大な損傷を与える職業的危険性が大きい。ハリーは,このようなRSI(Repetitive Strain Injury:反復運動過多損傷)の危険に直面した図書館員の労働状況を政府が研究した結果,誕生したロボットである。

ハリーは,本を傷つけないように設計された特殊なグリッパーを備えている。本のサイズ・厚さ・装丁等に関係なく,本をつかむことが可能である。

具体的な動きを見てみよう。利用者が返却した本をベルトコンベアーにおくと,スキャナがバーコードを読み取る。読み込んだ情報により,コンピュータが返却処理を行い,主題を示すコードがハリーに送られる。するとハリーは,本を持ち上げ,コードの指示により18の主題分野別のトレーに本を納める。満杯になったトレーはメカニカルアームによって車に乗せられ,書架に搬送される。最後の配架だけはこれ迄と同様の人手による作業である。一方,本を返却した利用者には,レシートが発行される。万一,期限を過ぎていた場合は本を持ってスタッフのところに行くよう指示が出る。

以上がハリーの仕事の様子である。閉架の自動書庫は,自動倉庫の応用としてわが国にも例があるが,開架書架で返却処理にロボットが導入されたのは,恐らく世界初のことであろう。図書館サービスのスピードアップに加え,図書館員の日常的肉体労働の軽減に有効であることから,世界中の図書館員の興味を大いに引きつけると思われる。

紫藤美子(しどうよしこ)

Ref: Robot cure for RSI. Libr Ass Rec 97 (6) 307, 1995
Industrial robot lends a hand in a Swedish library. ABB Review 16-18, 1995