CA1033 – 図書館員の将来像 / 横山順子

CA1033

図書館員の将来像

図書館員の将来像は,どのようなものとして描かれているのだろうか。

イリノイ大学のランカスター(F. Wilfrid Lancaster)は,電子化が進み,情報が印刷物で流通しなくなる日を思い描く。本の形で残るのはただ楽しみで読むものだけ。人々が,事務所や家にいながらコンピュータを使って直接必要な情報を取り出すようになれば,図書館の役割はどんどん小さくなるだろう。しかし,上手に効率良く必要な情報を検索したり,分析したり,ファイルを作ったりするには専門家の助けが必要だ。情報を扱う専門家として図書館員の役割はますます重要になり,学問,健康管理,産業,その他のあらゆる分野で必要とされるようになるだろう。図書館員は,図書館という組織を離れて,弁護士のようにフリーランスの専門家として仕事をするようになるだろう。要するに,図書館は消滅するだろうが,図書館員は,別の場所で一層重要な役割を担ってゆくだろう,というのがランカスターの見解である。

一方,変化はしても図書館も図書館員も存在し続けると考えるのは,テキサス大学オースチン校総合図書館のビリングス(Harold Billings)である。昨今,図書館と図書館学校は大変な危機下にあるという論調が多く,図書館や図書館員や図書館教育が死に瀕しているという主張もあるが,それらは変化しているのであり,死に向かっているのではない。本や紙を基礎にする文化は,新しい情報技術と共に将来も存在し続けるであろう。であればこそ,図書館員は伝統的な図書館運営の知識と熟練を駆使して,新しい情報社会における図書館を運営して行くことができる。多くの図書館員は,伝統的な知識や技術とともに新しい技術も習得する。選書,目録,分類,保存などについての専門的知識と熟練は,新しい電子情報に対しても必要である。今や野放しの状態にある“情報”を捕捉し,規格を作り,コントロールし,どの分野の人にも利用しやすいものにして行くのは図書館員であってこそできる仕事である。

大きな変化の時代に,大学図書館が将来にわたってその発展を確保するためには,図書館員は,明確な図書館の改革方針をたて,実際的で柔軟な経営戦略を持つべきであり,さらに,計画実現のために大学経営に直接関わるべきであるとし,成果をあげつつある一つの事例として英国ブリストル市のウェスト・オブ・イングランド大学(UWE)図書館の“ニュー・モデル”アプローチを紹介するのは,図書館のヒーリイ(Mike Heery)である。

UWE図書館の取り組みは以下のような多くの相互に関連した方針からなっている。a. 経営理論に基づき,職員参加を取り入れた図書館運営。b. 図書館の目的に適った職員の配置と能力開発。c. 図書館の刷新を可能にする予算を確保するための民間企業を参考にした資金獲得方法。d. 理事会や教授会との密接な関係の維持。e. 情報技術を取り入れた新しい情報提供とコレクション構築の方策。f. 図書館が大学の教育戦略の発展に積極的な役割を担うこと。g. 図書館をワークショップや出版などで利用者に積極的に売りこむこと。

このような方針を実現するためには,図書館員は従来ややもすると敬遠してきた経営感覚を身につける必要がある,というのがヒーリイの主張である。

さて図書館員の性格は,時代の変化に伴って変わって来ているのだろうか。アメリカウィスコンシン州エッジウッドカレッジ図書館のシャーディン(Mary Jane Scherdin)は1992年,国内1600人の図書館員を対象に,マイヤーズ=ブリッグズ・テストを用いて性格検査を行った。その結果,図書館員は,従来言われてきたような,決まり切ったことしかせず,近視眼的で何事にも消極的という性格とは異なる結果を得たと言う。

このテストは,性格を内向型と外向型(I/E),感覚型と内的直感型(S/N),思考型と感情型(T/F),判断型と知覚型(J/P)とに分類する。1971年から1984年にかけて集められたデータで図書館員が示したISFJ型は19%,今回は8%となった。今回の調査で多かったのはISTJ型17%,INTJ型12%。ISFJ型はもの静かで良心的で真面目で謙遜。INTJ型は,より夢想的で革新派。ISTJ型は物ごとを変更する前に経験と知識を利用して系統的に研究する。特徴的なのは,職業について5年以内の図書館員たちは,研究者と同じような性格の傾向を示している。コンピュータの出現により,図書館員たちはより高度な,理論的調査活動に従事することになった。彼等の性格はそれに相応しいものであることを示している。図書館員はコンピュータ恐怖症ではない。回答者の94%が楽しんで使っていると答え,69%は大いに楽しんでいると答えている。人を相手の仕事を好むか物やデータを相手の仕事を好むかという点では,ちょうど中間点を示した。図書館と情報専門家は新しい情報化社会の変革に十分対応し得る資質を持っていると著者は結論する。

横山順子(よこやまじゅんこ)

Ref: Lancaster, F.W. Libraries in the year 2001. Her Libr Sci 32 (3-5) 163-171, 1993
Billings, H. The tomorrow librarian. Wilson Libr Bull 69 (5) 34-37, 1995
Heery, M. New model librarians: a question of realism. J Librariansh Inf Sci 25 (3) 137-142, 1993
Scherdin, M.I. et al. Shattering our stereotype: librarians' new image. Libr J 120 (12) 35-38, 1995