CA1034 – レファレンス・ライブラリアンはいかにして生き残るか / 加藤浩

CA1034

レファレンス・ライブラリアンはいかにして生き残るか?

情報化社会の到来が言われて久しい。そのまっただ中で,情報の提供に密接に関わる図書館員が,いかなる課題を抱え,それらを克服していくべきか,すでに様々な形で論じられてきた。今回の特集を機会に,レファレンス部門に焦点を当てて再考してみよう。

モリソン(Margaret Morrison)やフェアリーズ(Cindy Faries)がまとめるところによると,新しいレファレンスの在り方を見据える際に考慮すべきポイントは,以下の通りである。

まず根本的な思考態度として,従来の蔵書中心のサービスから利用者中心のサービスへの移行。利用者のニーズがますます多様化し,複雑化する中で,それらを的確に分析し把握せねばならないということである。利用者の要求に応じて情報を加工・操作して提供する必要も出てこよう。

さらに,機械化された各種情報源の登場。爆発的な増加傾向を見せるオンライン・データベースや電子出版物は,また,レファレンス・ライブラリアンに新たな検索技術の迅速かつ充分な習得を迫っている。我々は,電子機器の取扱方法を熟知しなければならないと同時に,電子化された新たなフォーマットの情報についても紙・マイクロ形態の資料同様,その内容や検索の利点と限界について理解しておかねばならない。キャンベル(J. Campbell)が言うところの「知の航海図」を常に頭の中に備えておくということである。

電子化の潮流は,従来のレファレンス・デスクの性格にも影響を与えよう。利用者がセルフ・サービスで検索可能なシステムを構築し,それを館内外で利用させるという姿は,レファレンス部門を,多数のワークステーションとそれらに対する支援組織の結合体へと変化させるかもしれない。そして,利用者ニーズの多様化に対応して,機器操作等,比較的単純な質問には非専門職(パラ・プロフェッショナル)が回答し,専門職たる図書館員は,焦点を絞った高度な質問に回答するという体制が徐々に作られていくであろう(この分化の傾向については,CA758も参照)。

そして,外部との関係では,コンピュータや電子通信関連技術の専門家とのパートナーシップの確立が必要なことは言うまでもない。電子出版をめぐって予想される様々な問題を解決するために出版者との緊密な連携も保持せねばならないだろう。

利用者との関係はどうであろうか。「情報の『競技場』に多くの積極的なプレーヤーが参入しつつある」(CA758参照)ことを考えると,安閑としてはいられない。「情報コンサルティング会社が設立され,我々が現在,家庭医や顧問弁護士をもつように,個人ライブラリアンをもつようになる」時代が到来するかもしれない(CA973参照)。利用者はまさに〈顧客〉であり,図書館員は彼らの注文に応じて情報という〈商品〉を提供する。我々は,常に成果を挙げ続けることによって,自分たちこそが最良最適の情報供給者であることを絶えず証明していかなければならないのである。

これからの図書館員について,京藤は「インフォメーション・セールスマン」の役割を求めている。新しく生産された情報そのものや,有用な情報の入手方法を,利用者に尋ねられる以前に能動的に伝達していくことで,利用者の研究等への活用を促進するという意味である。

売れる情報を抱えてネットワーク上を動き回るセールスマンは,競争原理,経済法則にどっぷり浸かっていて,ややもすれば激動する環境の中に埋没しかねない。京藤自身が言うように今一度,自己の使命を明確にし,サービス対象をはっきりと定めておく,フェアリーズの言葉を借りるならば,《レファレンス・ライブラリアンの哲学》を打ち立てておくべきであろう。将来を展望しにくい今の時代においては,戻るべき原点を常に意識しておく必要があるからである。

加藤 浩(かとうひろし)

Ref: Morrison, M. Reference now and when. J Libr Adm 20 (3/4) 131-140, 1995
Faries, C. Reference librarians in the information age: learning from the past to control the future. Ref Libr (43) 9-28, 1994
京藤松子 図書館のリストラクチャリング−アメリカン・センターの場合− 専門図書館(148)38-41,1994