閉会の辞
那須 雅熙
本日は、お忙しい中、各方面から多くの方々にご参加をいただき、そして、長時間にわたりご聴講をいただきまして、誠にありがとうございました。また、講師の方々には、遠路はるばるお出でいただき、貴重なご講演、ご報告を賜りましたことを厚く御礼申し上げます。
世界では、一度にかけがえのない大量の文書遺産を消失させる、戦禍や地震、洪水が続いています。本日のテーマとしましたスマトラ沖大地震・津波に前後して、ワイマールのアンナ・アマリア公爵夫人図書館の大火、ハワイ大学ハミルトン図書館の水害、中越地震、ハリケーン「カトリーナ」、パキスタン大地震とそれこそ枚挙にいとまがないほどです。
災害はいつ何時やってくるかもしれません。危機に備えるために、私たちは災害予防に関する知識をもち、災害にすぐに対処できる方法を会得しなくてはならないでしょう。しかし災害は、のほほんとした日常生活からリアリティーをもってイメージすることは困難です。不幸にも災害に遭遇した図書館や文書館に対して、想像力を働かして共感の念を持たない限り、なかなかその怖さや実態を知ることはできないのです。言い換えれば、被災した図書館や文書館の復興を支援し、困難な復興のプロセスを共にしてこそ、私たちが災害に対してどのように対処したらよいかということを学べるのだろうと思われます。
保存関係の方々のところでは、現在、何時来てもおかしくはないと言われる大規模地震への対応が、喫緊の課題となっていることと存じます。本日の講演をそのための参考にしていただくとともに、日頃あまり文書遺産の保存というようなことにご関心が無かった方々には、「失われた記憶」、「失われようとしている記憶」の重大さを知っていただけたかと存じます。そして、これを機にスマトラ沖地震・津波の被災の復興支援の輪が広がりますことを心から祈念するものでございます。
アジア地域センターは、IFLA/PACの掲げるプログラムに基づいて、今後も防災活動を中心の活動に据え、それだけでなくさまざまな資料保存の問題に取り組んでいく考えでおります。どうぞ今後とも、アジア地域センターの活動につきましてご支援、ご協力を賜りますよう重ねてお願いし、閉会の挨拶に代えさせていただきます。