E1895 - 「日本アニメーション映画クラシックス」の公開について

カレントアウェアネス-E

No.322 2017.03.23

 

 E1895

「日本アニメーション映画クラシックス」の公開について

 

 東京国立近代美術館フィルムセンター(以下,フィルムセンター)は,2017年2月22日,デジタル化した所蔵フィルムのオンライン配信を開始した。国産アニメーション映画が最初に劇場公開された1917年から100年を迎えたことを祝して,ウェブサイト「日本アニメーション映画クラシックス」を立ち上げ,現存する戦前作品(1917-1941)の中から,最古の作品と言える『なまくら刀』(幸内純一・作)など64タイトルを公開している。また,日本におけるアニメーション映画の先駆者の一人,大藤信郎(1900-1961)の製作関連資料約140点を展観する。

◯ウェブサイト開発の経緯

 フィルムセンターは2014年度から,文化庁の文化芸術振興費補助金(美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業)の交付を受け,「映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究事業(BDCプロジェクト)」を進めてきた。この事業では,デジタル映画の保存に関わる技術動向等の調査に加え,所蔵品の大規模なデジタル化のワークフロー構築や,インターネット公開に向けた著作権処理など,コレクションの利活用に必要な条件整備に係る調査研究に取り組んでおり,この「日本アニメーション映画クラシックス」ウェブサイトの開発は,所蔵品公開の新たな方法を試みるものと位置づけられている。この事業は3年間の限定的なものであるが,補助金による新規予算が可能にした専門スタッフの配置によって,長年継続してきたフィルムの安全保護(状態を確認し,適切な環境で保管することや不燃性フィルムに複製することなど)やカタロギング,施設内での上映や外部機関へのフィルムの貸出,番組制作・パッケージ販売等への素材提供といった活動と並行させながら,デジタル技術に特化した実験的なプロジェクトを展開することができた。

 フィルムセンターとしての最初の配信事業にアニメーション映画が選ばれた理由は,100周年ということに限らない。むしろ,初期アニメーション映画に特徴的とも言えるその残存率の高さに由来する。フィルムセンターの所蔵作品数をもとに,日本劇映画の残存率を考えると,1910年代から1940年代までの作品は約12%と低い。一方,同時期のアニメーション映画の残存率は,『日本アニメーション映画史』掲載の作品目録の収録数と,フィルムセンター所蔵作品数を基にすると,約70%にものぼる。この残存率の背景には,高い製作コストが興行に向かず,作家の多くが当時の文部省などの委託を受けて製作したため,その完成作品の原版が省庁に保管されていたこと,また,小型のフォーマット(16mm,9.5mm)で学校や家庭に広く頒布され,複製の数そのものが多いことなどがある。100年にわたる日本アニメーション映画史の始まりを作品とともに振り返ることができるのは,当然ながら,作品が残り,保存されてきたからである。この配信事業を通じてそのことを知ってもらい,フィルムアーカイブ活動への理解がより深まることも期待したい。

◯連携による課題の解決

 ウェブサイトの企画や配信システムの構築は,「実業史錦絵絵引」(E1314参照)や「藤本義一アーカイブ」(E1766参照)等,数々の制作実績のある国立情報学研究所(NII)と共同で行った。

 まずは,一般に見慣れない古いサイレント作品を中心に公開する動画配信サイトに,どのような「入口」を設ければ,興味を持ってもらえるのか。ウェブサイトには,作品の一覧表示だけでなく,カテゴリー分類を用意した。例えば,GIFアニメを使ったサムネイルがマウスカーソルを重ねると動き出す「アクション」のカテゴリー表示では,「歩く・走る」など,各作品から切り出された特定の動きの表現を一覧できる。ウェブサイトだからこそ可能であるこのような表示方法によって,アニメーション映画の要となる「動き」から,作品に出会うことができる。

 また,工夫をしたのは表側だけではない。自館サーバーからの配信に伴う負荷を軽減するため,YouTubeやVimeoといった民間の動画共有サイトを利用する機関も少なくない中,今回は,NIIと文化庁が共同で運営する「文化遺産オンライン」の外部連携機能(API)を動画配信に活用した。「文化遺産オンライン」の持つ動画配信機能の実例として,今後の改良や利用の促進にも資することが見込まれる。

◯反響と今後の展開

 SNS等による情報拡散のおかげで,ウェブサイトには公開から1週間で約4万6,000件のアクセスがあった。研究資料・教材としての今後の利用計画が聞かれるほか,米国の日本研究司書の方々からの反響も大きく,英語版ページの準備を進めている。ウェブサイトの公開は,今のところ2017年末までを予定しているが,公開の継続とさらなる内容の充実や利用方法の開発に向けて,アンケートへの協力を呼びかけている。また,インターネット配信に伴う著作権処理実務は,かかる時間のわりに成果が少なく,権利者不明等による理由から公開することのできなかった作品も多く残る。これらについては対象作品リストを公開し,情報提供を求めているところである。

東京国立近代美術館フィルムセンター・松山ひとみ

Ref:
http://animation.filmarchives.jp
http://animation.filmarchives.jp/oofuji.html
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/shien/suishin/
http://www.momat.go.jp/fc/research/bdcproject/
http://www.momat.go.jp/fc/aboutnfc/filmbunka/
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000004-I000650981-00
http://animation.filmarchives.jp/categories/motions/1
http://bunka.nii.ac.jp/
http://www.momat.go.jp/nfc_bdc_blog/wp-content/uploads/sites/8/2017/02/JAFC_copyright_WIP.pdf
E1314
E1766