E1618 – 図書館におけるLinked Data:実現させよう!<報告>

カレントアウェアネス-E

No.268 2014.10.09

 

 E1618

図書館におけるLinked Data:実現させよう!<報告>

   

 フランスのリヨンにおける世界図書館情報会議(WLIC):第80回国際図書館連盟(IFLA)年次大会に先立ち,2014年8月14日にパリのフランス国立図書館(BnF)において,IFLA情報技術分科会とセマンティックウェブ研究会(Semantic Web SIG)の共催でサテライト・ミーティング「図書館におけるLinked Data」が開催された。国立図書館,公共図書館からの参加者のほか,大学等の研究機関やITベンダなどから合わせて188名を超える参加があり,国立国会図書館(NDL)からは関西館図書館協力課の大柴忠彦課長と筆者が参加した。

 午前に,特に多言語化・多様なデータモデルへの対応を中心とした事例紹介として図書館からと開発者側から発表する2つのセッションがあり,午後に,語彙のコントロール・知識組織化体系などLinked Data(CA1746参照)を実現する技術要素にポイントを置いた発表のセッションと開発ベンダ3社によるパネルディスカッションがあり,全体として4部構成で行われた。

 第1セッションでは「実現させた人々-図書館におけるLinked Dataの成功事例」と題し,3つの事例発表があった。欧州図書館(The European Library:TEL)とEuropeana(E1557参照)からは,多言語で種類の異なるデータについて,DBpediaのように一般に公開されている知識組織化体系を利用しての膨大なデータの統合への活用事例が紹介された。BnFからは,data.bnf.frをITベンダと2010年から開発している事例が紹介され,技術スキルの伝承, データや利用者増加への対応,書誌情報の改善が課題として示された。

 NDLからは「Web NDL Authorities:Linked Dataとしての国立国会図書館典拠データ」と題し,まず著者名典拠や件名標目表について,冊子体やMARCフォーマットによる頒布からLinked Dataとして提供するまでに至る取組みを紹介した。続けて,Web NDL Authorities(E1198参照)について,NDLがバーチャル国際典拠ファイル(VIAF)に参加し,現在ではVIAFや米国議会図書館件名標目表(LCSH)とのリンクを行っていることを含めて,概要を紹介し,引き続きWeb環境や図書館利用者へのLinked Data対応を推進していく方針を説明した。

 第2セッションでは「図書館によるLinked Dataや関連アプリケーションの開発展望」と題して,まず大学研究者から,図書館のLinked Data実現方法(独自開発,オープンソース等の活用,協働,商用利用)について,書誌情報の作成・提供・外部情報活用の視点から考察が示された。またITベンダは,電子書籍など著作の表現形が増える場合において,セマンティックウェブ技術がメタデータの相互運用を可能とすることを説明した。

 第3セッションでは「図書館のLinked Dataのための語彙の作成,維持そして使用」と題してそれぞれの事例が紹介された。LCやOCLCなどの代表者からは,MODS(CA1690参照)について,MODS/RDFオントロジーの開発やRDF変換ツール開発を目指すグループの2013年後半からの活動が紹介された。Europeanaの代表者は、Linked Dataによるデータ提供を実現するEuropeana Data Model(EDM)について、手稿の書誌データをEDMにマッピングしやすくするための拡張や、学術著作に注釈を付与するための拡張を行った事例を紹介した。

 書誌コンサルタントからは,日々更新される語彙のバージョン管理について,URIに日付やバージョン番号を含むことで割り当てられた意味を正確に特定することを可能とするアイデアが紹介された。またUNIMARC関係者からは,クロアチアの総合目録を例に,UNIMARCの書誌情報や典拠情報をRDFへマッピングしてLinked Dataとして実現した際の,オントロジー・語彙の課題を中心とした事例の報告があった。

 最終となる第4セッションでは「図書館のためのLinked Dataソフトウェアとサービスの設計」と題し,ITベンダや開発者が,図書館や文化機関にLinked Data技術を適用することへの関心についてパネルディスカッションが行われた。Ex Libris社の代表者は最新の製品ではURIアクセスとJSONでの返戻を行うと述べた。OCLCの代表者はエンティティを基礎とするLinked Dataのデータ構成とその語彙としてSchema.org(E1192参照)を結びつけた事例を報告した。Logilab社の代表者は,BnFと共同開発したdata.bnf.frで使用されているソフトウェアの一部をフリーウェアとして,コミュニティ発展のために提供することを提案した。

 セマンティックウェブ研究会におけるLinked Dataの取り組みは、第79回シンガポール大会(E1479参照)と今回のリヨン大会と2大会連続でサテライト・ミーティングを開催するなど活動が目覚ましいものであった。本ミーティングに参加し,図書館によるLinked Dataが主流になってきているという動きを感じた。またその背景として,セマンティックウェブ技術を実現する各種の技術要素が着実に整備され,発展してきていることが感じられた。

電子情報部電子情報サービス課・竹鼻和夫

Ref:
http://ifla2014-satdata.bnf.fr/program.html
http://ifla2014-satdata.bnf.fr/pdf/iflalld2014_submission_Oshiba_Takehana.pdf
http://ifla2014-satdata.bnf.fr/pdf/3_iflalld2014_ppt_oshiba.pdf
http://ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/2012_4/article_02.html
CA1746
CA1690
E1479
E1557
E1198
E1192