CA1263 – ドイツにおけるネットワーク資源の組織化の試み(2) / 山岡規雄

カレントアウェアネス
No.239 1999.07.20


CA1263

ドイツにおけるネットワーク資源の組織化の試み(2)

3.メタデータによる組織化

3.1 メタデータとダブリン・コア

メタデータについては,すでに多くの文献において解説がなされているので,ここで詳しく説明する必要はなかろう。簡単にいってしまえば,メタデータとは,メタレベルのデータ,すなわち「データのデータ」ということである。データとは,何も電子的なデータに限られるわけではなく,図書や雑誌に掲載されているデータもデータなのであるから,従来の形態の目録,索引類も「メタデータ」なのである。しかし,現在「メタデータ」という言葉は,ほとんどの場合インターネット上の情報の効率的な検索を補助するためのツールとしてのメタデータを意味しているといってよいであろう。

この広く通用している概念でいうメタデータの特徴の一つには,著作者自身で作成することが可能であるという利点が挙げられる。つまり,自分が作ったものを検索してほしいと思うなら自分でそのためのデータを作ろうという考え方である。こうすることによって,先に指摘した目録作成に伴う負担という問題を解決する道筋が見えてくる。また,ダブリン・コアがメタデータの事実上の国際標準として普及しつつあるので,先に指摘したもう一つの問題点,国際性の問題も解決されることになる。

ダブリン・コアについてもすでに多くのところで解説がなされているので,簡単に概要を説明するだけにとどめる。ダブリン・コアは,1995年のOCLCのワークショップで提案されたメタデータの記述規則であり,その後の議論の積み重ねの結果,現在ではタイトル(Title),著者あるいは作者(Creator),主題及びキーワード(Subject),内容記述(Description)などからなる15項目の基本要素を記述項目として設定している。この15項目のすべての記述が必須となっているわけではなく,どの項目について記述するかということに関しては,作成者の選択に任されている。

このように,項目の名称と内容だけしか決まっていなくて,記述方法を定めていないような規則は,従来の目録規則に習熟した図書館員の目から見れば,きわめて不十分との感を抱かせるものである。そうした考えに対し,ダブリン・コアでは,各項目に“qualifier”を付して,例えば,基本要素の第3のSubjectに対し,「DDCの分類」という限定を設けるといったようなデータの詳述化を許容している。図書館界では,このようなデータの充実化を図るべきであるという「ストラクチュアリスト」と簡素なままでよいとする「ミニマリスト」との論争が起きているとのことである。

3.2 METAタグ作成用フォーム

メタデータは,著作者自身によって作成可能であると述べたが,さらに,そうして作られたメタデータは,文書自体にはめ込むことができるという特性を持っている。サーチエンジンによっては,文書の冒頭にはめこまれたメタデータの部分に比重を置いた検索を行うので,それによって精度の高い検索が可能となるのである。

文書自体にはめ込むとは,より具体的にいうと,HTML文書の場合,< HEAD >と< /HEAD >というタグの間に,METAタグを用いたデータを記入するということである。その表現方法は,< META NAME=”属性” CONTENT=”属性値” >という形式をとる。例えば,「著者は,Margrit Lauber-Reymannである」という情報をダブリン・コアを使って表現すると,〈META NAME=”DC.CREATOR”CONTENT=”Lauber-Reymann, Margrit” >となる。しかし,注(1)(CA1257参照)にあげた文書の実際のメタデータを見ると,< META NAME=”DC.CREATOR” CONTENT=”< TYPE=Personalname >< SCHEME=RAK >Lauber-Reymann, Margrit” >となっていて,< TYPE=Personalname >< SCHEME=RAK >といったqualifierが入っている。これの意味するところは,RAKによる個人名であるということであろう。qualifierに関する記述規則には,まだ定まった方法はないらしく,後で見るように,< META NAME=”DC.CREATOR.Personalname… >とピリオドで区切って記述していく方法もある。

こうしてMETAタグを入れておけば,自分が作成した文書の検索効率が上がり,自分の文書を必要としている人々の元に届く確率が高くなるということになる。しかし,そうしたインセンティブがあっても,いちいちタグを入れて記述するのは,面倒な作業である。そこで,もっと簡便に作成できる方法を提供しようということで考え出されたのが,METAタグ作成用フォームである。これは要するに,予め設定された様式に従って,各項目に属性値だけを埋め込んで,最後にメタデータ作成のボタンをクリックすれば,機械的にタグが付与され,メタデータを作ってくれる仕組みのことである。

その具体例の一つが,FIREBALLというドイツのサーチエンジンのMeta-Tag-Generatorである(6)。このMeta-Tag-Generatorは,ダブリン・コアとは別のカテゴリーを用いている。出版者(Publisher),内容記述(Description)などダブリン・コアの基本要素と一致するものもあるが,タイトル(Title)やデータフォーマット(Format)など,Meta-Tag-Generatorではサポートされていないダブリン・コアの要素があったり,要素の属性の名称が異なる場合(例えば,Creatorに対し,author)や,Meta-Tag-Generator独自のカテゴリーを設定している場合(例えば,対象者(audience),すなわち,初心者,専門家などその文書が対象としているグループ)もある。

このMeta-Tag-Generatorの場合は,必要事項を記入して,最後に「Meta-tag generieren(METAタグを作成する)」というボタンをクリックすれば,自分が書き込んだデータにタグが付されて,メタデータとして返ってくるので,後はこれをコピーして貼り付ければ1件完成ということになる。

このほかにも後述するノルトライン・ヴェストファーレン州大学図書館センター(7)やバーデン・ヴュルテンベルク図書館サービスセンター(8)も同種のサービスを行っており,この二者については,ダブリン・コアに準拠したタグ付けがなされるようになっている。〈以下次号〉

山岡 規雄(やまおかのりお)


(6) http://www.fireball.de/metagenerator.html (last access 1999. 6. 23)
(7) http://www.hbz-nrw.de/hbz/dublin_core.html (last access 1999. 6. 23)
(8) http://www.swbv.uni-konstanz.de/wwwroot/metadata/tp_dc01.html (last access 1999. 6. 23)