E916 – LC,動画,ラジオ番組へのジャンル/形式標目の付与を開始

カレントアウェアネス-E

No.148 2009.04.22

 

 E916

LC,動画,ラジオ番組へのジャンル/形式標目の付与を開始

 

 米国議会図書館(LC)は2008年12月10日,2009年1月から動画(映画,テレビ番組,ビデオ記録(video recordings))およびラジオ番組に対し,新たにジャンル/形式(Genre/Form)標目を付与すると発表した。また同時に,今後5年間に,同様にジャンル/形式標目を付与する対象の資料群とそのスケジュールも発表した。

 ジャンル/形式標目は,当該の資料が「何であるか(what a work is)」を記述するための標目と定義されている。「戦争映画」「ミュージカルの記録」といった形で,ジャンル(西部劇,スリラー,恋愛…)と形式(映画,テレビ番組,短編,アニメーション…)とが結合された標目形となっていることが多い。表現のジャンルや形式による情報探索を支援するためのもので,従来から使われている「何についてのものであるか(what a work is about)」を記述するための主題(Topical)標目を補完すると位置づけられている。両者が同じ文字列の語彙を用いることもあるが,両者の使われ方は異なっており,例えば「ホラー映画(Horror films)」が主題標目として用いられる場合には「ホラー映画に関する資料(書籍等)」を,ジャンル/形式標目として用いられている場合には「ホラー映画作品」そのものを指す。

 LCのプレゼンテーション資料で挙げられている例では,映画『風とともに去りぬ』の動画資料には「歴史映画」「戦争映画」「恋愛映画」「翻案による映画」「長編映画」「フィクション映画」の6つが,テレビ番組『赤毛のアン』には「子ども向けテレビ番組」「テレビ用映画」「翻案によるテレビ番組」「フィクションテレビ番組」の4つが付与されている。ジャンル/形式標目は作品の表現を記述するものであることから,資料の物理的な形態(DVD,ビデオテープ,ポッドキャストなど)にかかわらず付与される。

 ジャンル/形式標目の語彙は文献的根拠(literary warrant)に基づいて選定される。すでに主題標目として用いられている語と同一文字列の語を用いる場合でも,典拠レコードは別個に作成される。MARC21の典拠レコードでは,主題標目が150フィールドに記録されるのに対し,ジャンル/形式標目は155フィールドが用いられる。また,標目表も米国議会図書館件名標目表(LCSH)とは別個に維持される。2008年12月の時点で標目表には500以上の語彙が含まれており,LCによる有償/無償の各サービス(“Classification Web”,“authorities.loc.gov”,MARC21の配布など)で提供されている。

 動画およびラジオ番組が最初の付与対象に選ばれた理由は,(1)LCではこれまでも,動画,ラジオ番組のジャンル/形式を表すシソーラス(“MovingImage Genre-Form Guide(MIGFG)”など)を使ってきたこと,(2)小規模な資料群であり,より大規模に適用する場合に遭遇するであろう課題の認識・解決を図るのに適していること,が挙げられている。LCの導入スケジュールでは,2012年までに地図,音楽,文学,法律,宗教の5つの資料群を対象に,ジャンル/形式標目を付与するプロジェクトを行っていくとされている。これに沿って,2009年2月には地図資料についてジャンル/形式標目の典拠レコードの作成が,3月には音楽資料についてシソーラスの構築が開始されている。

 利用者の情報探索の支援を目的とし,ファセット検索(E507参照)などへの適用可能性も高いと考えられるこのジャンル/形式標目が今後,どのように展開されていくのか,注目される。

Ref:
http://www.loc.gov/catdir/cpso/genreformgeneral.html
http://www.loc.gov/catdir/cpso/genreimplement.html
http://www.loc.gov/catdir/cpso/genretimeline.pdf
http://www.loc.gov/catdir/cpso/genre_form_faq.pdf
http://www.loc.gov/catdir/cpso/OLAC.pdf
E507