カレントアウェアネス-E
No.141 2008.12.24
E873
第11回アジア・太平洋電子図書館国際会議がインドネシアで開催
第11回アジア・太平洋電子図書館国際会議(11th International Conference on Asia-Pacific Digital Libraries:ICADL2008,E587,E744参照)が,インドネシア・バリ島クタにおいて,2008年12月2日から5日の4日間にわたって開催された。今回のテーマは「情報へのユニバーサル・ユビキタスなアクセス」であった。
会議1日目にはチュートリアルとして,オープンソースソフトウェアである“Greenstone”と“Fedora”を組み合わせた電子図書館の構築,電子情報の長期保存計画作成のためのツール“Plato”の紹介,および電子図書館利用者の満足度を高めるための考え方,の3件について講義が行われた。
2日目以降の内容は以下のとおりである。
- 基調講演(2件):
Yahoo! ResearchのRicardo Baeza-Yates氏による「セマンティックサーチについて」,及びPalo Alto Research CenterのEd H. Chi氏による「拡大する社会知について」の講演が行われた。このうち前者では検索サービスの将来像として,例えば「100ドルで休みの日に遊びに行ける場所」と入力して検索すれば自動で求める結果が出てくる,といったものを想像しており,そのような機能はWeb 2.0より先のWeb 3.0と言えるかもしれない,といった話がなされた。 - セッション(7件):
テーマ毎の研究発表であり,各セッションにつき3~4件の発表があった。セッションは同時並行で2つまたは3つが行われ,参加者はいずれか1つを選ぶ形式であった。アジアならではの発表として,2日目には伝統的モンゴル文字のシステム処理(立命館大学のGarmaabazar Khaltarkhuu氏),インドネシア語と英語の 横断検索(インドネシア大学のSyandra Sari氏)といったものがあった。 - ポスターセッション(12件):
掲示されたポスターの前で,説明や意見交換が行われた。 - 特別セッション:
「アジアの電子図書館」として,アジア8か国の参加者により,各国の電子図書館の概況が発表された。日本からは筑波大学の杉本重雄教授が説明を行い,国立国会図書館,大学,国立公文書館等の電子図書館事業について紹介がなされた。 - パネルディスカッション:
Consortium of I-Schools in Asia-Pacific(CiSAP)の紹介が行われ,教育機関での情報技術連携等について議論がなされた。
会議は滞りなく行われたが,直前のバンコク空港閉鎖の影響か,タイの発表者が会場に現れないというアクシデントもあった。
次回は2010年7月にオーストラリア・ゴールドコーストで,「e-Heritage」というテーマの下, JCDL(Joint Conference on Digital Libraries)との共催として行われる。
(国立国会図書館 西村 大)
Ref:
http://icadl2008.org/
http://www.greenstone.org/
http://www.fedora.info/
http://www.ifs.tuwien.ac.at/dp/plato/intro.html
http://www.ischools.org/
http://www.jcdl.org/