E693 – テレビゲームを図書館サービスの1つに

カレントアウェアネス-E

No.113 2007.09.12

 

 E693

テレビゲームを図書館サービスの1つに

 

 2007年7月22日から24日にかけて,米国図書館協会(ALA)の出版部門の1つALA TechSourceと大学研究図書館協会(ACRL)の共催による「ゲームと学習と図書館に関するシンポジウム(Gaming, Learning, and Libraries Symposium)」がシカゴで開催された。テレビゲームとライブラリアンシップに関する第一線の研究者や図書館員たちが一堂に会し,図書館はテレビゲームを使って学習や教育をどのように支援できるかということについて議論を交わした。

 アリゾナ州立大学のギー教授(James Paul Gee)による基調講演を皮切りにシンポジウムは開幕した。ギー教授は,貧富の差が読み書き能力に影響を与えるという古くからのリテラシー危機に加え,近年では,デジタルテクノロジーに触れる機会の差が,新しいメディアの製作,科学技術への精通,学術用語の学習などに影響を与えるという新しい形のリテラシー危機が起きているという指摘をした。そして,この危機にあって,テレビゲームが果たすことのできる役割や,図書館に求められている変化について講演を行っている。

 3日間の期間中には,ギー教授のほか3名が基調講演を行い,さらに2人の特別ゲストスピーカーが講演を行っている。特別ゲストスピーカーの1人,ネイバーガー氏(Eli Neiburger)は先ごろ,図書館でテレビゲームのトーナメント戦やイベントを行えば利用者を増やせるのではないかというアイディアと実践の仕方を示した“Gamers…in the Library?! The Why, What, and How of Videogame Tournament for All Ages”と題された書籍をALAから出版しており,講演でも自身が技術管理者を務めるアナーバー(Ann Arbor)地域図書館で実際に行われているテレビゲームイベントを引き合いに出しながら,図書館でこのようなイベントを行う有効性について紹介した。

 また,このシンポジウムでは全部で29のセッションが開かれた。セッションのテーマはテレビゲームを通じて児童に情報リテラシーを身につけさせる取り組みや,テレビゲームを通じて化学の面白さを児童に伝える取り組みなど,図書館によるテレビゲームを利用した学習支援に関するものが大半である。またそのうちの5セッションがオンライン上の仮想都市コミュニティ“Second Life”を利用した学習や教育方法を取り上げており,図書館の“Second Life”への注目ぶりが窺える。なお,すべての講演とセッションの概要が分かる資料や発表に使用された資料がシンポジウムのウェブサイトで公開されているほか,講演とセッションの様子はすべてデジタル録音され,これもウェブサイトで公開されている。

 シンポジウムの終了後には,新しく“Gaming, Learning, and Libraries Symposium Network”というウェブサイトが立ち上げられ,テレビゲームと図書館に関わる様々な情報が共有できるようになっている。このテーマに対する関心と取り組みは継続しており,今後の展開が注目される。

Ref:
http://gaming.techsource.ala.org/index.php/Main_Page
http://gaminglearningandlibraries.ning.com/
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