E587 – アジアの電子図書館の最前線 ―ICADL2006京都大会―

カレントアウェアネス-E

No.97 2006.12.20

 

 E587

アジアの電子図書館の最前線 ―ICADL2006京都大会―

 

 京都大学を会場に開催された第9回アジア電子図書館国際会議(9th International Conference on Asian Digital Libraries:ICADL2006)が,11月27日から30日の4日間,世界各国から約190名の参加者を集め,盛会の内に幕を閉じた。

 テーマごとに分かれた各セッションでは,66件の論文が発表された(ポスターセッションを含む)。内容は,電子図書館・デジタルアーカイブを軸として,情報抽出,情報検索,メタデータ,アーキテクチャー,情報の体系化など,図書館情報学系とデータ工学系を含む多様なもので,電子図書館の国際会議らしく分野と国を越えて研究者が交流を深める場となっていた。

 論文発表以外の企画も国際会議にふさわしい充実したものとなった。27日の長尾真情報通信研究機構理事長による基調講演に始まり,28日には国立情報学研究所(NII)の安達淳教授と,Nanyang Technological University(シンガポール)のSchubert Foo教授による二つの招待講演,29日には基調・招待講演として,GoogleのDaniel Clancy氏と,One Laptop per ChildのMary Lou Jepsen氏による二つの講演があり,それぞれ多くの参加者を集めた。さらに,最終日の30日には,日本の電子図書館・デジタルアーカイブに関する動向と,日本を含む各国の国立図書館における動向に関する特別セッションが組まれ,国立国会図書館からも電子図書館サービスの概要に関する発表を行った。

 ホスト国である日本からは,多数の研究者が参加するとともに,NIIとJSTが会場にブースを展開した。またNIIの相原健郎助教授らによる「アウラリー:文化財の『成長するメタデータ』に対する柔軟なコンテンツ管理システムとCEAXプロジェクトにおける教育的利活用」が最優秀論文に選ばれるなど存在感を示した。一方,海外からの参加者と比較して,日本からは図書館員の参加が少なかったことが惜しまれる。

 余談だが,2日目にザ・ガーデンオリエンタル京都を会場に行われたバンケットでは,3人の舞妓が登場して踊りを披露(撮影会もあり)。国際会議の雰囲気を盛り上げていた。

 第10回となる次回は2007年12月10日から13日の日程で,ベトナムのハノイで開催される。

(電子図書館課:大場利康)

Ref:
http://www.icadl.org/
http://www.icadl2006.org/
http://www.springerlink.com/content/h86272541032/