E400 – 研究図書館におけるスキャニングサービスの実施状況調査

カレントアウェアネス-E

No.69 2005.11.02

 

 E400

研究図書館におけるスキャニングサービスの実施状況調査

 

 電子形態での図書館サービス提供の必要性が高まりつつあるが,複写物をデジタルデータとして提供するスキャニングサービスをはじめ先進的な技術を利用した図書館サービスの実態については,詳しい調査はこれまでほとんど行われていない。こうした現状をふまえて,9月,米国研究図書館協会(ARL)から,スキャニングサービスの提供状況に関する調査報告書が刊行された。

 調査はARLに加盟する123館を対象に行われ,69館(56%)から回答を得た。回答館の約8割で何らかのスキャニングサービスを実施しており,そのうちセルフサービスによるスキャニングサービスを実施している館は35%,オンデマンド方式により提供しているのは16%であった。セルフサービスにより提供している館の多くは,スキャニングサービスを「インフォメーション・コモンズ(注)の一環として」提供していると回答している。

 なお,スキャニングサービスの提供によるメリットとしては,デジタルデータであるため「保存しやすい」「レポート作成の際の引用・転記が容易」など資料利用の側面からのものが挙げられている。一方,課題としては「職員や利用者に対するサービスの利用指導」「スキャニング機器の技術面でのサポート」など運用面からのものが挙げられている。報告書は,今回の調査はスキャニングサービスのベストプラクティスを決定するものではなく,あくまで現状において図書館が提供しているスキャニングサービスの様々な形態を把握するものである,と締めくくっている。

(注)Information Commons:E166CA1541で紹介した「情報コモンズ」ではなく,図書館が有する情報資源とウェブ上など各種メディアの情報を結びつけて提供する施設を指す。米国アイオワ大学のHardin Libraryなど,大学図書館に設置されている例が多く見られる。( http://www.lib.uiowa.edu/commons/

Ref:
http://www.arl.org/pubscat/pr/2005/announcespec288.html
http://www.arl.org/spec/SPEC288web.pdf