カレントアウェアネス-E
No.533 2026.10.29
E2925
ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI 2026)<報告>
国立国会図書館電子情報部電子情報流通課・高橋洸介(たかはしこうすけ)
2026年8月3日から7日まで、「ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議」(DCMI;E2857ほか参照)が韓国・ソウルの国立中央図書館(NLK)で開催され、国立国会図書館(NDL)から筆者が参加した。
2026年の会議(DCMI 2026)は「意味駆動型AI:メタデータによってシステムを人間の価値観に合わせる」(Meaning-Driven AI: Using Metadata to Align Systems with Human Values)をテーマとし、人工知能(AI)のメタデータ作成への応用や、BIBFRAME(E1386、CA1837参照)を始めとする各種メタデータに関する取組が発表された。参加者は、主に欧米・アジア各国の図書館関係者やデータサイエンティスト等139人であった。以下、筆者がメタデータ運用の観点から、特に興味深く感じた発表について紹介する。
●AIを活用した視覚資料のメタデータ作成
招待講演者の一人、カリフォルニア大学バークレー校のリン(Haiqing Lin)氏からは、ポスター等の視覚資料のメタデータ生成におけるAI活用が紹介された。
ポスター等の目録作成には、時間がかかることや、色彩・構図等の視覚情報に係る要素を記述しにくいことなどの課題があった。これらの解決のため、リン氏らはGoogle Geminiを組み込んだ独自ツールを開発した。ツールでは、ポスター画像からOCRによるテキスト生成及びその翻訳を行うほか、色彩や構図等の詳細な記述を生成し、MARC21における520(要約等)等のフィールドに格納することが可能である。ツールによる記述の有用性の検証のため、ツールで生成した詳細な記述を含む書誌レコードをAIに学習させ、人間が作成した書誌レコードのみを学習させた場合と比較したところ、ツール生成の書誌レコードを学習したAIの方が、ユーザーからの自然言語による視覚資料探索の質問に対し、より正確に答えられることが判明した。
AIは不適切な表現を出力する場合もあるため、人間による制御の必要性も指摘された。今後、カタロガーの役割は、定型的なデータ入力から、プロンプト作成や品質のチェックへと移行していくと考えられるとのことであった。
●AIが推定する意味は人間の認識と一致するか?
論文発表セッションにおいて、中国人民大学のレン(Ming Ren)氏からは、AIが付与したメタデータが、人間の捉える「意味」と整合するかどうかの検証について発表があった。
ある語彙に対してAIが推定する意味が、人間の認識と一致するかを検証するため、単語の出現頻度と意味の数との関係を示す「ジップの意味の法則」を用いて両者の意味構造を比較した。Project GutenbergやWikiText等の4つのコーパスと、複数のAIモデル(BERT、GPT-2、Qwen3)を用いて検証を行った結果、人間とAIが認識する意味はいずれもジップの意味の法則に従い、高頻度に出現する語彙ほど認識される意味が多かったものの、AIは高頻度語の多義性を過小評価する傾向が判明した。このことから、AIが生成するメタデータは、語彙の広義な意味を見落とし、不完全な主題記述や、ドメイン間の相互運用性の低下を招くおそれがあることが指摘された。
●BIBFRAME導入に向けた試行プロジェクト
ベストプラクティスセッションにおいて、NLKのアン(Seungmun Ahn)氏からは、同館におけるBIBFRAME導入に向けた試行プロジェクトが紹介された。米国議会図書館(LC)の変換ツール「marc2bibframe2」を用いて、約1,130万件のMARCレコードを対象としたBIBFRAMEへの試験的な変換を行うとともに、実運用への適用可能性を評価しているという。
変換に先立つマッピング分析により、韓国独自のMARC形式「KOMARC」のフィールドのうち約79%が標準的なBIBFRAMEプロパティに変換可能である一方、残りの約21%には独自の拡張が必要であることが判明した。今後は、LCが提供する変換アプローチにNLK独自の変換規則を組み合わせたハイブリッドな変換ルールを精緻化したいとのことであった。
DCMI 2026では、AIを利用したメタデータの生成・拡充の試みが、国際的な潮流となりつつあることが改めて示された。なお、一部の発表内容は、DCMIのウェブサイトに公開されている。
Ref:
“DCMI 2026”. Dublin Core.
https://www.dublincore.org/conferences/2026/
“DCMI 2026 Programme”. Dublin Core.
https://www.dublincore.org/conferences/2026/programme/
“ DCMI-2026 Seoul, South Korea Proceedings”. Dublin Core.
https://dcpapers.dublincore.org/issue/dcmi-2026
“marc2bibframe2”. GitHub.
https://github.com/lcnetdev/marc2bibframe2
高橋洸介. ダブリンコアとメタデータの応用に関する国際会議(DCMI 2025). カレントアウェアネス-E. 2026, (516), E2857.
https://current.ndl.go.jp/e2857
渡邊隆弘. ウェブ時代の新しい書誌データモデル“BIBFRAME”. カレントアウェアネス-E. 2013, (230), E1386.
https://current.ndl.go.jp/e1386
柴田洋子. ウェブで広がる図書館のメタデータを目指して―RDAとBIBFRAME. カレントアウェアネス. 2014, (322), CA1837, p. 18-22.
http://current.ndl.go.jp/ca1837
