E2772 – 読書案内「新書マップ4D」の開発経緯とサービス概要

カレントアウェアネス-E

No.497 2025.02.27

 

 E2772

読書案内「新書マップ4D」の開発経緯とサービス概要

特定非営利活動法人連想出版・阿辺川武(あべかわたけし)

 

  ウェブサイト「新書マップ」は、NPO法人連想出版が運営する新書の読書案内サービスであり、約2万4,000冊の新書とその概要、目次を提供している。2004年に公開して以来、新刊書や新書に関するコラムを毎月追加しており、新書を選ぶときの参考として、さらに教育の現場などでも利活用されている。2024年12月に既存の「テーマリウム」に加えて、リニューアルの核である仮想空間内で本を探す「4D本棚」、そしてウェブマガジン「風」を統合した「よみもの」の3つの機能を有する「新書マップ4D」として再構築した。本稿では新書マップ4Dの開発に至った経緯と、サービスの概要について述べる。

●開発に至った経緯

  公開当初から続く新書マップの特徴として、新書を編集部で選書し内容に応じて約1,100のテーマに分類していることが挙げられる。従来の新書マップではテーマに含まれる新書の背表紙をスキャナーで撮影し、テーマ本棚として本棚に新書が並ぶ形で表示していた。このとき、1冊毎ではなく複数の新書の背表紙をまとめてスキャンすることが綺麗な写真を撮る秘訣であった。しかし、この方式では新たな新書がテーマに追加されるたびに背表紙画像を撮り直すことになるため手間がかかり、更新が滞りがちであった。

  そこで、新書の背表紙画像をプログラムを使って自動生成する方式に改めることにした。実物の新書レイアウトを参考にし、陰影の効果を加えることにより今までのテーマ本棚と遜色のない画像が生成できるようになった。この自動生成した背表紙画像を3次元空間に並べてみようとなり、開発したものが「4D本棚」である。

●4D本棚

  4D本棚は新書を仮想3次元空間内の本棚に並べたサービスで、ユーザはスマートフォン、タブレット、パソコンのウェブブラウザからアクセスし、本棚のある空間を回遊できる。リアルな本棚にはない特徴の1つとして、新書の並べ方をテーマ順の他に、レーベル順、タイトル順、逆引きタイトル順などに変更できる。この並べ替えの軸を1つの次元とみなし、3次元空間と合わせて「4D本棚」と呼称している。リアルな書店や図書館のように本棚の間を歩きながら思いがけない本と出会う機会を提供したいと考えている。

  4D本棚にはユーザのお気に入りの本を「私の本棚」に並べることができ、さらに選択した本を起点にし、連想検索技術を使って関連した本を本棚に表示できる。

●テーマリウム

  テーマリウムでは、利用者がキーワードから興味のあるテーマを探し、テーマから新書を見つけることができる。キーワードが形作る円形空間に星座を模したテーマが浮かびあがるという独特なインターフェースを有している。テーマリウムではテーマから本に辿り着くという体験を重視し、本を直接検索させないポリシーを採用している。

●よみもの

  従来は、2004年から連綿とウェブマガジン「風」という姉妹サイトで新書を紹介する記事を掲載してきた。ここではニュースを新書マップテーマで読み解く「新書に訊け!」、新刊新書の傾向と特徴を紹介する「新刊月並み寸評」、おすすめする1冊を中心に今を考える「新書で考える「いま」」の3つのコンテンツを提供していた。今回のリニューアルを機に同一サイト内にまとめ、記事から関連するテーマや新書の紹介ページへシームレスに遷移できるような構成にした。

●今後の展開

  「よみもの」のコンテンツでは新刊の新書を多く紹介していることから、4D本棚内でも書店の新刊コーナーのような形で新刊だけを並べた本棚の設置や平置きする表示方法を考えている。

  4D本棚では、特定レーベルの初号から最新号までを本棚に並べるモードも有している。現在その表示方法を行えるのは、書誌情報の登録と背表紙画像の生成が完了している岩波新書、中公新書、講談社現代新書などのレーベルのみであるが、いずれはある年代以降に創刊された全ての新書レーベルを揃え、一種のアーカイブとしての機能を提供していくことも目指している。

Ref:
新書マップ4D.
https://shinshomap.info/
“テーマリウム”. 新書マップ4D.
https://shinshomap.info/themerium
“よみもの”. 新書マップ4D.
https://shinshomap.info/kaze