E1855 – 直方市の図書館,美術館,商店街による展覧会

カレントアウェアネス-E

No.314 2016.11.10

 

 E1855

直方市の図書館,美術館,商店街による展覧会

 

 2016年7月1日から9月19日まで,福岡県直方市で「街は大きな図書館-手触りのある日々-」と題した展覧会を開催した。地域全体を一つの大きな図書館に見立てたもので,美術館,図書館,商店街による初のコラボレーション企画である。会場は直方谷尾美術館と直方市立図書館,そして4つの商店街(須崎町商店街,明治町商店街,古町商店街,殿町商店街)である。美術館と図書館との距離は徒歩でおよそ15分で,両館を結ぶように商店街のアーケードが続いている。商店街は空き店舗が目立ち,普段の人通りはまばらである。本企画は,美術館と図書館をつなぐことで,本や美術作品の魅力をより多く感じられる展示を目指すと同時に,商店街の活性化の一助とすることや,街の良さの再発見につなげることも狙いとしてあった。今回,美術館,図書館,商店街を結びつけるのに「手触り」というテーマを設けた。本の重さや匂い,商店街での店主との会話,美術作品を目の前で鑑賞する喜びなど,人ともの,人と人とが触れ合う感覚を「手触り」という言葉に込めた。

 直方谷尾美術館では,本の装画や挿絵なども手がける福岡県在住の画家田中千智氏の原画展や,直方市出身の写真家尾仲浩二氏が主宰する写真同人誌『街道マガジン』に関わる写真家らによる写真と写真集の展示,さらに豆絵本・豆本を製作・出版しているマメカバ本舗の作品原画展を開催し,写真集や豆絵本を手に取って楽しめるようにした。また,顕微鏡で鉱石や植物など様々なものを見て図鑑で調べるコーナーや,沢山の画集を参考に展示している絵画の作者を推理するコーナー,暗闇の中に彫刻を設置し触覚を頼りに鑑賞するコーナーなども設け,夏休みに親子で楽しめるような内容にした。

 図書館では,土曜シアター(映画上映)やおはなし会,「健康」や「オリンピック」,「夏休みに楽しめる本」をテーマとした本の展示のほか,展覧会をPRする特設コーナーを設けた。

 商店街の各店舗では,店主の蔵書を店内に置いたり,景品や割引のサービスを提供したりした。協力店舗64店の場所とサービス内容をマップにまとめ,割引サービスなどを受けるための特製のしおりと一緒に図書館や美術館,商店街で配布した。

 古町商店街のアーケード内には美術館の別館があり,その中の使われなくなった電話ボックスを小さなギャラリー&図書館として会期中運営した。「電話ボックス図書館」と名付け,ボックス内の壁面に展示ボードと本棚を設置し,美術館と図書館から絵画と本を持ち込んだ。「電話ボックス図書館」のウェブサイトも立ち上げ,展覧会の案内や協力店舗の情報を提供した。

 会期中は,出品作家によるフォトブック制作講座や豆本制作講座,地元の高校の科学部による実験教室,点訳ボランティアによる点字体験など,美術館と図書館による関連イベントを実施した。さらに,作家林芙美子の著書を読む朗読会や,絵本の読み聞かせをする子ども茶会など,協力店が企画したイベントもちらしにまとめて掲載した。

 美術館内に設置したアンケートによる来場者の反応は,「手で触れ,目で触れ,やさしさの伝わる温もりある展示物でした。」「五感をフルに刺激される催しで楽しかった。」など好意的な意見が大半であったが,一方で趣旨の分かりにくさを指摘するものも散見された。協力店舗の事後アンケートでは,街の活性化を理由に参加された店が多かったが,この企画目当てで来店された方は少なく,PRの方法をはじめ,問題点や改善策など多くの意見があった。

 今回はコラボレーションの良さを十分に活かしきれず,多くの課題を残すこととなったが,協力店舗からは「お客様との話題作りには良かったかも。」「お客様に声掛けをして会話がはずみました。」「店の存在価値を考え直すきっかけになった。」といった声もあった。集客数以外の観点からの評価も大切にし,本展を通してできた沢山のつながりを次の展開につなげていきたい。

直方谷尾美術館・中込潤

Ref:
http://yumenity.jp/tanio/
https://www.facebook.com/nogata.tanio.am
https://www.facebook.com/Nogata.City.Library/
http://www.syoutengai-shien.com/news/201607/11-02.html
http://www.tanakachisato.com/
http://www.onakakoji.com/
http://mamekaba.web.fc2.com/
http://telboxlibrary.tumblr.com/