E1841 – 地域における読書活動推進のための体制整備に関する調査研究

カレントアウェアネス-E

No.311 2016.09.15

 

 E1841

地域における読書活動推進のための体制整備に関する調査研究

 

 2016年6月,文部科学省は,2015年度の委託調査として株式会社浜銀総合研究所が行った「地域における読書活動推進のための体制整備に関する調査研究」の報告書を公開した。本調査研究は,次の2点を目的として実施された。

(A)小学生,中学生,高校生の読書の実態や不読の背景・理由等を把握するための調査を実施し,課題を明確にするとともに,不読解消のための方策等について検討する。

(B)各自治体(都道府県,市区町村)で実施されている子供たちの読書推進に関する取組のうち,地方公共団体,学校,図書館,民間団体,ボランティア等の連携・協力により実施されている取組について,その連携・協力手法等に着目して調査・分析を行い,特徴等を明らかにする。

 (A)については,小学生,中学生,高校生及び保護者を対象とした質問紙調査で「1日あたりの読書時間,1か月に読んだ本の冊数,学校図書館(室)・地域の図書館の利用頻度,認識,どのようにすればもっと本を読みたくなると思うか」などが調査された。

 (B)については,自治体,学校等を対象とした質問紙調査に加え,ヒアリング調査が行われた。子供の読書推進に取り組む自治体,図書館,学校・教育機関の事例が紹介されている。

 本稿ではこの中から,調査結果の一部を紹介する。まず,小学生から中学生,高校生になるにつれて,読書をする子供の割合が減少することが確認された。そして,高校生については,平日,休日ともに,半数以上が本を全く読んでいない状況にあり,1か月間に1冊も本を読まない子供の割合も半数近くにのぼる。高校生では,学校図書館(室)や地域の図書館を利用しない者の割合も小学生や中学生に比べて高い。

 不読の背景としては,小学生や中学生はTVやインターネット,ゲームなど読書以外の娯楽・趣味等に時間がとられている割合が相対的に高いことが明らかになった。中学生や高校生は,読書習慣が身についていないために本を読まなくなっている子供が多いのではないかとも考えられている。高校生では,勉強や部活動・生徒会活動等に時間がとられていることを不読の理由として挙げている者も多い。

 小学生・中学生は,登校日には本を読むが,休日には読まないという層が比較的多く存在する。背景には,学校で行われている一斉読書の時間などの取組により本を読むようになっている子供が一定程度いることが報告書では推察されている。

 高校生の不読率(調査において,1か月で読んだ本の冊数が0冊と回答した生徒の割合)は高いが,必ずしも全員が本を読まないわけではないことが分かる。その差異には,不読率は男子が高いなど性別の差や家庭の蔵書数,読書推進に関する学校・図書館の取組における充実度などが関連していると報告書では述べられている。

 調査結果からは,学校における読書に関する取組が不読解消に一定の影響を及ぼしていることが明らかになっている。また,小学生,中学生,高校生共に本を読む場所・環境の整備を望む割合が高い。家庭,学校,自治体・図書館が連携しながら協力し,引き続き子供の読書環境整備に取り組むことが重要であることを改めて示している。

豊中市立岡町図書館・小西知美

Ref:
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