E1803 – 日本図書館協会,2015年度末で図書選定事業を終了

カレントアウェアネス-E

No.304 2016.06.02

 

 E1803

日本図書館協会,2015年度末で図書選定事業を終了

 

 日本図書館協会(JLA)は1914年に,公共図書館向けに新刊図書の選択及び図書の分類・目録編纂の参考とすることを目的として図書選定事業を開始した。当時の理事等が直接関わり,時流に流されることなく,独自の立場で選定することを旨としていた。ところが,1931年に社会教育会と提携して文部省(当時)から補助金を得て松本喜一理事長(当時)のもと良書普及事業を開始したことで,独自色が薄れ,文部省の意向を反映したものとなっていった。

 戦後,1948年の全国図書館大会で良書の推薦・配給に関する協議が行われ,翌1949年に図書選定委員会を設置して新たな選定事業を開始した。選定事業がややもすると押しつけになりがちなことを認識しながら,この事業を試みることになったのは,戦後の出版流通が混乱するなかで地方の図書館が思うように新刊図書を入手することができないという状況を打開するために協会が行っていた配給事業を,何とか改善したいとの思いからであった。また,出版界に対してはよい出版企画への支援,図書館に対しては図書館自体の発展を促すことが目的であった。

 選定図書のリストは,最初に発表された『読書相談』から,『選定図書速報』,『選定図書総目録』,『選定図書週報』(週刊読書人掲載)まで,さまざまな媒体(図書,雑誌,新聞)に掲載してきた。

 図書選定事業は,その長い歴史の中で,時々の出版や図書館の状況を反映させてきた。たとえば,選定図書の対象読者の区分を,青年向けとしているところが,過去中学生向け,高校生向けと細分していたり,一般書のところも,教師向けとか婦人向けといった区分を設けたりしていた。また,この事業は,新刊図書の集書など出版社と出版取次の多大な協力によって維持されてきたものである。しかし,民間が提供する各種出版情報の登場やインターネットの普及などにより,図書館における選書の参考となる情報の提供環境が変化し,選定図書のリストとして刊行している『選定図書速報』や『選定図書総目録』の利用が長期的に減少していった。

 そして,2015年度当初には『選定図書速報』を購入する公立図書館は全国で96館,『選定図書総目録』は50館にまで落ち込んだ。

 以上のような状況から,図書選定事業は役割を終えたとの判断にたち,JLAは,戦後70年近くにわたって展開してきたこの事業に2015年度末で幕を引くこととした。

 昨今,図書館の選書や出版と図書館との関係などが注目されているが,図書館において選書は基本中の基本の仕事である。JLAでは,今までとは別の形で,図書館における蔵書構築やサービスの参考となる図書情報提供の役割を果たさなければならないと考えているところである。今後とも,会員の皆様のお力を借り,日本書籍出版協会をはじめとする出版・流通関係者の協力を得ながら,現在の図書館や情報環境に即しつつ新しい方向を見出したいと考えている。

日本図書館協会・山本宏義

Ref:
http://www.jla.or.jp/activities/sentei/tabid/207/Default.aspx
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002298522-00