カレントアウェアネス-E
No.298 2016.02.18
E1770
国立国会図書館,書誌データ利活用アンケートを実施
2016年2月12日,国立国会図書館(以下当館)は,作成・提供する書誌データの利活用に関するアンケートの結果を公表した。
当館では,「私たちの使命・目標2012-2016」に沿って策定された「国立国会図書館の書誌データ作成・提供の新展開(2013)」に基づき,書誌データ利活用促進のための様々な取組を進めてきた。
このアンケートの目的は,これまで当館が実施してきた書誌データ利活用促進のための取組(提供方法の拡充,利用方法の案内,説明会の開催等)を評価し,今後の取組に生かすことである。送付先は,公共図書館(国立国会図書館総合目録ネットワーク及びレファレンス協同データベースの事業に参加する館等)と,図書館運営を担う地方公共団体(都道府県,特別区,政令指定都市,中核市,県庁所在地の教育委員会等)である。地方公共団体には,所管する「公立図書館」及び「学校図書館」に関する2種類のアンケートを送付した。また,関東地方と九州・沖縄地方に関しては全ての公共図書館と地方公共団体に送付した。依頼・回答方法は,公共図書館には電子メール又はFAXとし,地方公共団体には文書で依頼し,ウェブフォームから回答してもらうこととした。
公共図書館から498件,地方公共団体から「公立図書館」に関して353件,「学校図書館」に関して257件と多くの回答を得た。アンケート結果は,アンケートごとに設問単位で集計した単純集計結果(3種類),図書館の種類又は地方公共団体の種類で比較した集計結果及び関東地方と九州・沖縄地方で比較した集計結果を全5種類の表にまとめ,当館のウェブサイトに掲載した。また,「公立図書館」と「学校図書館」の違いや地方公共団体の種類の違いなど特徴的な部分については,グラフなどを用いて示した。
◯書誌データの認知度
当館の書誌データが利用できることや特長について,認知度はあまり高くないことがわかった。特に納本後おおむね4日で提供している新着書誌情報の認知度が低かった(「知っている」と回答した「公立図書館」が40%程度,「学校図書館」が20%程度)。
◯書誌データの利用状況
全ての単純集計結果から,当館の書誌データを利用している図書館は20%以下(利用状況は,「一部補完的に利用している」が多数)であった。利用していると回答した「公共図書館」の70%程度が目録作成で利用しており,その理由は,「無償で利用できるから」がもっとも多く,次に「非流通系の出版物が含まれるから」が続いた。反対に利用していない理由としては,「民間MARCを使っているから」がもっとも多く(「公立図書館」では80%以上,「学校図書館」では50%程度),次に「使用中のシステムで利用できないから」であった。
◯民間MARCの利用
民間MARCを利用する図書館では,「公立図書館」で95%以上,「学校図書館」で80%以上が,選書・発注の段階から利用していた。また,そのような図書館では,選書・発注から目録作成,資料の装備までの一連の作業を通じての利用が多かった。
◯これまでの取組
2013年以降に実施した当館作成の書誌データの利活用促進のためのおもな取組を紹介する。
2013年 11月 | 図書館システムベンダーを対象に,各図書館での当館の書誌データ利活用事例の紹介やシステムへの実装の解説を行う「書誌データ利活用説明会」を開催し,図書館システムベンダーを対象にアンケートを実施 |
2014年 2月 | 図書館システムベンダーへのアンケート結果を基に,「国立国会図書館書誌データ対応システム一覧」を公表 |
2014年 3月 | 全国書誌(電子書籍・電子雑誌編)の提供を開始(API利用,RSS配信及びTSVファイルダウンロードで利用可能) |
2014年 7・8月 | 公共図書館・学校図書館などを対象に,各図書館での利活用事例の紹介や書誌データのダウンロード方法,書誌データ対応システム一覧を紹介する「書誌データ利活用説明会」を開催 |
2014年 8月 | 第39回全国学校図書館研究大会甲府大会で講演 |
2015年 2月 | 全国の図書館等で行われる研修に講師を派遣する講師派遣型研修において「全国書誌データの利活用」のテーマで募集開始 |
2015年 6月 | 書誌データ水準の公表 |
2015年 7・8月 | 全国書誌データの利用方法や「NDL書誌データ取得・検索シート」の使い方などワークショップ形式による,公共図書館・学校図書館などを対象とした,「全国書誌データ・レファレンス協同データベース利活用研修会」を開催 |
2015年 10月 | インターネットで受講できる遠隔研修教材「全国書誌データの利活用」を公開 |
アンケート結果を受け,今後の書誌データ利活用促進に向けて,認知度向上のための広報活動を継続しつつ,利活用支援の充実(図書館のシステムベンダーへの働きかけ,個別相談への対応など)に重点を置いたものにシフトする必要性を認識した。また,当館から離れた地域にある図書館への支援も重要と考える。さらにアンケートは利用者の声を聴くことができる手段であり,対象となる図書館等への広報にもなるため,今後も継続して実施したいと考えている。
当館は今後も広範な書誌データを提供しつつ書誌情報のさらなる充実を図りながら,地域住民へのサービスを担う公共図書館や教育支援を行う学校図書館の支えとなるよう努めたい。
収集書誌部収集・書誌調整課・田村浩一
Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/data/data_service/bib-enquete/index.html
http://warp.da.ndl.go.jp/collections/NDL_WA_po_print/info:ndljp/pid/9484238/www.ndl.go.jp/jp/library/data/NDL_WA_po_shintenkai2013.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/data/data_service/jnb/index.html#iss03
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/20131101briefing.html
http://www.ndl.go.jp/jp/data/data_service/system_list.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/20140708briefing.html
http://www.ndl.go.jp/jp/data/catstandards/levels.html
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/guidance_02.html
http://training.ndl.go.jp/course/under.html?id=50