E1530 – 学校図書館における電子書籍の利用動向(米国)

カレントアウェアネス-E

No.253 2014.02.06

 

 E1530

 

学校図書館における電子書籍の利用動向(米国)

 

 2014年1月,米国の学校図書館における電子書籍の利用動向についての調査報告書 “2013 Survey of Ebook Usage in U.S. School (K-12) Libraries”が公開された。この調査は,Library Journal誌とSchool Library Journal誌が公共,大学,学校図書館を対象に実施する電子書籍の利用動向の調査シリーズの一つである。

 今回の調査報告書には,2013年4月5日から2013年6月30日までの期間に,米国1,271の学校図書館を対象に行われた調査の結果がまとめられている。過去に実施された2010年の697館,2011年の905館,2012年の1,427館の調査結果についても,今年度と比較し推移をみるために使用されている。回答結果は,学校の種類別(小学校,中学校,高校),公私の別,学校の所在地域別に集計されており,各章のまとめでは,自由記述の主な回答も掲載されている。

 報告では,米国の学校図書館においては,公共図書館ほど電子書籍が普及していないことが指摘されている。現在,情報格差の解消を目指して,生徒一人一人にタブレット端末かコンピュータを提供する“1:1 schools”イニシアチブなどにより,端末の導入が進められているという状況であり,電子書籍への関心は急上昇とは言わないまでも継続して増加している。生徒は,電子書籍はもちろん,既存の紙媒体資料も利用しており,どちらも充分に利用できることが求められることも指摘されている。以下,報告書のポイントを紹介する。

●電子書籍コレクションの規模
 電子書籍を生徒や教員に提供している図書室(Library Media Centers)は56%である。平均タイトル数は136タイトルで,増加傾向にあり,2010年と比較すると4倍以上となっている。なお,2011年の別の調査の結果として,典型的な図書室での紙媒体資料の蔵書の中央値は12,000タイトル超であることも紹介されている。

●電子書籍への需要
 電子書籍の増加への希望があったとする回答は44%であり,利用者から電子書籍へのリクエストが全くなかったとする回答も23%(2年前の58%からは減少)ある。大人たちは生徒が電子書籍を必要だと考えているようだが,生徒の方はそうではなく,紙媒体資料のほうがよいと考えていると指摘する自由記述の回答も紹介されている。

●電子書籍の利用状況
 2011年から2012年までの学年度における電子書籍の貸出回数の平均値は405回で,中央値は25回である。貸出回数が0回であったとする回答も17%ある。回答される貸出回数は低い値に見えるが,学校図書館においては,電子書籍の利用統計を把握するのが容易ではないとする回答が27%,まったく把握できないとする回答も10%に上っており,この値の分析には留意が必要であろう。

●電子書籍のジャンル
 提供されている電子書籍の57%がノンフィクション,43%がフィクションである。利用されるジャンルは,ノンフィクションでは,動物,歴史,科学・数学・技術,フィクションでは,現実的な小説,ファンタジー,冒険物・スリラーなどが挙げられている。なお,自由記述の回答では,生徒が読みたがるような最新のフィクションは,学校図書館に電子書籍を提供するベンダーのタイトルには含まれておらず,生徒が自分で購入しているとの不満も紹介されている。

●電子書籍の予算
 2012年から2013年までの学年度で,平均1,114ドル(中央値は401ドル)が電子書籍に使用されている。資料費に電子書籍の費用が占める割合は前年度の調査から2倍近くに増加しており,2018年には3倍以上になると予想されている。電子書籍への予算配分の増加に伴い,紙媒体やそれ以外のサービスの維持も課題になり,39%が紙媒体資料の購入費などから電子書籍の費用へと予算の再配分を行ったと回答している。なお,電子書籍のコンソーシアムのライセンス契約を利用しているのは16%にとどまり,このうち61%は,コンソーシアムの契約以外でも個別に電子書籍を購入していると回答している。

●電子書籍の契約形態 
 学校図書館の電子書籍の契約形態については,60%が永続的なアクセス権を購入している。ローカルでサーバを準備して永続的なアクセス権を購入しているのは26%である。21%が購読契約(subscription)と回答している。

●紙媒体と電子媒体 
 紙媒体と電子書籍の両方で同じタイトルを購入するのは一般的ではなく,電子書籍と同じタイトルの紙媒体を常に購入するのは6%にとどまっている。電子教科書については,紙媒体から電子版への移行を67%は計画しておらず,検討中であるという回答は16%である。

●利用端末 
 電子書籍の利用端末としては,学校のデスクトップコンピュータが76%,学校のノートパソコンが48%,インタラクティブホワイトボードが41%である。生徒の端末で利用できるのは57%(タブレット端末が39%,専用の電子書籍リーダーが30%,スマートフォンが23%)との回答である。生徒に電子書籍端末の貸出を行っているのは26%で,このうち自宅に持ち帰ることができるのは9%である。

関西館図書館協力課・篠田麻美

Ref:
http://www.thedigitalshift.com/research/ebook-usage-u-s-school-k-12-libraries-2013-report/
http://www.thedigitalshift.com/2014/01/k-12/slj-survey-ebook-usage-school-libraries-seen-rising-slowly/
http://www.thedigitalshift.com/research/ebook-usage-reports/