E1272 – 第3回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.211 2012.03.08

 

 E1272

第3回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議<報告>

 

 2012年2月24日,国立国会図書館(NDL)関西館で,第3回「公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議」(E1160参照)が開催された。2010年に開始した同会議は,国内の公共図書館におけるデジタルアーカイブ構築の推進に向けて,課題の整理や解決に向けた議論,国等の支援策についての検討を目的としている。今回は,デジタルアーカイブの構築・運営に携わる職員のスキルアップがテーマとなった。

 前半では,まず,関西館図書館協力課の兼松芳之課長補佐から2011年9月29日・30日に関西館で開催した「資料デジタル化研修(基礎編)」の概要が報告された。同研修の内容は,デジタルアーカイブの概論から企画・運営,デジタル化の技術等を含めた5科目の講義にフロアディスカッションを加えたもので,公共図書館の職員を中心に53名が参加した。なお,2012年度上半期にはその内容が遠隔研修としてインターネット公開され,2012年10月には続編となる「資料デジタル化研修(実践編)」(仮題)が関西館で開催される予定となっている。

 次に,大阪府立中央図書館の山田瑞穂氏から同研修の参加報告があった。同館では2011年度「住民生活に光をそそぐ交付金」でデジタル化が劇的に進展し,山田氏はその後の展開を検討するために参加したという。研修の良かった点としては,実務上の疑問の解決や他受講生から情報が得られたことが,より詳しく話を聞きたかった点としては,技術的な観点からの事例紹介や,デジタルアーカイブの見せ方等のシステム面が挙げられた。

 アカデミック・リソース・ガイド株式会社の岡本真氏からは,同氏が事務局長を務めるCode4Lib JAPANの研修事業について発表があった。これまで,約300名に対して,ワークショップ,ミニワークショップ,講師派遣,その他(合宿等)の4種類のスタイルで研修を提供してきた。IT環境が整っていない図書館でも研修が行えるように各種機材も揃えているという。

 後半では,「デジタルアーカイブを学ぶ―デジタルライブラリアンへのスキルアップ」をテーマにパネルディスカッションが行われた。パネリストは,岡本氏,元デジタルアーカイブ推進協議会事務局長の笠羽晴夫氏,文部科学省生涯学習政策局社会教育課課長補佐の平川康弘氏,兼松課長補佐,関西館電子図書館課の大場利康課長の5名である。

 テーマについては,進行役の大場課長から,デジタルライブラリアンは,情報技術の専門家というよりも,デジタルコンテンツを紙のコンテンツと同様に活用できる図書館員と定義したいと説明がなされた。平川氏からは,社会教育担当者に対して同省が実施している研修の概要について説明があった。また,笠羽氏からは,デジタル化の対象として記録資料に注目が集まりつつある等の動向が紹介された。

 その後は,研修や人材育成の在り方についてフロアも交えて議論が行われ,特に,研修参加による人的ネットワーク形成について活発な意見交換がなされた。そこでは,1日や2日の研修でできることには限界があり,研修主催者側は情報交換やネットワーク作りのために茶話会や懇親会のような場を提供し,参加者がその後相談できる仲間を見つけられるように工夫すべきだという意見が出た。また,フォローアップの場として,メーリングリストやFacebookグループ等のSNSを活用すると良いというアイディアも紹介された。

 最後に,笠羽氏からは,組織としての取組が必ずしも永続的とはなっていない事例を踏まえ個人としての取組の重要性に関する意見が,岡本氏からは,デジタルアーカイブで営利目的の利用を含めた二次利用を許可することの重要性や,公共図書館が東日本大震災関連資料を集めた震災アーカイブを構築することの意義に関する意見が述べられた。

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/1192820_1368.html
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/kokyo.html
http://www.ndl.go.jp/jp/library/training/guide/1191881_1485.html
http://togetter.com/li/262850
E1160