カレントアウェアネス-E
No.169 2010.04.14
E1040
英国政府,これからの公共図書館についての青写真を公表
2010年3月22日に,英国の文化・メディア・スポーツ省は,イングランドの今後の公共図書館サービスの青写真を示した政策文書「公共図書館の現代化レビュー」(The Modernisation Review of Public Libraries;以下「文書」とする)を公表した。これは,2009年12月に公開された諮問文書に対して寄せられた150以上の意見を踏まえてまとめられたものである。
文書では,「全ての図書館のサービスのレベルを向上させる」「利用減少傾向を反転させ,図書館サービスの利用者数を増加させる」「限られた資源と厳しい経済状況に対応する」「いつでもすぐにアクセスしたいという,人々の期待に応える」「デジタル技術の進展を好機として活用する」「市民,評論家,政治家に対し図書館の存在価値を示す」という6つの目的に沿い,54の提案が示されている。
その第1の提案では,図書館が提供するサービスを「オファー」(offer)と表現し,各地の図書館行政庁(library authority)が2010年内にそれぞれの図書館オファーを設定することを推奨している。「オファー」は,全ての図書館が提供すべき「コア・オファー」と,各地の図書館が設定する「ローカル・オファー」に分けられている。
コア・オファーの例としては,一般的な資料提供サービスに加え,0歳児からの図書館メンバーシップ,無料のインターネットアクセス,絶版本も含めた全国の資料への地元の図書館からのアクセス,電子書籍の無料での利用,利用者に合わせた開館時間等も挙げられている。0歳児からの利用と無料インターネットについては2011年4月までに全ての図書館で実施されることが望ましいとし,それに伴う新たな負担が地方自治体に発生しないよう配慮するとしている。また,図書館オファーと合わせて,その実施のためのガイダンスも示されている。
その他の提案の中には,図書館のための戦略的組織の設立が挙げられている。その組織は,大臣に対して公式に意見することや,評価・認定プログラム等により図書館を充実・発展させることを目的とするものとされている。具体的には,博物館・図書館・文書館国家評議会(MLA;E1024参照)等の機能を再編し,権限を強化することが想定されている。また,立地の共有に関する提案では郵便局や保健施設等との連携が示され,民間企業とのパートナーシップの提案ではコーヒーショップ併設が示されるなど,従来の図書館行政の枠を超えた連携にも言及されている。
この文書に対し,英国の図書館関連団体である図書館・情報専門家協会(CILIP;E982参照)は,各図書館に求められるサービスのガイドが示されたこと等を歓迎するとともに,政府に対し,サービスを実現するための適正な財政的措置を求める見解を表明している。
Ref:
http://www.culture.gov.uk/images/consultation_responses/modernisation_review_public_libraries.pdf
http://www.culture.gov.uk/reference_library/consultations/6752.aspx
http://www.guardian.co.uk/books/2010/mar/22/public-libraries-overhaul-proposed/print
http://www.cilip.org.uk/news-media/Pages/news100322.aspx
E982
E1024