カレントアウェアネス-E
No.163 2009.12.16
E1005
JLA分類委員会,NDC新訂10版試案説明会を開催<報告>
日本図書館協会(JLA)分類委員会は,2009年11月10日に「日本十進分類法(NDC)新訂10版」試案説明会(中間報告)を開催した。関東近県の大学図書館や公共図書館,また図書館学研究者を中心に41名の参加があった。筆者は分類委員として出席した。
最初に,NDC新訂10版(以下,「10版」とする。)作成の基本方針と改定作業の進捗について,報告があった。基本方針に関しては,9版作成の基本方針(9版解説2.9参照)を踏襲し,NDCの根幹にかかわる体系の変更はしないこと,ただし情報科学(007)と情報工学(548)については,統合の可能性を検討することなどが述べられた。
次に,これまでに公表された0類(007を除く),2類,3類,7類の試案の概要が説明され,意見交換が行なわれた。質問,意見はNDCの構造に係わる理論的なものから,具体的な項目の注記についてまで,広範囲にわたった。特に7類の新設項目で採用した縮約形について,階層構造を乱すものになるという理由で慎重な検討を促す声が相次いだ。
続いて,委員会で検討中の2つの課題について説明があった。これらは公表された試案とは性格を異にしている。実現までにさらなる検討を要しており,図書館関係者の意見を求める材料として今回初めて提示された。
まず基本方針にある,情報科学(007)と情報工学(548)の統合について,2つの案が提示された。情報科学(007)と情報工学(548)は,出版されている冊数が膨大であること,その振り分けに各図書館が苦労していることから,より詳細に細分しつつ,両者を統合することが可能か,検討することとなった背景がある。説明会では, 007/008に統合する案と, 547/548に統合する案が示された。概略を紹介する。
案A) 007/008に統合する「007 情報科学(Information Science)」の項目名を「情報学(Informatics)」と し,主に007.6に分類されていた情報処理,データ処理,ソフトウェアに関するものは新設する「008 情報処理.データ処理」に収めるよう改める。
案B)547/548に統合する「547 通信工学.電気通信」および「548 情報工学」の空き番号を活用して,データ通信,インターネット,情報セキュリティなど,主としてコンピュータネットワークに関わる技術は547.48に,データ処理,ソフトウェア,インターネットコミュニティなど,データ処理に関わる技術は548.4に収めるよう改める。007.6は別法とする。
2つの案にはそれぞれ利点と欠点があり,会場からは,547/548に統合する方がよいという意見が1件あったが,そのほかはっきりした意見は挙がらなかった。引き続き意見を求め,慎重な検討を要するところである。
次に,相関索引を拡張した分類作業者用データベースの作成と提供という計画が提示された。索引語に基本件名標目表(BSH)や国立国会図書館件名標目表(NDLSH)を追加し,CD-ROM版にして10版に添付することなどが予定されている。これにより,最低でも従来の倍近い語数が収載される。会場からは,CD-ROM化は評価するが,相関索引だけでなく本表もCD-ROMに入れてほしい,という意見が出された。NDCのデジタルデータ提供については,今後も検討が続けられる。
説明会全体を通し,質問,意見が活発に寄せられ,NDC新訂10版への強い関心と期待がうかがわれた。委員会では,寄せられた意見を精査し,よりよい分類表にしていきたいと考えている。
(収集書誌部・田村 由紀子)