必需品か贅沢品か:Little Free Librariesの課題(文献紹介)

米・アイオワ大学図書館情報学部が発行する雑誌“B Sides: FieldWork”41号(2020年11月)に“Little Free Libraries: A Necessity or A Luxury?”という論文が掲載されています。

本文献において、著者のベリー(Katherine Berry)氏は、Little Free Librariesの創始者のボル(Todd Bol)氏は、Little Free Librariesの設置意図をリテラシーの促進とコミュニティーの構築としており、実際、コミュニティーを強化しているものの、

・そもそも読書が好きな人が利用する傾向にあり、設置される本も特定の層向けになってしまう

・公共図書館が身近になく、貧しい地域での設置が望まれるものの、コストの問題もあって、実際には公共図書館もあり裕福な地域に設置が偏っている

といった課題があると指摘しています。

そして課題解決のため、

・母語が英語でない住民が多い地域では母語や第二言語としての英語に関する本、LGBTQ関係や若者向けの施設・病院といった専門施設の近くでは専門家とは話したくないかもしれない人に情報を提供する本の配置といったようなコミュニティーに即したLittle Free Librariesの設置

・現在、ミネソタ州・ウィスコンシン州のみで実施されている郊外での本の入手や貧困地区でのリテラシー向上を目的としたLittle Free Libraries設置事業“Little Free Libraries for Small Towns”の拡大

等をあげるとともに、アフリカ大陸でのLittle Free Librariesの普及を目指すBooks for Africaの活動に着目しています。

Katherine Berry. Little Free Libraries: A Necessity or A Luxury?. B Sides: FieldWork, 2020, (41), p. [1]-12.
https://ir.uiowa.edu/bsides/41/

参考:
E1603 – 庭先の本棚 “Little Free Library”,世界へ,そして日本へ
カレントアウェアネス-E No.266 2014.09.11
https://current.ndl.go.jp/e1603

E2330 – 第8回 マイクロ・ライブラリーサミット<報告>
カレントアウェアネス-E No.403 2020.11.26
https://current.ndl.go.jp/e2330