世界の電子学位論文(ETD)リポジトリの多様性と管理上の課題(文献紹介)

2020年9月30日付で、英国逐次刊行物グループ(UKSG)が刊行するInsights誌に、インドのカシミール大学のFayaz Ahmad Loan氏とUfaira Yaseen Shah氏による共著論文“Global electronic thesis and dissertation repositories – collection diversity and management issues”が掲載されています。

同論文は、オープンアクセス(OA)リポジトリのレジストリOpenDOARに登録された電子学位論文(ETD)をアーカイブするリポジトリについて、地域分布・主題・言語等の指標に基づく調査結果の報告・考察を行ったものです。2017年12月時点の調査の結果として、次のようなことを報告しています。

・OpenDOARに登録された3,504件のリポジトリの半数以上に当たる1,938件がETDのアーカイブを受付しており、学術論文に次いで扱いの多い種類のコンテンツである
・ETDを扱うOpenDOARに登録されたリポジトリの件数は、2006年から2017年まで一貫して増加傾向にある
・OpenDOARにおけるETDを扱うリポジトリの地域別の内訳は、欧州が43.5%と最多であり、アジアが21.05%、北米が15.58%と続く
・OpenDOARにおけるETDを扱うリポジトリの国別の内訳は、米国が12%と最多であり、ドイツが7.38%、日本が5.52%と続く
・OpenDOARにおけるETDを扱うリポジトリは、全体として合計35言語のコンテンツをアーカイブし、英語によるコンテンツが67.75%と最多であり、スペイン語が13.78%、ドイツ語が8.88%と続く。また、大半のリポジトリは複数の言語によるコンテンツをアーカイブしている
・OpenDOARにおいて、ETDを扱うリポジトリの種別の大部分は機関リポジトリであり、内訳にして93.71%となった
・OpenDOARにおけるETDを扱うリポジトリは、特定主題のみを扱うリポジトリは比較的少数であり、複数主題を扱うリポジトリが7割以上を占める
・OpenDOARにおけるETDを扱うリポジトリは、約96%が現在も利用可能な状態にある
・OpenDOARにおけるETDを扱うリポジトリは、過半数がソフトウェアとしてDSpaceを利用している
・OpenDOARにおけるETDを扱うリポジトリは、メタデータ記述ポリシー、コンテンツ投稿ポリシー、アーカイブされたコンテンツの保存ポリシーの明確でないリポジトリがいずれも過半数である

著者らは調査の結果から、ETDをオンライン提供するリポジトリが世界的に拡大している点は良い傾向であるが、管理上のポリシーが未整備なリポジトリが多くある点は解決すべき課題であることなどを指摘しています。

Loan, Fayaz Ahmad; Shah, Ufaira Yaseen. Global electronic thesis and dissertation repositories – collection diversity and management issues. Insights, 2020, 33:22.
http://doi.org/10.1629/uksg.524

参考:
世界中のオープンアクセスの電子学位論文を検索できる“Open Access Theses and Dissertations”
Posted 2013年5月7日
https://current.ndl.go.jp/node/23459

電子学位論文(ETDs)のライフサイクル管理指針が公開
Posted 2014年4月2日
https://current.ndl.go.jp/node/25835

Networked Digital Library of Theses and Dissertations(NDLTD)が、新しい検索ポータル“Global ETD Search”を公開
Posted 2015年7月10日
https://current.ndl.go.jp/node/28888

OAリポジトリのレジストリOpenDOARがアップデートを実施:OA方針サポートページのリニューアル及びCOREからの新規のリポジトリレコード900件の登録
Posted 2020年4月7日
https://current.ndl.go.jp/node/40724