2020年5月7日付けのNature誌オンライン版記事で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下でのプレプリントサーバによるスクリーニング作業についての記事が掲載されています。
感染拡大によって研究の迅速な共有・公開が一層求められている中、プレプリントの公開が広まっており、生物学のプレプリントサーバであるbioRxivと医学のプレプリントサーバであるmedRxivには、計3,000件近くのコロナウイルスに関する原稿が投稿されています。プレプリントサーバは迅速な研究成果の共有・公開を可能にする一方、原稿の質の確認を行うことが難しいという課題があります。科学的根拠に乏しい研究成果を共有することは、場合によっては害をもたらす可能性もあります。
記事では、従来から、ほとんどの主要なプレプリントサーバでは原稿のスクリーニングが実施されていることを紹介しています。bioRxivとmedRxivは二段階のプロセスを設けており、第一段階では、盗作や完全性について検査を行い、続く第二段階では研究者や専門家によって非科学的な内容や健康等に関するリスクの有無等を確認しています。通常、bioRxivでは原稿の受理は投稿から48時間以内に決定されます。medRxivでは、直接的な健康への影響の可能性があることから、慎重に精査しており、おおよそ4日から5日後に決定されます。
感染拡大下では、そのようなスクリーニングの強化が図られているとし、例として、陰謀説を煽る投稿の注視がなされていることや、計算モデルのみに立脚した推測の研究成果を受理しないことを決定した事例を挙げています。
一方、Science等のジャーナルが、迅速な研究成果の公開を可能とするため、査読の迅速化に取り組んでいることも紹介しています。出版者等のコミュニティは2020年4月にイニシアティブを立ち上げ、新型コロナウイルスに関連した専門をもつ人々に迅速な査読者(rapid reviewers)のリストに参加するよう呼びかける等の手段を通じ、迅速な研究成果の公開を目指しています。
How swamped preprint servers are blocking bad coronavirus research(Nature, 2020/5/7)
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01394-6