米・スタンフォード大学による2020年4月6日付けの記事で、査読を経ていない研究成果であるプレプリントがもたらす利益と危険について、同大の研究者らによる見解が紹介されています。
生物医学の分野を例にとり、従来の査読を経た出版という学術モデルが直面している変化について述べています。迅速な解決を必要とする新型コロナウイルス感染症の流行に伴いプレプリントでの研究成果公表が増えているとし、その利点として、オープンアクセスかつ素早い公開が可能であること、学術誌には掲載されない可能性のある失敗や否定的成果の共有につながること等を挙げ、研究の加速・改善をもたらすものとしています。
一方で、同大教授で生物工学等を専門とするRuss Altman氏は、プレプリントは査読を経ていないため、内容に誤りが含まれうることに注意を払う必要があるとコメントしています。記事ではプレプリントが質の低い研究を拡散してしまう恐れにも言及しており、同大助教のStanley Qi氏による、「ひとかけらの誤った情報、誤解を与える情報が10の優れた論文に害をもたらすこともある」というコメントを紹介しています。
記事の最後には、同大教授で遺伝学が専門のJudith Frydmanのコメントも掲載されており、今後プレプリントが学術情報流通のなかで定まった位置を確保するには、昇進・採用や助成獲得に関する要件の変更も必要となるという見解が示されています。
Stanford researchers discuss the benefits – and perils – of science without peer review(Stanford News, 2020/4/6)
https://news.stanford.edu/2020/04/06/open-science-era-covid-19/
参考:
新型コロナウイルスにHIVウイルスと不自然に類似したタンパク質が含まれている、と主張するプレプリントがbioRxivに掲載されるも、2日で取り下げられる bioRxivは新型コロナウイルス関連プレプリントに関する注意喚起を表示
Posted 2020年2月4日
https://current.ndl.go.jp/node/40153