プレプリントサーバbioRxivに2020年3月11日付で、スイス国立科学財団(SNSF)の博士研究員であるAnna Severin氏ほか4人の共著論文“Who Reviews for Predatory Journals? A Study on Reviewer Characteristics”が掲載されています。
同論文は、ハゲタカジャーナルと信頼のおけるジャーナル(legitimate journals)それぞれについて査読者の傾向を観察すること、ハゲタカジャーナルに対する査読の地理的な分布状況を調査することを目的として執筆されました。ハゲタカジャーナル・信頼のおけるジャーナルの情報源として、Cabell’s International社のブラックリスト・ホワイトリストを使用し、査読登録サービスPublonsの情報と照合しながら、それぞれのジャーナルの査読者について、その査読や出版に関するメタデータの分析を行っています。
同論文によると、分析対象とした1万9,598人による18万3,743件の査読のうち、全体の3.31%にあたる6,077件がハゲタカジャーナルへの査読でした。大多数の研究者はハゲタカジャーナルに対して、一度も査読を行っていない(89.96%)か、ごくまれにだけ査読を行っている(7.55%)かのいずれかですが、非常に多く査読を行っている(0.26%)、ハゲタカジャーナルにだけ査読を行っている(0.35%)研究者を少数確認できたことを報告しています。また、後二者の研究者グループは、前二者の研究者グループと比べて、若年層であり出版物や査読の本数が少ないことを報告しています。さらに、ハゲタカジャーナルに対する査読は、先進地域よりも開発地域に多く分布していることを指摘しています。
結論として、ハゲタカジャーナルの査読者とハゲタカジャーナルで論文を出版する著者の特性は似通っていることを指摘し、ハゲタカジャーナルに対抗するためには、利害関係者が研究のワークフロー全体を考慮に入れた包括的なアプローチを採用する必要がある、としています。
Who reviews for predatory journals? A study on reviewer characteristics(bioRxiv,2020/3/11)
https://doi.org/10.1101/2020.03.09.983155
参考:
CA1960 – ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から / 千葉 浩之
カレントアウェアネス No.341 2019年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1960
CA1961 – 動向レビュー:岐路に立つ査読と、その変化に踏み込むPublons / 松野 渉
カレントアウェアネス No.341 2019年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1961
出版倫理委員会(COPE)、ハゲタカ出版に関する討議資料を公開
Posted 2020年1月16日
https://current.ndl.go.jp/node/39972