米国のノーベル賞受賞者21人が米・トランプ大統領へ政府助成研究の即時オープンアクセス(OA)義務化を求めた連名書簡を提出

2020年1月28日、米・カリフォルニア大学バークレー校は、2013年にノーベル生理学・医学賞を受賞した同校のランディ・シェクマン教授をはじめとする21人の米国のノーベル賞受賞者が、米・トランプ大統領へ連名で公開書簡を提出したことを発表しました。

提出された書簡は、米国政府で検討されていると噂される政府助成研究の即時オープンアクセス(OA)義務化案を支持するものです。2013年にオバマ政権下で、米国の政府助成研究は12か月以内にOA化することが義務付けられましたが、トランプ政権は12か月のエンバーゴを撤廃し即時のOA義務化を求めた大統領令の草案を現在作成しているとされ、複数の学術出版社がこれに強い反対表明を出すなど利害関係者は様々な反応を見せています。

2020年1月24付で作成された書簡は、1月27日にトランプ大統領へ提出されました。書簡はその末尾で、「トランプ大統領の政策は、米国の研究を変革し、米国内の科学研究の実践を加速し、グローバルなレベルで米国の重要度をさらに高める可能性を秘めています。ぜひこの重要な大統領令に署名し米国の政府助成研究へのアクセスに課せられたエンバーゴを撤廃してください」と訴えています。

書簡の代表者であるシェクマン教授は、現在の学術出版のあり方は研究の進歩に歯止めをかけるものであるとして、OAに抵抗する学術出版社へ長年反発してきました。シェクマン教授はバークレー校のお知らせの中で、「政策変更案に関する伝統的な出版業界の大げさな反応は、過当すぎることもしばしばある学術出版の利益率を守りたいという試みでしかない。米国政府が何らかの動きを見せれば、それは出版社にとっての一層の圧力になるだろう」とコメントしています。

Update on UC’s open access negotiations with Elsevier and other journal publishers(University of California,2020/1/23)
https://osc.universityofcalifornia.edu/2020/01/oa-update/
https://sparcopen.org/wp-content/uploads/2020/01/Open-Letter-to-the-White-House-Signed-by-21-Nobel-Prize-Winners.pdf
※二つ目のリンクは公開された2020年1月24日付の連名書簡です。 [PDF:93KB]

参考:
PLOSをはじめとするOA出版者らが即時オープンアクセス義務化方針を支持する書簡を米・トランプ大統領に提出
Posted 2020年1月21日
https://current.ndl.go.jp/node/40011

米国政府が政府助成研究の即時オープンアクセス(OA)義務化を検討?:出版関係者等に様々な反応(記事紹介)
Posted 2019年12月26日
https://current.ndl.go.jp/node/39850