米・カリフォルニア大学の2020年初頭時点の主要出版社とのオープンアクセス(OA)出版等に関する契約・契約交渉の状況(記事紹介)

米・カリフォルニア大学は2020年1月23日付で、Elsevier社をはじめとする主要出版社とのオープンアクセス(OA)出版等に関する契約・契約交渉の状況を報告した記事“Update on UC’s open access negotiations with Elsevier and other journal publishers”を公開しました。

カリフォルニア大学は、様々な出版社との協調による同大学の研究成果のOA化推進の動きが、2020年初頭時点で大幅に進展しているとして、各出版社との契約や契約交渉の状況を次のとおりに報告しています。

・Elsevier社との契約交渉は2019年に決裂したが、その後も非公式の会談が継続しており、2020年第1四半期中に交渉再開の可能性を探るための同社とのミーティングを行う予定である。Elsevier社は2019年中に他機関とOA出版モデルへの「転換契約(transformative agreement)」を複数締結しており、これはカリフォルニア大学の目標に沿った契約交渉を行う準備が完了したことを示唆したものであると期待される。

・Wiley社、Springer Nature社との契約は2019年12月31日に契約期間が終了したが、「転換契約」の内容で契約更新することを目標に両社と交渉を続けている。交渉の進行中は、カリフォルニア大学から両社の電子ジャーナルへのアクセスが維持される。

・米国計算機学会(ACM)、JMIR Publications社と新規に契約を締結した。それぞれ契約のモデルは異なっているが、研究成果のOA出版のためにカリフォルニア大学の研究者へ財政的な支援を提供する内容である。

・英・ケンブリッジ大学出版局(CUP)との契約は2019年の導入段階を経て、2020年から「転換契約」としての内容が完全に実施されている。2020年1月以降、CUP刊行のジャーナルへ掲載される、責任著者がカリフォルニア大学に所属する論文については、論文のOA化が促されるようになる。論文処理費用(APC)は30%割引され図書館から1,000ドルが自動的に助成される。APCの不足分については、研究資金を利用可能な著者の場合、研究資金から残りの費用を支払うことが促される。研究資金を利用できない著者の場合、図書館へ不足分も支払うように財政支援を要求することができる。

Update on UC’s open access negotiations with Elsevier and other journal publishers(University of California,2020/1/23)
https://osc.universityofcalifornia.edu/2020/01/oa-update/

参考:
米・カリフォルニア大学、Elsevier社との契約解除による影響調査のため学内者向けに無記名アンケートを実施中
Posted 2020年1月27日
https://current.ndl.go.jp/node/40063

米・カリフォルニア大学、Elsevier社の新規発行論文等へのアクセスが遮断される
Posted 2019年7月11日
https://current.ndl.go.jp/node/38569

カリフォルニア大学、Elsevier社の雑誌の購読を停止することを発表
Posted 2019年3月5日
http://current.ndl.go.jp/node/37717

米国計算機学会(ACM)、米国内の4大学とオープンアクセス(OA)出版モデルへの「転換契約」を締結
Posted 2020年1月24日
https://current.ndl.go.jp/node/40051

米・カリフォルニア大学、OA出版社・JMIR Publications社とOA出版推進のため2年間の試験契約を締結:同大学の責任著者による論文出版時に図書館が一律1,000ドルを助成
Posted 2020年1月29日
https://current.ndl.go.jp/node/40089

ケンブリッジ大学出版局(CUP)とカリフォルニア大学、オープンアクセス出版契約に合意
Posted 2019年4月12日
https://current.ndl.go.jp/node/38006