米・カリフォルニア大学とElsevier社の転換契約についての6つの疑問と回答(記事紹介)

2021年3月25日付で、学術情報流通に関連した多様な話題を提供する学術出版協会(Society for Scholarly Publishing:SSP)運営のブログ“The Scholarly Kitchen”に、米国のブリガムヤング大学のRick Anderson氏が執筆した記事“Six Questions (with Answers!) about UC’s and Elsevier’s New Transformative Deal”が掲載されています。記事では、米国のカリフォルニア大学がElsevier社と締結したオープンアクセス(OA)出版モデルへの転換契約についての6つの疑問と回答が述べられています。具体的には、(1) 実際の論文処理費用(APC)、(2) 年間の価格上昇への対応、(3) 著者の選択権、(4) 論文に適用されるライセンス、(5) 永続的なアクセス、(6) 契約に含まれているElsevier社のジャーナル、について扱っています。

実際のAPCについては、契約の最初の一年間では4,370報の論文が出版されることが予想されておりそれらに要する費用は1,070万ドルであることから、平均のAPCは2,449ドルになるとしています。しかし1,070万ドルという価格は最大支出であり、論文の報数が予想よりも少なくなるとより低い価格を支出することになるといったことによって、実際のAPCも変動することが指摘されています。

論文に適用されるライセンスは、Elsevier社が提供する選択肢であるCC BY またはCC BY-NC-NDであるとしています。

永続的なアクセスについては、従来の購読契約では図書館は毎年出版されるコンテンツに対して料金を支払うとそれらへの永続的なアクセスが保障されていたことに対して、この転換契約では永続的なアクセスはオプトインであるとしています。

契約に含まれているElsevier社のジャーナルについては、ビッグディールと同様に、全てのジャーナルではなく一部例外が含まれているとあります。

Six Questions (with Answers!) about UC’s and Elsevier’s New Transformative Deal(The Scholarly Kitchen,2021/3/25)
https://scholarlykitchen.sspnet.org/2021/03/25/six-questions-with-answers-about-ucs-and-elseviers-new-transformative-deal/

参考:
米・カリフォルニア大学とElsevier社、4年間の転換契約を締結
Posted 2021年3月17日
https://current.ndl.go.jp/node/43568

CA1977 – 動向レビュー:学術雑誌の転換契約をめぐる動向 / 尾城孝一
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1977

米・カリフォルニア大学、Elsevier社との契約解除による影響調査のため学内者向けに無記名アンケートを実施中
Posted 2020年1月27日
https://current.ndl.go.jp/node/40063

米・カリフォルニア大学の教員が連名書簡により大学とElsevier社の新契約締結までCell Press社刊行誌の編集委員としての活動を停止する可能性に言及
Posted 2019年8月14日
https://current.ndl.go.jp/node/38791

米・カリフォルニア大学、Elsevier社の新規発行論文等へのアクセスが遮断される
Posted 2019年7月11日
https://current.ndl.go.jp/node/38569

カリフォルニア大学、Elsevier社の雑誌の購読を停止することを発表
Posted 2019年3月5日
http://current.ndl.go.jp/node/37717