米・SPARCによるElsevier社がオープンアクセス(OA)要項受諾の見返りに同社のデータ分析製品の購入を研究機関へ要求している問題への警鐘(記事紹介)

米・SPARCは2019年12月10日付で、“Leaked Dutch Contract with Elsevier Raises Significant Alarm Bells”と題した記事を投稿しました。

同記事は、Elsevier社とオランダ大学協会(VSNU)との契約交渉漏洩の報道により明らかとされた、同社が学術雑誌契約におけるオープンアクセス(OA)要項を受諾することの見返りに、同社のデータ分析製品購入をVSNUへ要求している問題について、重大な警鐘を鳴らす目的で発されたものです。契約内容の正確な詳細は不明でありElsevier社は報道には誤りがいくつか含まれていると主張しているものの、SPARCは大筋では信頼できるものであるとして、このような契約に署名することは非常に問題があり、研究機関やコンソーシアムは短期的な利益を追求する前にその影響をよく検討すべきであると警告しています。

SPARCはこうした契約の問題点として以下の5点を挙げています。

1. 出版に関する契約とデータに関する契約が結び付けられることは、一方のみの解約などの柔軟性が制限される可能性があり問題である。

2. データ分析事業において出版コンテンツを持つ事業者への独占・寡占を促す可能性がある。

3. データ分析事業の競争が阻害されることで研究機関側の選択肢が減少し、結果として不利な条件を受け入れざるを得なくなる可能性がある。

4. 収益源を出版からデータ分析事業にすることが標準化すると、小規模出版社の利益に対して圧力がかかり新技術やジャーナルへの投資が阻害され、学術出版業界が不健全な状態に陥る。

5. データ分析事業の独占・寡占状態は費用負担以上に多様性の欠如につながることが問題であり、特定企業のアルゴリズムによって、研究機関内の予算配分・人事や研究機関の評価基準等が左右される事態になりかねない。

Leaked Dutch Contract with Elsevier Raises Significant Alarm Bells(SPARC,2019/12/10)
https://sparcopen.org/news/2019/leaked-dutch-contract-with-elsevier-raises-significant-alarm-bells/

関連:
Leaked document on Elsevier negotiations sparks controversy(ScienceGuide,2019/11/6)
https://www.scienceguide.nl/2019/11/leaked-document-on-elsevier-negotiations-sparks-controversy/

参考:
オランダ大学協会(VSNU)とElsevier社、契約交渉継続のため締結中のライセンス契約を2019年12月末まで再延長することに合意
Posted 2019年7月11日
https://current.ndl.go.jp/node/38567

オランダ大学協会(VSNU)、契約交渉を継続するため、Elsevier社とのオープンアクセス出版等に関する契約の半年の延長を発表
Posted 2018年12月14日
http://current.ndl.go.jp/node/37223

米・SPARC、高等教育機関向けに学術データとその基盤への出版業界の統制増大に対抗するためのロードマップを公開
Posted 2019年11月28日
https://current.ndl.go.jp/node/39612