Taylor & Francis社、研究者を対象とした学術情報流通に関する意識調査のレポートを公表

2019年10月21日、Taylor & Francis社は、研究者を対象とした学術情報流通に関する意識調査のレポートとして、“Taylor & Francis researcher survey 2019”を公開したことを発表しました。

調査は2017年から2019年の間にTaylor & Francis社の雑誌で学術論文を出版したことのある著者を対象として、2019年7月にオンラインアンケートツールSurveyGizmoにより実施されています。公表されたレポートは2,755人の研究者の回答に基づいて作成されました。

レポートはTaylor & Francis社のウェブサイトからダウンロードすることができます。また、研究データ公開プラットフォームfigshareで調査結果の完全なデータセットが公開されています。

公表されたレポートでは調査の結果として、次のようなことが示されています。

・大半の研究者(88%)は、誰もが研究成果にアクセスできることの意義を認めている。

・自身の研究成果が必要とされる全ての人にアクセス可能な状態にあると認識している研究者は半数以下であり、人文社会科学系の研究者に限るとわずか33%であった。

・過去12か月以内の研究成果の公表について、雑誌の購読者・購読機関のみアクセス可能な購読誌への掲載によるものが最も多く(71%)、オープンアクセス(OA)誌へ掲載するゴールドOAにより研究成果を公開した研究者は42%、リポジトリへ著者最終稿を登録するグリーンOAにより研究成果を公開した研究者は18%であった。

・研究者は論文投稿先の検討にあたって、雑誌の評判・雑誌の読者層・Journal Impact Factor(JIF)等を重視しており、完全OA誌であること、論文処理費用(APC)の支払によりOAにする手段があること、といったOAに関わる事項はあまり重視されていない。

・論文に付与するライセンスは、制限の強いCC BY-NC-NDライセンスが最も好まれており、CC BYライセンスは最も好まれないライセンスであった。

・継続的で持続可能な研究活動確保のための優先事項として、キャリア初期の研究者への支援(84%)、低所得国への支援強化(79%)等が重視されている。

・OA推進に関わるイニシアチブやサービスについて研究者の認知度は非常に低く、ブダペスト・オープンアクセス運動(BOAI)によるブダペスト宣言が12%の認知度、Plan Sが5%の認知度といった結果である。選択肢として用意した11のイニシアチブやサービスを全て認知していないと回答した研究者は66%にのぼった。

・研究者の40%が完全OA誌に投稿するつもりはないと回答している。理由としてAPC支払のための資金を調達できないこと、論文の公開のために費用を負担することを好まないことなどを挙げている。

Open access popular with researchers but full potential remains untapped, says new global study(Taylor & Francis,2019/10/21)
https://newsroom.taylorandfrancisgroup.com/open-access-popular-with-researchers-but-full-potential-remains-untapped-says-new-global-study/

Taylor & Francis researcher survey 2019(Taylor & Francis)
https://authorservices.taylorandfrancis.com/researcher-survey-2019/

Taylor & Francis researcher survey 2019 [PDF:24ページ](Taylor & Francis)
https://2qkk0e1599xt254aernh2gta-wpengine.netdna-ssl.com/wp-content/uploads/2019/10/Taylor-and-Francis-researcher-survey-2019.pdf

Taylor & Francis Research & Analytics(figshare)
https://figshare.com/authors/Taylor_Francis_Research_Analytics/7506590

参考:
Taylor & Francis、2014年版のオープンアクセス意識調査のレポートを公表
Posted 2014年7月1日
https://current.ndl.go.jp/node/26473

Taylor & Francis、1万5千人の著者から回答を得たオープンアクセス意識調査のレポートを公表
Posted 2013年3月19日
http://current.ndl.go.jp/node/23123