米国哲学会(APA)のブログで、オープンアクセス(OA)運動の中心人物の一人であるPeter Suber氏が、人文学領域におけるOAに関する連載記事を公開しています。2017年6月1日公開の第1回ではOAとは何かを説明し、6月8日公開の第2回ではなぜ人文学領域ではSTM領域に比べてOAが進まないのか(”Why Is Open Access Moving So Slowly In The Humanities?”)、6月15日公開の第3回ではOA推進のためにはどんな方法がありうるのか(”Recommendations: How Can We Advance Open Access In The Humanities?”)を論じています。
6月8日付けの記事では、人文学領域でOAが進まない理由として、以下の9点が指摘されています。
(1) STMに比べ雑誌の価格が安い。
(2) STMに比べ研究資金が少なく、APCの支払いが難しい。
(3) 政府による研究助成がSTMの方がはるかに多い。
(4) STMより人文学の雑誌の方が査読における却下率が高く、採択論文あたりの査読コストが高い。
(5) 市民による需要の差。
(6) プレプリント文化の有無。
(7) 論文に対する需要の減衰期間の差(人文学の方が古い論文に対しても需要が存在するため、STMのようなエンバーゴ設定が困難)。
(8) 人文学では詩やイラストの引用など、他者の著作物の引用が多く、OA出版の障害になる。
(9) 雑誌論文に対する優先順位の差(STM分野に比べて低い)。
6月15日付けの記事では、人文学領域でOAを推進するための提案として、以下等があげられています。
(1) 査読のコストを下げるために雑誌管理ツールを使う。
(2) 校正・校閲・編集作業をやめる。
(3) 大学から論文処理にかかる費用を支出する。
(4) APC以外の方法でOA雑誌を運用する。
(5) 出版後査読を取り入れてみる。
(6) STM分野の雑誌の価格低下やOA推進に協力する。
(7) OAリポジトリを使う。
(8) 以上を第一段階にかかるものとし、その次にはモノグラフのOAに取り掛かる。
Open Access in the Humanities: What is Open Access?(Blog oh the APA、2017/6/1付け)
http://blog.apaonline.org/2017/06/01/open-access-in-the-humanities/
Why Is Open Access Moving So Slowly In The Humanities? (Blog oh the APA、2017/6/8付け)
http://blog.apaonline.org/2017/06/08/open-access-in-the-humanities-part-2/
Recommendations: How Can We Advance Open Access In The Humanities? (Blog oh the APA、2017/6/15付け)
http://blog.apaonline.org/2017/06/15/open-access-in-the-humanities-part-3/
参考:
英国学士院、人文・社会科学分野におけるオープンアクセス出版の課題を論じた“Debating Open Access”をオープンアクセスで公開
Posted 2013年7月3日
http://current.ndl.go.jp/node/23858
E1372 – 人文・社会科学系研究者のオープンアクセスに対する意識とは カレントアウェアネス-E No.228 2012.12.13
http://current.ndl.go.jp/e1372