arXivで過剰な登録審査?(記事紹介)

2016年1月29日付けのNature誌オンライン版記事で、arXivに登録することに問題のないはずの論文が、登録審査で却下されてしまったというジュネーヴ大学の量子物理学者、Nicolas Gisin氏と彼が指導する学生のケースが紹介されています。

物理学分野等で用いられているプレプリントサーバarXivには、誰もが自身の論文を登録することができますが、登録にあたっては管理者のチェックがあります。学術雑誌における査読のような厳しい審査はありませんが、明らかに問題のある論文はこのチェックで登録を却下される場合があります。

Gisin氏が指導する二人の学生が書いたブラックホールに関する論文は、Gisin氏自身を含む多くの専門家から見て何か間違いが含まれているのではないかと感じられるものではありましたが、arXivに却下されるような内容ではなく、実際に後に学術雑誌に査読を通過して掲載されました。しかし同論文はarXivへの登録を却下されたばかりか、後に同じ学生らが書いた別の論文もわずかな審査期間で却下されたとのことです。Gisin氏は却下が続いたことで、arXivには登録却下者のブラックリストがあるのではないか等の疑念を述べていました。

Nature誌記事中ではarXiv運営に携わる人々のコメントも紹介されており、ブラックリストはないものの、同じ審査基準を参照しているため同一の著者からの論文が却下される場合があるとされています。また、本件についてはチェックした審査者の側に問題があるともしつつ、投稿される論文数の多さを考えれば責められない部分もあるとし、この件がarXivの運営について研究者コミュニティの注目を集め、一層の支援につながることを期待するとする専門家のコメント等が紹介されています。

ArXiv rejections lead to spat over screening process(Nature、2016/1/29付け)
http://www.nature.com/news/arxiv-rejections-lead-to-spat-over-screening-process-1.19267

参考:
arXivに「乗っかった」オープンな学術雑誌の試み(記事紹介)
Posted 2016年1月5日
http://current.ndl.go.jp/node/30370

arXivの収録論文数が100万件を突破
Posted 2015年1月13日
http://current.ndl.go.jp/node/27784