電子書籍等の進展によって公共図書館が求められる新たな役割とは(記事紹介)

2012年7月12日に、米国の“The New Republic”に“The Bookless Library”と題する論考が掲載されています。執筆者は、プリンストン大学の歴史学教授のベル(David A. Bell)氏で、“The New Republic”の編集協力者です。論考は、電子書籍の進展による公共図書館の役割の変化をテーマとしています。

論考では、まず、電子書籍の普及によって公共図書館を取り巻く状況が変化しつつある現状が指摘されています。そして、電子書籍等のデジタル技術の進展によって図書館が衰退する「最悪のシナリオ」を示したうえで、そうならないために、公共図書館は新たな役割を見出さなければならないと述べられています。

次に、ベル氏は、電子書籍へのアクセス提供だけでは満たせない公共図書館の機能として、コミュニティスペースやワークスペース、図書館員の専門知識、特別コレクションの貴重書等の提供があることを指摘しています。

最後に、ベル氏は、大学による遠隔学習の提供が進んでいることを紹介し、ここに公共図書館の新たな役割があると述べています。すなわち、遠隔学習の普及によって、逆説的に研究や学問に直接触れられることが求められているとしたうえで、公共図書館はこれまで図書や雑誌を提供することでその役目を果たしてきたが、今後は、大学や出版社等と共同し、遠隔学習と結びついた講座やセミナーを開催する等、以前とは異なる形で学習ニーズに応えなければならないとしています。

The Bookless Library (The New Republic 2012/7/12付けの記事)
http://www.tnr.com/article/books-and-arts/magazine/david-bell-future-bookless-library

“The Bookless Library” Opinion piece from The New Republic (LISNews 2012/7/17付けの記事)
http://lisnews.org/the_bookless_library_opinion_piece_from_the_new_republic