電子書籍時代のILLはいずこへ?(記事紹介)

Collaborative Librarianship誌に、同誌の編集者でもある米デンバー大学図書館のクラーク氏による“Whither ILL? Wither ILL: The Changing Nature of Resource Sharing for E-Books”という論説が掲載されています。

論説の中で、クラーク氏は電子書籍の図書館間貸出(ILL)について疑問を呈しているようです。彼は、ILLは図書館間協力における偉大な成果であり、電子書籍のILL利用を認めるよう図書館が出版社に対して要求することは理解できるものの、「利用者にできるだけ安く・早く資料を提供する」という最終的な目標を考えると、電子書籍について紙の書籍と同様のILLサービスを行うのは疑問であるとしています。

その代わりに、図書館で契約していない電子書籍を一時的に借りることのできる「短期間リース」(short-time lease)を可能とするよう出版社に働きかけるべきだと提案しています。電子書籍については、利用者・図書館員の双方に対してコストがかかる従来のILLプロセスを見なおすことができ、実際、図書館員が出版社のサイトから直接借りた電子書籍へのリンクを利用者に知らせるだけ、あるいは、理想的には図書館員を介さず利用者が自ら短期間リースするだけで済む可能性もあるとのことです。

この短期間リースがうまく機能するには、そのコストが従来型のILLに必要なトータルコストより低くなることや、十分な数の電子書籍が短期間リースの対象になっているといった条件が必要になると述べています。

それに対して、EBL、ebrary、MyiLibrary、NetLibraryといった主要な電子書籍サービスは短期間リース機能を提供済みないし真剣に導入を検討中である、MyiLibraryの電子書籍がOCLCのWorldCatから短期間リースできるようになる予定である、デンバー大ではEBLの短期間リースを活用しているといった情報を紹介しています。

ただし、現在のこころ従来型のILLに取って代わることができるほど十分なタイトルが利用可能になっているわけではないため、図書館は電子書籍出版社に働きかけなくてはならないと主張しています。

Whither ILL? Wither ILL: The Changing Nature of Resource Sharing for E-Books
http://www.collaborativelibrarianship.org/index.php/jocl/article/view/146/92

参考:
OCLC、Ingram社と提携した電子書籍レンタルサービスを開始
http://current.ndl.go.jp/node/17973